あの夏の日、先輩は

「隣町の喫茶店まで付き合って」

「あの完成された自由研究にまだ何か追加事項が??」

「この村から移り住んだ人たちがな〜アキちゃんの神社のことと送り盆の儀式が違うって言い張るんよ

久勢神社は何代も前に廃れて跡継ぎいないはずだって言うし、

お盆も山頂の神社で飛ばし灯籠なんてしない、
ダム湖で流し灯籠をしていたはずだって。

10年前まで下弓月村にいた人は飛ばし灯籠をしたって言ってて〜

それより前に村を出ちゃった人は流し灯籠しか知らんって。

転校生は10年前も下弓月村来たことあるし、今もおるから、うまいこと説明できっちゃね?」

10年前。

それはちょうど俺がこの村に帰省していた最後の年だ。


「…そうだね、行こう。

けどその前に、さっき話しに出てきた立て札を確認していい?」

「おっ、ちゃんとポイント抑えてるね〜」

「その粋や良し」

誰目線?という双子からのゴーサインを受け、立て札の前を通る。


御石様の奇跡と思われる出来事がある度に書き連ねられ、立て札は増えていったのだろう。

その1番最初の奇跡、御石様が落下してきた日。

昭和元年 九月一日

9月1日ー

先輩の誕生日だった。







隣町ー

自転車で2時間ほどかかったんですけどこれが隣町の距離でしょうか???

足をガクガクさせる俺とは対称的に、双子は元気よく入店のベルを鳴らしながら先に店内へ。

カウンターに座ると慣れた様子で指をパチンと鳴らす双子。

「「コーヒーブラックで」」

「飲めないでしょ〜オレンジジュース出しとくわよ」

キメ顔のまま出されたオレンジジュースにストローを差しチューチュー吸い出す瞬間まで、2人は見事にシンクロした動きを見せる。

「あらっ、そっちのイケメンお兄さんは見かけない顔だね」

いかにも気のいい主婦という雰囲気のこの女性が双子の言う『喫茶店のママさん』、通称Kさんだろう。

俺は双子から話を聞いてきたことを説明し、引っかかっていたことを説明する。

「他の人たちが下弓月村を出ていった理由をご存知ですか?」

100年前の災害時に出ていった人たちを除き、隣町と合併してから一時期増えていた人口も現在にかけてここまで減った理由。

現在村に残る人口は黒まんまい様を黒人と見間違うレベルで認識できないが、先輩の言い方だとほとんどの認識できていた人たちは出ていったことになる。

しかしあの銭湯での様子を見ても、黒まんまい様がそこまで脅威だと思える行動をするとは思えないのだ。

「そうね…

知ってると思うけど、黒まんまい様?

枕元に立たれたり…意味深にずっと見つめられたりってことが続いてね。

出てった人たちは皆それが理由よ」

思っていたよりずっと実害出てる…

しかしなんだろう…
何か伝えたいメッセージでもあったのだろうか?




「今、下弓月村って言いました?」

後ろからかけられた声に振り向く。

スマホを構えた状態で立っていたのは、両耳に何個もピアスを開けた20代くらいの若者だった。