今日も、明日も。

夕刻。午後五時を過ぎると辺りは濃紺の闇に包まれる。そのなかに橙色の灯りが点るのを見ると、心がぽかぽかと温かくなる気がした。
「こんばんは」
「おう秋川ちゃん。いらっしゃい」
日川さんは床にモップをかけていた手を止めて顔を上げると微笑んだ。
彼と両想いになってからも当然毎日が劇的に変わることはなく、私は仕事が終わると夕飯を食べるより先にコインランドリーに行くことを優先した。
週に二日は休日があるが、彼が午前八時から午後七時半まで管理人業があるため、二人でどこかに行くことはなかった。
麗子さんは一ヶ月に数日くらいのペースでランドリーに来ている。そのため両想いになった報告は二週間ほど時間が空いたが、彼女は少しだけ穏やかに微笑み、淡々とした口調で「よかったわね」と言ってくれた。
エアコンの暖房が程よく利いた店内に軽やかなジャズが流れる。
格好悪いことに惚れた欲目からか、彼が運営するランドリーの店内に流れる音楽はどれも耳に心地よくセンスが良いように思う。
そのため前に「店内に流すCDはどこで買っているんですか」と尋ねたのだが、日川さんはあっけらかんとした言い方で「え、俺の家の私物だけど」と返してきた。
他人から見れば進展のない、未だ気のおけない友人のような関係だが、小さいけれど変化はある。