ひとりぼっちの私のことを救ってくれたのは魔法使いでした。

 ルーナは目を覚ますと、急いで着替え、部屋を出ていく。

 クリスマス当日。
 ルーナは、朝早くからキッチンに立っている。
 早く作って準備をしておかないと、皆にバレてしまう。
 早速、材料を準備していく。
 もう何度もやったので、慣れた手付きで準備していく。
 小麦粉、塩、バター、卵、砂糖、レモンを準備する。
 器に小麦粉とバターを入れて混ぜ、砂糖も入れる。
 生地が出来上がった。
 今はオーブンには入れず、夜になる頃にオーブンに入れる予定である。
 それまで冷えた場所に置いておくことにした。

 「これで大丈夫なはず」

 ルーナは、使った調理器具などを洗い片付けを終えるとキッチンを後にする。

 本日は、食堂でクリスマスパーティーをする予定である。
 もう街は、クリスマスを迎える前からクリスマスの装飾などが飾られ始めていた。
 日にちが近づくにつれて、さらにクリスマスムードが増していっていた。

 この屋敷も例外ではなく、談話室にはクリスマスツリーや装飾がされている。

 ルーナは、その前にいつもの日課を済ませるため部屋に戻る。
 日記を記すのである。
 『いよいよクリスマス当日。朝早くから準備を進めた。皆さんがどんな反応をするのか、今からとても楽しみだなぁ』

 この続きは、クリスマスパーティーが終わったら記すことにしよう。
 
 今までの日記の内容を読み返してみる。
 『初めてアップルパイを作った。料理を作るのは大変なことだと知った。エドモンドさんに手伝ってもらい作ることが出来た』

 日記帳を閉じる
 立ち上がり、窓の外を見ると雪が降っている。
 朝よりも雪の量が増えている。

 「雪、積もるかな?」

 ルーナは、あくびをする。
 早く起きたせいなのか、少し眠気がきた。
 少しだけを眠ろう。

 ルーナの部屋の扉のノックされる。
 しかし、反応はなく扉を開いた。
 扉を開けたのは、シャルルでした。
 部屋の中に入ると、ルーナは眠っているようです。
 ベッドの側にいくと、ルーナに対して、シャルルは壊れ物を扱うように慎重に髪を撫でた。

 「疲れたのかな?」

 シャルルは、それだけすると部屋を出ていった。



 ルーナが目を覚ます。
 時計を見ると、二時間程ほど眠っていた。

 クリスマスパーティーまで時間がある。
 (何をして時間を過ごそう?何かあるかな?)
 少しだけ外に出て街の様子を見てみたいと思った。

 ルーナは、シャルルがいる書斎に向かう。
 扉をノックすると、シャルルは部屋に入れてくれた。

 「ルーナどうしたの?」

 ルーナは、入ってすぐにシャルルに伝える。

 「実は、シャルル様にお願いがあります。クリスマス当日の街の様子を見に行きたいです」

 シャルルは少し悩んでいる。

 「クリスマスは多くの人がいるだろうし…」  
 「屋敷の近くだけでも、ダメですか?」

 ルーナは、シャルルに目で訴える。

 「仕方がないなぁ、少しだけだよ」

 シャルルは、ルーナの手取ると魔法で瞬間移動をする。

 「わあ」

 思わず声を出た。

 着いた場所は、路地裏。
 服装も暖かい上着を着ている。

 路地裏から出ると、シャルルの後をついていく。
 そこは、屋敷から数メートル離れた場所でした。

 店には、クリスマスらしいものが売られている。
 見ているだけで楽しい気分になってくる。

 「どう?」
 「楽しいです」

 ショーウィンドウに並べられている商品がキラキラと輝いている。
 
 「素敵」

 声に出てしまう。
 それほどに、素敵なのである。

 一通り、店を見ると再び路地裏に向かう。  
 シャルルと手を繋ぐと次の瞬間には、書斎に戻っていた。

 シャルルにお礼をすると、ルーナは部屋をいった。
 さっきのことを思い出す。
 幸せそうに歩く人々、キラキラと輝いているショーウィンドウの光。
 余韻に浸りながら部屋まで戻る。

 部屋に戻ると、ルーナはリリーにおすすめされた本を読むことにした。

 題名は『ヤドリギの約束』。
 この本は、ある夜の日に運命的に出会った、男女が織り成す一日限定の恋の物語。

 ページにはこのように書かれていた。
 『君は知っているかい?ヤドリギの下で口づけを交わすと結ばれるということを…』  

 く、口づけ……。
 あの植物にはそんな話があるのか。
 顔が熱くなる。

 『いいえ、存じ上げませんでした』

 男性が女性の手を引く寄せると、口づけを交わした。
 その様子をヤドリギが二人を見守っていた。

 ルーナは、突然本を閉じた。
 再び、顔に熱が集まるのを感じる。

 そのあと、ルーナは本を閉じるとぼーっと、外の窓を見つめながら時間を過ごした。

 扉のノックする音で、意識をはっきりと取り戻す。
 扉を開くとそこには、リリーが立っていた。

 「ルーナ様、お食事の準備が出来ました」
 「はい」

 ルーナは、リリーのあとに続いて歩く。
 食堂に着くと、いつもよりも豪華に装飾が飾られている。
 シャルルもやってくると、いよいよクリスマスパーティーのはじまりだ。

