未完成のトンネル、送り火、あの夏の校舎。先輩は、

かつて下弓月(しもゆげつ)村と呼ばれたその廃村には、手掘りのトンネルがいくつかある。
しかし村が現存する頃からそのいずれもが途中で手付かずとなり、完成することなく村は廃村となった。
今ではその理由を知る者は、
誰もいない。
(“現存する廃村レポート”より一部抜粋)



今は廃村となりしばらく経つ故郷を尋ねようと思い至ったのは、あのひと夏を過ごした始まりと同じ、学生たちが夏休みに入る直前7月中旬のことだ。

ガラスは割れ蔦が這っているが当時の面影を残す校舎を前に、蝉の声が鳴り響く周囲をぐるりと見回す。

俺は、ちゃんとあの日々が過去になっているのか、ここに確かめに来たのだ。