「給食のおばちゃんたちは真夏の海へ逆ナンに繰り出してしまったので、調理実習の名目でお昼を作ります」
無法地帯すぎる…
「千夏は山菜の炊き込みご飯作る!」
「じゃあ先生はお吸い物を作ろうかな。お〜い溝口、タカ&トシ、粉がすごいことになってるからやめろ」
溝口は坊主頭に汗を光らせながらピザを頭上で回し、双子のタカシ君とトシキ君はスパァンッ!スパァンッ!と激しくうどんを手打ちしている。なぜそんなに本格的なものを…
俺はというとポニーテールを揺らしながらお米を研いでいる千夏ちゃんの隣で山菜を切っている。
先程の久勢先輩との10年ぶりの邂逅を思い出す。
『君のことはなんて呼べばいい?』
『昔みたいに呼んでもらえれば…』
『昔…?かむちゃん、かむぽっく、かむかむ、何がいいかな?』
そんな三段活用みたいな呼び方してなかったじゃない…
「てんこーせー、山菜切りすぎとる」
まな板の上でてんこ盛り状態の山菜が喋る。厳密には山菜の影から千夏ちゃんが。
『あだ名いい感じに韻を踏めるの考えつくまで、とりあえず転校生って呼んどるね!』とのことで転校生呼びが定着したのだが。
韻を踏まなくていいんですけど…なんで?ラップ?
逸れた思考を戻す。山菜をお湯にくべながら考えるのは、久勢先輩が俺のことを覚えてなかったことについてだ。
先輩は先程の短い会話の後、『送り火の儀式の練習があるから』と別行動となってしまった。
まだ正式に先輩本人から名前すら聞けていない…
「アキちゃん送り火の練習しとるから、炊き込みご飯おにぎりにして持っていっちゃろ」
ナイスアイディア…千夏ちゃんに倣い俺もすかさず3合分のご飯をギュッ…と圧縮しおにぎりを陳列していく。
「多くない??」
溝口君からの突っ込みが入るが、これは俺の作戦なのだ。
久勢先輩がおにぎりを食べている間は会話ができる。
いっぱい作っていっぱい持っていこう…
「10年前に出会って見た目全然老けてないのはおかしいし、アキちゃんじゃないんじゃモグゥ」
「名前も教えてもらえなかったってのもおかしいじゃモグゥ」
おだまり…と俺はタカシ君とトシキ君の口におにぎりを運ぶ。
「けど久勢先輩は確かにミステリアスなとこあるよな。どこに住んでるかも謎だし」
「何を言ってるんだ溝口〜久勢が住んでるのは山の上の神社だろ?」
「自転車で来れる道なら俺達は秒、いや瞬で来れますけど」
「瞬」
「道が悪すぎて自転車で来れないとなると遠いから、学校の寮に住んでるって聞きましたけど」
「この学校寮なんてあるのか?」
「教師が把握していない」
「いつも帰り、久勢先輩は“御石様”の辺りで姿を消すし」
調理実習室の窓の外、溝口くんが指差した先にはちょうど先程俺が久勢先輩と再会を果たした祠と石、立て札が見える。
「あの立て札と石は…」
「100年くらい前、隕石が落ちてきたらしい。
で、その隕石が何かとご利益をもたらしたから、それ以来ここの村人が“御石様”と言って神様として信仰している。
立て札は当時隕石が落ちてきたときの村人の心情と信仰されるに至った経緯が書かれてる」
昔の人も感動したときはビックリマーク多用するんだな…
文末に乱舞していた“!”を思い出す。
「石の亀裂は隕石として落ちてきた時にできたものなんですか?」
「昔は亀裂はなかったって村の年寄りは言ってたけどな〜」
担任教師の言葉に、俺は何か引っかかりを覚える。石の亀裂を見たときに感じた懐かしさ。あれは…
「食べ終わったしアキちゃんにおにぎり届けに行かんまいけ!」
