「そういや杏奈ちゃん、新製品の洗濯剤って試した?」
「最近テレビでよく宣伝している商品ならもう購入しました」
「そっかー。俺は今度買いに行こうと思ってんだけどさぁ」
さり気なく下の名前を呼ばれて心臓が一瞬だけ跳ね上がる。
あの日の翌日から、彼に「今日から下の名前で呼んでいいかな」と言われていたのに未だ少し慣れずにいるが、すぐ胸の中が幸せで満たされる。自分でも単純だとは思うが、こういうのも悪くはないかもしれない。
「では乾燥機が止まる頃にまた来ます」
帰りしなに肩から下げたベージュ色のトートバッグの肩紐を片手で軽く握りながら日川さんに声をかけた。
彼は一番奥の通路にモップをかける手を動かしながら、「気をつけて行けよー」と返事をした。
アパートの自室に戻ると、羽織っていた紺色の薄手のジャケットを脱いでクローゼットのハンガーに掛けた。この時期は昼間は上着は要らないが、朝夕と晩が肌寒い。
トートバッグを肩から外し、中からスマホを取り出して丸型の灰色の机に置くーー途端、スマホが鳴った。
誰だろうと表示を見ると【母親】と文字が浮かんでいる。
げんなりして居留守を使おうかと一瞬考えたが、結局出ることにした。
「……もしもし」
『久しぶりね杏奈、元気にしていた? あなた、なかなか電話してこないんだもの。父さんも心配してるわよ』
「久しぶり母さん。そっちこそ元気だった?」
心做しか身体が重く、胸中にどす黒い塊が広がっていくような感覚がした。
「最近テレビでよく宣伝している商品ならもう購入しました」
「そっかー。俺は今度買いに行こうと思ってんだけどさぁ」
さり気なく下の名前を呼ばれて心臓が一瞬だけ跳ね上がる。
あの日の翌日から、彼に「今日から下の名前で呼んでいいかな」と言われていたのに未だ少し慣れずにいるが、すぐ胸の中が幸せで満たされる。自分でも単純だとは思うが、こういうのも悪くはないかもしれない。
「では乾燥機が止まる頃にまた来ます」
帰りしなに肩から下げたベージュ色のトートバッグの肩紐を片手で軽く握りながら日川さんに声をかけた。
彼は一番奥の通路にモップをかける手を動かしながら、「気をつけて行けよー」と返事をした。
アパートの自室に戻ると、羽織っていた紺色の薄手のジャケットを脱いでクローゼットのハンガーに掛けた。この時期は昼間は上着は要らないが、朝夕と晩が肌寒い。
トートバッグを肩から外し、中からスマホを取り出して丸型の灰色の机に置くーー途端、スマホが鳴った。
誰だろうと表示を見ると【母親】と文字が浮かんでいる。
げんなりして居留守を使おうかと一瞬考えたが、結局出ることにした。
「……もしもし」
『久しぶりね杏奈、元気にしていた? あなた、なかなか電話してこないんだもの。父さんも心配してるわよ』
「久しぶり母さん。そっちこそ元気だった?」
心做しか身体が重く、胸中にどす黒い塊が広がっていくような感覚がした。

