今日も、明日も。

やっぱり恋愛に浮かれるとロクなことがない。石橋を叩いて渡ろうとした時に、いつも目の前で橋が崩れて結局いつも渡れなくなる。
「へぇ、常連客ね」
冷静で落ち着いた程よく低い彼女の声が、どこか遠くに聞こえる。
「もしかして優斗の彼女?」
「いや。彼女じゃねぇよ」
いつもより砕けた日川さんの答え方に目の前が一瞬暗くなった。やっぱり二人は……そう思った途端、私の中のなにかがプツッという音とともに切れた。
「私……帰ります」二人の顔を見ずに俯いたまま呟く。
「えっ」と日川さんの驚いた声色の声が聞こえたが、トートバッグの肩紐をぎゅっと握りしめた。今は彼の顔を見る勇気がない。
「今日はありがとうございました。失礼します」
「あ、こんなタイミングに言うのもあれだけど」
帰ろうかと歩き出そうとした時、女性がなにか思い出したような口ぶりで言った。
タイミングを計ってわざと言ったというよりも、本当に今思い出したようだった。
「今度、久々に優斗のコインランドリーに行ってもいいかしら。またあの頃みたいに、」
「そっ、それに!」女性の言葉を耳にした瞬間。気がつけば大きな声を出していた。
「もうコインランドリーには二度と行きませんから」
「あ、秋川ちゃん!?」
「それでは失礼します。……さようなら」
ロクに二人の姿を見ずに走り出す。私は日川さんの恋人でもなんでもない、ただのコインランドリーの常連客だ。だからヤキモチを妬く資格も、二人の関係性を探る権利もない。
だけど目尻に勝手に浮かびそうになる涙を堪らえようと、唇を強く噛み締めた。