あの夏の日、先輩は

ガチャンっ



先輩がお茶をお盆ごと落とす音に俺が振り向くのに0.01秒もなかったと思う。


先輩は、なぜか顔を赤らめていた。



それからお茶を入れていたキッチンの部屋に扉を閉めて籠城してしまう。


「先輩すみませんっ!見られたくないものだと思わなくてー」

「…どう、思った?」


どう思った????

意図しない反応に予想外の質問。

「…前に先輩が、俺のせいじゃないって言ってくれたけど…

あの石像を祀っている狂信者の団体が、先輩をこの村から出られなくしている元凶なんじゃないかなって…」

思ってるんですけど…尻すぼみになっていく俺の言葉に呼応するかのように、キッチンの扉が微かな音を立てて開いていく。

今度は先輩が怪訝な顔をしていた。
その表情は初めて見ましたね〜


「狂信者…?」

「あの異形の神の石像を祀っている、人身御供を立てれば災害が止まると思っている団体っていうか…」

「異形の…神…」

今度は先輩がシュンとし出す。

ど、どうして???

「…とりあえず狂信者や異形の神様や俺が人柱になった説は全部ないから安心してね…」

「アッ、ハイ」

一気に全部解決してしまった…
そしてふりだしに戻る…

今は先輩の遺体が埋まっていることはない、ということだけ喜んでおこう。

「じゃあ俺も、りょう君に自分の話をしないとね」

何から聞きたい?と俺の前に腰を下ろそうとした先輩が、何かに気がついたように俺の後方を注視する。

視線の先は、ハンガーにかけられた俺の制服だ。
「何か入ってる?」

さっきまでまるで気づかなかったが、確かに胸ポケットに膨らみがある。

先輩が制服をハンガーから外し制服をひっくり返すと胸ポケットから零れ落ちたのは。

「…石?」

視界がぐにゃりと歪んだ。