 テーブルには、サラダや魚料理。
 肉料理など前菜からメインディッシュまでどんどん豪華な料理が運ばれてくる。

 どれもこれも美味しい。
 ルーナは皆で楽しんでいる。

 「とても美味しいです」
 「嬉しいでございます」
 エドモンドが喜んでいる。
 
 しばらくすると、ルーナはお手洗いに行くと言い席を立った。
 もちろんキッチンに向かうためである。

 数時間前に作っておいたアップルパイを焼くのである。
 まだ、デザートの時間まであり、時間は十分ではないかと思う。

 いつもの食事の時間よりも会話をしながらゆっくり食事をしているためである。
 せっかくなら出来立てを食べてもらいたい。

 キッチンに着くと、オーブンはすでに余熱が終わっていた。
 もしかして、エドモンドさんがやってくれたのかもしれない。

 心の中で感謝をし、アップルパイをオーブンに入れる。
 入れ終わると、時間を確認する。
 この時間になったら、またキッチンに来なければとならない。
 
 食堂に戻ると、残りの食事の続きを始める。
 食事を終えると、談話室に移動する。
 その前にルーナはキッチンに寄る。

 オーブンを開けると、ちょうど良く焼き上がっている。

 透明のケーキスタンドにアップルパイを入れる。
 アップルパイを持つと、談話室に向かう。

 食器などはすでに談話室の棚に完備されている。

 すでに四人は、談話室に移動していた。

 ルーナは部屋に入ると、入り口の近くにあった木製のワゴンにアップルパイを置く。

 「アップルパイを作ってみたのですが、もし良ければ、召し上がってください」

 ルーナは、皆の視線を一身に集める。

 「皆で頂こう」

 シャルルが言ってくれると、ルーナは、数分のアップルパイを皿に分ける。

 シャルルがルーナからアップルパイを受けとる。

 「いただいてもいいかな?」
 「もちろん」  

 シャルルは、アップルパイを一口食べる。

 「お、美味しい、ルーナ美味しいよ」

 幸せそうな表情をしてくれている。

 「皆さんも是非食べてください」

 三人もアップルパイを食べていく。

 「「美味しいでございます」」

 「美味しい、美味しいでございます」

 「ありがとうございます。ルーナ様、素敵な贈り物です」

 ルーナもアップルパイを食べる。
 (美味しい、よかった失敗せずに作ることが出来た)

 皆、私が作ったアップルパイを食べて幸せそうな表情をしてくれている。
 嬉しい気持ちになる。
 作ってよかったと心から思えた。

 その後は、ゲームをしたりして遊んで過ごした。

 最後にクリスマスツリーの下にあるプレゼントを開けることになった。
 シャルルは、ルーナに箱を渡してくれる。

 「開けてみてごらん」

 ルーナは、箱を開ける。
 中には、ブレスレットが入ってる。 
 月の形のパーツが装飾されている。

 「シャルル様、ありがとうございます」

 シルーナにブレスレットをつけてみる。
 ルーナは、腕につけてくれたブレスレットをみる。
 おしゃれで可愛らしい。

 「喜んでもらえてよかったよ」

 三人は、片付けをするため部屋を出ていった。

 ルーナは、一人クリスマスツリーの前に移動した。

 「ルーナは、知っているかい?ヤドリギの伝説」

 「ヤドリギの伝説?」

 知っていたけど、咄嗟に知らないふりをした。
 するとシャルルは、ルーナの手を掴むと自分のほうに引き寄せた。
 バランスを崩したルーナは、シャルルの胸に飛び込んでいく。

 「シャルル様……」

 ルーナは上目遣いにシャルルを見つめる。
 バランスを整えようとシャルルの体から離れようとするが、シャルルは離してくれない。

 「どうなさいましたか?シャルル様」

 シャルルは、ルーナの頬に触れる。

 「ヤドリギの下で口づけを交わすと結ばれる」

 シャルルの顔が近づいてくる。
 ルーナは思わず目を瞑った。

 「冗談だよ。すまない」

 目を開けると、シャルルは意地悪そうな顔で微笑んでいる。
 ルーナの顔は真っ赤になり、急いで下を向く。
 (なんでこんなに胸が……)

 ルーナは、居ても立っても居られなくなり部屋を出ていった。
 シャルルは、談話室で一人に残された。

 「意地悪をし過ぎてしまったかな?」  

 ルーナは、部屋を出ると扉に寄りかかり、胸を押さえる。
 なぜ、こんなに胸が苦しくなるのだろう。

 治まらない、このドキドキをどう止めれば良いのだろうか。
 ルーナは、気付きはじめていたのです。
 自分の気持ちに……。
 この関係性を……。

 しかし、ルーナはそれを言葉にすることは出来なかったのでした。