今日も、明日も。

コインランドリーで男女関係なく年配の常連客が彼を名前で呼ぶことは、たまにあった。だけど若い女性客は少ない上、名前を呼び捨てにする人は少なくとも私が知る限りではいない。
声のする方を見ると、先ず呆然とした表情の日川さんが見えた。横顔だが温和な茶色の瞳が今は大きく見開き、目を丸くして若い女性を見ている。
その彼の向こうに女性の姿が見えた。長い黒髪、切れ長の目に漆黒の瞳。高い鼻と小さな唇にビビッドピンクの口紅が映えている。おまけに肌は真珠のように白い。誰がどう考えても絶世の美人だ。
この女性と日川さんは一体どんな関係なのだろう。急に胸が軋むように痛い。
「……れい、こ」
「こんな所で再会するなんて。久しぶりね、元気だった?」
日川さんの口から発せられた女性の名前と、彼女の親しそうな口ぶりに心臓が捻られたように痛い。様々な疑問や不安が頭の中を駆け巡り、このままここにいれば吐いてしまいそうだ。
すると彼女の漆黒の美しい瞳が私を捉える。
「あら、その子は?」
「……彼女は最近通ってくれてる常連客だ」
普段は口数が多い方の日川さんーー私が無口なだけで、彼が普通なのかもしれないーーがあまり喋らないことに、不安や疑問を抱かずにはいられない。
女性は白のブラウスに黒のパンツスーツのジャケットで、胸の前で腕組みをした。見るからに美人な上にスタイルまで完璧とはーー私は思わず自分の恰好を見下ろした。
紺色のテーラードジャケットの中に白色のローゲージニット。一応外出着だが動きやすい赤と白のチェック柄のテーパードパンツは精いっぱい着飾った方だ。使い古されたベージュのトートバッグに、普段からお洒落に無弾着なため仕事と兼用の灰色のスニーカー。
デートみたいだと浮かれていた自分が急に馬鹿らしくなった。