ひとりぼっちの私のことを救ってくれたのは魔法使いでした。

 ルーナが目を覚ます。
 そこは暗闇に包まれていて、部屋のようなです。
 朦朧(もうろう)とする意識の中で、僅かに光が漏れているのを発見します。
 意識がはっきりしてくると、左肩に痛みを感じます。

 「い、痛い」

 思わず声が出てしまう。
 痛む左肩を押さえながら起き上がる。
 (ここはどこなのだろうか?)
 この場所は湿っぽく、カビのような匂いがし、なんともいえない怖さを感じた。
 反対側を向くと鉄格子が現れる。
 (どうやら牢屋のようだ)

 「シャルル様」

 ルーナは、今にも泣きそうな声でシャルルの名前を呼んだ。
 牢屋の外の僅かな光を頼りに、鉄格子に手を掛けるが、びくともしない。
 何度も試しましたが、開くことはなく途方にくれてしまいます。
 (怖いよ、早くここから出たいよ……)
 心の中で、何度もシャルルの名前を呼ぶ。

 遠くから、階段を下りてくる足音が聞こえ、ロウソクの光が地面を照らすのが牢屋の外から見える。
 もしかして迎えに来てくれたのではないかルーナはそう思った。

 「シャルル様ー」

 大きな声で、シャルルの名前を呼ぶルーナであったが、残念ながらシャルルではない別の人のようである。
 シャルルではない、知らない一人の男性が牢屋に近づいてくる。
 服装は、マントを羽織っている。
 
 「ローズ姫、お目覚めになられましたか?」

 (ローズ姫?)

 「今朝も話しましたが、ローズ姫、なぜ拒絶するのですか?」

 (どういうことなの?この人は誰かと勘違いしているの?)

 「わ、私は、ローズ姫ではありません」 
 
 ルーナは、男性の言葉に戸惑ってしまう。

 「何を言っておられるのですか。ローズ姫、私が何のためにドラゴンを倒したとお考えですか?」

 (ドラゴン?倒した?)

 ルーナは、一度自分が置かれている状況を整理していきます。
 (もしかしてこの男性は、さっき読んでいた物語に出てきた勇者なのだろうか?でも、確かお姫様はドラゴンになってしまったはずではなかっただろうか…)

 「ですから私は、ローズ姫では……」

 しかし、何度違うと説明しても勇者は、ルーナの言葉を聞いてくれないのです。
 (どうすればよいのだろうか?)
 考えたルーナは、一か八かローズ姫になりきることにしたのです。
 (話を聞いてもらえないのであれば、私がローズ姫になりきるしかない)

 「勇者様、ここから出していただきたいのでございます」

 必死に勇者に懇願するローズ姫(ルーナ)。

 「それは出来ません。ローズ姫」
 「なぜなのですか?」
 「私と結ばれることを承諾してくださらないからではありませんか。私は、心苦しいのでございます。聞いてくだされば、ここから出ることが出来るというのにあなたは、ずっと拒否し続けておられる」

 ルーナは必死に考えます。
 (でもその条件を認めてしまったら、もうこの物語から出られず戻れなくなってしまうかもしれない)

 「お父様、お父様をお呼びください!」
 「それは、出来ませんローズ姫」

 勇者はローズ姫(ルーナ)にいう。

 「なぜ?」
 「王様は、すでに私たちの結婚を認めてくださっています」

 (そんな、どうすれば……)
 ルーナは、一生懸命に考える。
 ここから出ていける方法を、出るためのアイデアを絞り出していく。
 (そうだ)
 良いアイデアを思い付いたが、上手くいくかは分からないが、試してみることにした。
 そしてルーナは、さっきまでの弱気な話し方から強気な話し方に変えると、勇者にまた話しかける。

 「いいでしょう。勇者様、あなたと結婚することを承諾いたしましょう。ですから、ここから出してくださいませんか?」
 「本当に良いのですか!ローズ姫」

 勇者が食い気味に相槌をして、心から喜んでいるのが伝わってくる。
 (どうやら勇者は、私の言葉をして信じてくれている)
 ひとまずルーナは、一つ目の問題を乗り越えることが出来たのでした。


 一方その頃、シャルルとエミリオは、城の中を歩き回り探していたのでした。
 シャルルとエミリオは、ある部屋に落とされていたのです。
 最初にシャルルが目を覚ましました。
 起き上がりシャルル辺りを見回すと、シンプルな造りのベッドに机、洋服入れがあり、おそらく使用人が使っている部屋だと推測する。

 少し遠くにエミリオが倒れてるがみえる。
 シャルルは、エミリオの近くに寄ると
 体を揺すり名前を呼び、エミリオを起こす。

 「エミリオ、エミリオ大丈夫か?」

 エミリオもシャルルの声が聞こえたのか目を覚ました。

 「シャルルか」
 「ああ。エミリオどこかケガしてないか?」
 「大丈夫だ」

 シャルルは、エミリオを起き上がらせるために手を差し出す。
 エミリオは起き上がると一瞬頭を押さえた。
 シャルルに気を使って大丈夫と言ったがどうやら頭を打ってしまったらしい。

 「シャルルこそ大丈夫か?」
 「何ともないよ。それより、早くルーナに探しに行こう」

 シャルルとエミリオは、準備を整えるとその部屋を出ます。
 外まで出ると、シャルルは遠くに城の関係者らしき人が通るのを発見したのです。
 ここは、本の世界見つかれば何をさせるか分からないため、二人は声をかけずに静かにその人を見送ったのでした。
 だから、普段よりももっと慎重に行動をしなければなりません。
 二人は、最初にいた部屋で、魔法が使えるか試しました。
 しかし残念ながら初級の魔法しか使えなかったのです。
 これでは、ルーナを探すのに時間がかかってしまいます。

 「ルーナどこにいるんだ……」

 もどかしい気持ちで、シャルルは灰色の薄暗い空を見上げ、どこかにいるはずのルーナを思うのでした。