あの夏の日、先輩は

最後尾はこちらですみたいな状態になっている…

真っ先に頭をよぎったのは、双子が言っていた“狂信者”の存在。

そして彼らがすでにこの世に生きてはいないのであろうことも察した。

フードから覗く顔は誰もが顔に皺が寄り、60代後半〜70代くらいのように見える。
その中でも先頭に立っていたリーダー格のような男が進み出る。

「まずは謝罪を…

あなたを死者に数えてしまっており、申し訳ありませんでした。

いかんせん、

“今日は山田さんが亡くなったって”

“え?佐藤さん?山田さん?”

“鈴木さんじゃなかったっけか??”

と伝達手段が伝言ゲーム状態でして。

コイツも死者か?どうだ?

というのを感知しましたら、

ーよし、


とりあえず行こう、と」


切実に光回線がほしい…

死者界隈の大変さを物語る彼らの背中に思わず心の中で敬礼を送る。


しかし先輩の言っていた、“俺が死者に数えられている”、“村で誰かが死ぬと死者たちの葬列が始まってしまう”

この2つから連想されるのは。

「洪水の日も葬列が行われていた…?」

「そうです。

この黒い合羽はトンネルの中は滴ってくる水滴で服がビッチャビチャになるからやね」

「弔い諸々が済んだあとは皆で銭湯に行く。

そしてちょっと嫌がられるくらいまで居座る」

「儂は最近市原隼人って言われたのちょっと照れちゃうね」

銭湯にゾロゾロいたのこの人たちか〜〜


「御石様は、あの日の死者は上弓月村だけだとおっしゃっていたでしょう。

あの日、洪水の前に上弓月村で老衰で亡くなった者がいた。

下弓月村で亡くなった上弓月村出身者がいれば上弓月村へ連れて行く。

逆も然り。

上弓月村で亡くなれば下弓月村に待つ家族の元へ連れて行く。

私らが率先してトンネルの中を歩いている時に、あの洪水が起こった。


そして願った。ただ死を待つばかりの儂らより、どうか村に残された儂らの家族をお守りください」

「御石様に願いは聞き届けられたが、上弓月村の誰も助からなかったことで御石様への信仰が薄れてしまった。

願ったのは儂らなのにだ。

それで立て札に御石様の奇跡を書いたのだが…」

「“必要な犠牲だった”」

「書き方ァ…」

額に手を当て天を仰ぎ見るリーダー格の男。

「神は信仰されないと存在を保てない。

だからせめて儂らは卒業するまで御石様の信仰を続けることにしたのです」


「卒業…」

アイドル?

成仏ではなく?


「今日、メンバーの1人が卒業になります。

今日は特別にお迎えのセンポクカンポク様にはこちらに出向いていただいています」

「センポ…何???」


突然黒マント全員が「探せ!」と腰を低くし出したため、俺も地面に視線を彷徨わせる。
何この状況…

「いいよ今日は人目につかん場所だし」

「デッッッ」

カァ…等身大の着物姿のカエルがそこに立っていた。

等身大のカエルってなかなかに恐怖だな…


「葬列の周回ルート終点が今じゃちょうど校舎建っちゃったもんね〜目立つ目立つ」

「ですから普段はアマガエルの姿でお迎えに上がってくださるんですよね」

「あぁ、それで…」

つまり黒まんまい様はお辞儀をしていたわけではなく。

必死にアマガエルを探していたわけだ。


「センポクカンポク様はこの地方に伝わる死者を導く妖怪様なのです」

彼らは出来る限り御石様の信仰心を保つ存在であるために、ギリギリまで卒業(成仏)しないよう正気を保とうとした結果、死の間際に行っていた“死者が出たら葬列をする”というルーティーンができたらしい。
そんな…ボケ防止的な…

「今日は4期生の中村くんが卒業です」

「皆さん今までありがとう!来世は港区女子に生まれ変わりたいです!」

「達者でなぁ〜!」

「だいぶ現代の思考に毒されている」

もっと今村にいる人たちの信仰心を高めるPR活動とかじゃ駄目なんだろうか?

「駄目なんです。

なぜなら御石様のご指示でほとんどの村人を村から追い出したわけですから」

「えっどうして」

「セーブポイントまで戻ってみてください

ヒントは『10年前』、『変更された送り盆の行事』」

なんだろう…言い方がいちいちこう…
なんだろう…

「生きている村人を減らして、私らも成仏させて、御石様はお役目を終えようとしております。

御石様を90年余りずっと見守ってきた儂らとしては、あの方には悔いのない選択をしてほしい。

それができるとしたらあなたの力だから、こうしてお願いに参りました」

黒マントの老人たちが正座して並ぶ。


「それからもう1つー


頭のイカれた男が御石様に手を出そうとしているー

どうか今は御石様の傍に」


俺はすぐさま元来た道を引き返し始めた。