未完成のトンネル、送り火、あの夏の校舎。先輩は、

先輩がセンチメンタルな雰囲気を醸してそのまま退場しようとしたので、俺はすかさず持ってきたおにぎりを差し出した。

「お昼まだでしたよね一生懸命握ったので食べてください今すぐどうぞすぐにどうぞ(ノンブレス)」

「ありが…

…!?…重い…???
おにぎり1個分ではない重量が両手にかかっている…」

「高濃度のエネルギーを回転・圧縮させお米3合分を通常サイズ1個分に仕上げました」

「おにぎり作りの話で合ってる?」

ヒュンヒュンと両手で圧縮シーンを再現させる俺に対し『すごっ螺旋丸出とる!』と興奮でピョンピョン跳ねる千夏(ちか)ちゃん。

螺旋丸は分からないけれど、火影の意志は受け継がれる…
そんな気がするね…

「絶対NARUTO知っとるやん。なんで1回しらばっくれた?」


チリン、チリンー



鈴の音が聴こえた。

送り火の練習も終わり日常の風景を取り戻しつつある中を切り裂くようにー

最初は微かに、徐々に近づいてくるそれはヂリヂリと、複数の鈴の音を伴ってやってきた。

黒い着物姿の村人十数名が、腰にロープを結わえ1列に歩いている。ロープには鈴、2人に1人はランタンを持ち、粛々と歩いてくる。

それは異様な光景だった。

実態を伴った幽霊とでも言えばよいだろうか…

「大丈夫、ちゃんと生きてる人たちだよ。この村の風習でね、葬列なんだ」

先輩に肩を叩かれ、俺は詰めていた息をやっと吐き出す。

「1番前の人を見てご覧。手に持ってるのはー

遺灰だろう?」

確かに異質な装いに気を取られてしまったが、骨壷に、遺影も持っている。ロープやランタンさえなければ葬列と言って差し支えないだろう。


こちらの村(・・・・・)出身だったね、竹下さんは。

こちらの村出身の人は、亡くなった後ああやって葬列を組んで村に返してあげるしきたりなんだ」

「村って…ここにはダムしか」

「あぁ、だからこのダムの下(・・・・・・)

先輩はダムを指差す。その顔からは笑顔が消えている。

「災害で水底に沈んだ村ーここはそうしてできた自然ダムなんだ。

俺達が毎年送り火で死者を弔っているのは、彼らのためでもあるんだよ」



チリン、と遠くで鈴が鳴った。