ひとりぼっちの私のことを救ってくれたのは魔法使いでした。

 ここは、ミルト地方にあるリゾート地。
 ペンションや別荘といった建物が多く点在している。

 そして、ルーナにとって初めての旅行がはじまります。

 長いこと馬車で移動したため、部屋で休むことにしたのです。
 ソファに座り、窓から見える外の景色を見ていた。
 この建物の周りには、木々が生い茂っている。
 その木々を抜けると、湖が見えてくるのです。
 (後で湖を見に散歩に行ってみようかな)

 いつもとは違う部屋で、ルーナの気持ちは、舞い上がっていました。

 休憩を終えたルーナは、一階に下りていきます。
 一階に下りると、二人がリビングにあるソファに座っています。
 シャルルが、ルーナの気配に気がつく。

 「ルーナ。もう大丈夫?」
 「はい。十分に休むことが出来ました」
 「そうか」

 ルーナは、笑顔でシャルルに話す。

 「シャルル様、お願いがあります。湖を見に行ってみたいです」
 「行こう」

 シャルルは、ルーナの提案に答えてくれる。

 三人は準備を済ませると、湖に続く森の中を歩いていきます。

 「ルーナ様。昨晩の雨でぬかるんでいるため、足元にはお気をつけくださいね」
 「気を付けて歩きますね。エドモンドさん」

 エドモンドの心遣いを受け、ルーナはゆっくりと慎重に歩いていきます。

 湖に到着した三人は、澄んだ美しい湖を眺めます。

 深い青色をしていて、ずっと眺めていたら、湖の底まで吸い込まれそうな感覚になる。

 ルーナは、二人に質問をする。

 「湖には、生き物などは生息しているのでしょうか?」
 「どうだろう。少しは生息していると思うよ」
 「見つけられるかもしれませんね」

 旅行のことを知っていたら、調べてきていたのにと、ルーナは思ったのでした。

 「あっち側を見てきますね」

 ルーナは、二人に行き先を伝えると、少し遠い所まで歩いていく。

 すると、水辺の辺りで小さな生物を見つける。
 大きさは、目を凝らして見ないといけないほどの小ささであった。

 「小さい」

 こんなに小さくても一生懸命に生きているのだと感じた。

 ルーナは、エドモンドが持参した日傘を差している。 
 涼しいとはいえ、ずっと日に当たり続けていると流石に暑くなってしまう。

 普段使わない日傘を差していると、どこかの貴族のお嬢様になった気分になる。

 一時間ほど湖で過ごし、別荘に戻った。
 帰り道の森の中。
 ルーナは、シャルルとエドモンドに、挟まれながら歩いていた。
 一定の間隔を取りながら、前にシャルル、後ろにエドモンドがいる。

 突然、霧が濃くなっていく。
 すぐ目の前も見えないほどの濃さだった。

 「見つけた」

 耳元で、囁かれる聞き覚えのある声。
 目の前で、黒いシルエットがふわりと浮かび上がると消えていった。
 一瞬の出来事だった。

 霧が少しずつ薄くなっていく。

 「ルーナ」

 すぐ近くにシャルルが立っていた。
 さっきまで見えなかったはずなのに。

 「シャルル様」

 ルーナは、シャルルのもとまで走った。
 短い距離のはずなのに、時間がゆっくりと進んでいるようだった。

 シャルルの体を強く抱き締めた。

 「ルーナ?」

 シャルルは、ルーナの体に手を回す。

 「い、いきなり、見えなくなったから」

 今にも泣きそうな声でルーナは話す。

 「大丈夫。ここにいるよ」

 数十秒後、エドモンドが駆け付ける。

 「ルーナ様」

 心配そうにルーナのことをみている。
 ルーナは、シャルルを抱き締めるをやめる。

 「エドモンドさん」
 「お怪我はございませんか?」
 「ありません。エドモンドさんは?」
 「私もございません」

 三人は、急がずゆっくりと、別荘に帰りました。

 水溜まりに入っていたようで、足が汚れていました。
 ルーナは、タライに張ったお湯で洗い流します。

 ルーナは一人考えていた。
 さっきのことをシャルル様に言うべきなのだろうか?
 せっかくの旅行なのに、話してしまえば暗い雰囲気になってしまう。
 始まったばかりなのに。

 残像のように脳裏にあのシルエットがこびりついている。

 屋敷に帰ってからでも遅くはない。
 今は、ただ楽しい時間を過ごしたい。