あの夏の日、先輩は

古来より、“石を持ち帰ってはならない”という話は古今東西伝わっている。

石には意思が宿るという(洒落とかではない)

例えば日本では山や川ー自然そのものに神が宿るとされる。

石はそんな神ともされる大自然の一部だ。

だからかー

元の場所へ戻ろうとするという。

そうして石を拾った持ち主が元の場所に返すまでそこから離れようにも離れられず、家には帰れなくなるという。






先輩と目覚めたのは薄暗く、土とカビの臭い
ーどこか倉庫の中のような空間だった。


高い位置にある鉄格子のはめられた窓からの月明かりで、中全体の様子が映し出される。

祖母の家にもあるーおそらく土蔵だろう。

「先輩…先輩?」

先輩はどこか熱に浮かされたような、荒い息と赤い顔で地面に蹲っている。

先輩を姫抱きにすると、ひとまず正面の扉は出られないか試してみる。

分かってはいたがビクともしない。

酸素が薄いのかもしれない。窓の近い2階の方がマシだろうかと先輩を姫抱きにしたまま階段に足をかける。


カエ…シテ…カエ…シテ…


ギシッ、ギシッ、と。


激しく軋む音を響かせながら何かが近づいてくる。


蔵の奥、背の高い棚から半分顔を出しているのは…


人形だ。


思わず先輩を胸元に抱え込み、階段に座り込む。


息を整えもう一度、今度は慎重に人形を伺い見る。


人形の頭部だけで棚と同じ大きさー
下手したら人間大の大きさだ。

そしてその頭部は地面に這いつくばり、何かを懸命に探している。
つまりまだ見えないが、あの頭部に連なるだけのデカい図体が控えている可能性があるわけだ。

天井の高さから見るにかなり大きい土蔵だ。

嬉しくないことにあの蜘蛛のように這いつくばっている人形くらいのデカさなら余裕で収納できてしまいそうだ。





ミツケタ




いつの間にか。


俺と先輩を覗き込む人形の頭部と、目があった。