あの夏の日、先輩は

あの後隣町からバスや電車を乗り継ぎ、先輩の家にやっと着いたのは真夜中だった。


そのまま先輩の家で疲れて眠ってしまった俺は、目覚めると先輩からしきりに体調を気遣われた。

俺はむしろあんなに魘されていた先輩のほうが心配だ。


人形神に襲われたという下りは教えたが、なんとか自力で逃げ出せたということにしてあの男のことは先輩に伏せた。


おそらく調べていけば男のことはすぐに分かるだろう。
余計なことで先輩を煩わせたくなかったし、先輩を狙っている奴の情報を教えれば先輩が危険を冒すかもしれないリスクも増える。


「やっぱり…早急に土地神オーディションをやったほうがいいね」

「土地神オーディション」

先輩は、学校に行けない間この土地にふさわしい土地神様を探すという。


先輩を監禁している自覚はある。
心苦しく思いながら、これ以上先輩を危ない目に合わせたくないという気持ちのほうが強い。

あの男の言ったとおり先輩は御石様で今この村における土地神様なんだろう。
別の土地神様を探すということは、先輩はどうなるのだろう。


俺と一緒に生きてくれるのだろうか。







先輩の家から学校へ行く…となると、やはり相当な距離がある。
先輩から「一瞬で行けるよ?」という例の不思議ワープをオススメされたが、とりあえず先輩の家周りにあの男の脅威がないかどうか確認しておきたかった。

今の所怪しい痕跡はなさそうだが…


ふと、洪水で塞がれてしまったトンネルが視界に入った。

先輩が言うには、あれから開通はされていないという。


思わず覗き込んでいると

「もし、」


振り返ると黒いマントを着た集団がズラリと十数人、俺の後ろに並んでいた。