立ち上がった千夏ちゃんに手を引かれ、俺の思考はここで霧散した。
無法地帯すぎる…
「千夏は山菜の炊き込みご飯作る!」
「じゃあ先生はお吸い物を作ろうかな。お〜い溝口、タカ&トシ、粉がすごいことになってるからやめろ」
溝口は坊主頭に汗を光らせながらピザを頭上で回し、双子のタカシ君とトシキ君はスパァンッ!スパァンッ!と激しくうどんを手打ちしている。なぜそんなに本格的なものを…
俺はというとポニーテールを揺らしながらお米を研いでいる千夏ちゃんの隣で山菜を切っている。
先程の久勢先輩との10年ぶりの邂逅を思い出す。
『君のことはなんて呼べばいい?』
『昔みたいに呼んでもらえれば…』
『昔…?かむちゃん、かむぽっく、かむかむ、何がいいかな?』
そんな三段活用みたいな呼び方してなかったじゃない…
「てんこーせー、山菜切りすぎとる」
まな板の上でてんこ盛り状態の山菜が喋る。厳密には山菜の影から千夏ちゃんが。
『あだ名いい感じに韻を踏めるの考えつくまで、とりあえず転校生って呼んどるね!』とのことで転校生呼びが定着したのだが。
韻を踏まなくていいんですけど…なんで?ラップ?
逸れた思考を戻す。山菜をお湯にくべながら考えるのは、久勢先輩が俺のことを覚えてなかったことについてだ。
先輩は先程の短い会話の後、『送り火の儀式の練習があるから』と別行動となってしまった。
まだ正式に先輩本人から名前すら聞けていない…
「アキちゃん送り火の練習しとるから、炊き込みご飯おにぎりにして持っていっちゃろ」
ナイスアイディア…千夏ちゃんに倣い俺もすかさず3合分のご飯をギュッ…と圧縮しおにぎりを陳列していく。
「多くない??」
溝口君からの突っ込みが入るが、これは俺の作戦なのだ。
久勢先輩がおにぎりを食べている間は会話ができる。
いっぱい作っていっぱい持っていこう…
「10年前に出会って見た目全然老けてないのはおかしいし、アキちゃんじゃないんじゃモグゥ」
「名前も教えてもらえなかったってのもおかしいじゃモグゥ」
おだまり…と俺はタカシ君とトシキ君の口におにぎりを運ぶ。
「けど久勢先輩は確かにミステリアスなとこあるよな。どこに住んでるかも謎だし」
「何を言ってるんだ溝口〜久勢が住んでるのは山の上の神社だろ?」
「自転車で来れる道なら俺達は秒、いや瞬で来れますけど」
「瞬」
「道が悪すぎて自転車で来れないとなると遠いから、学校の寮に住んでるって聞きましたけど」
「この学校寮なんてあるのか?」
「教師が把握していない」
「いつも帰り、久勢先輩は“御石様”の辺りで姿を消すし」
調理実習室の窓の外、溝口くんが指差した先にはちょうど先程俺が久勢先輩と再会を果たした祠と石、立て札が見える。
「あの立て札と石は…」
「100年くらい前、隕石が落ちてきたらしい。
で、その隕石が何かとご利益をもたらしたから、それ以来ここの村人が“御石様”と言って神様として信仰している。
立て札は当時隕石が落ちてきたときの村人の心情と信仰されるに至った経緯が書かれてる」
昔の人も感動したときはビックリマーク多用するんだな…
文末に乱舞していた“!”を思い出す。
「石の亀裂は隕石として落ちてきた時にできたものなんですか?」
「昔は亀裂はなかったって村の年寄りは言ってたけどな〜」
担任教師の言葉に、俺は何か引っかかりを覚える。石の亀裂を見たときに感じた懐かしさ。あれは…
「食べ終わったしアキちゃんにおにぎり届けに行かんまいけ!」
立ち上がった千夏ちゃんに手を引かれ、俺の思考はここで霧散した。
