式神の加護を受け継いだ子供は七歳までに加護を具現化できれば、陰陽師以上の力を身につけることができるとされた。当時、桔梗は辰ノ宮家式神の龍の加護を濃く受け継いだ有力候補として期待されていたが、牡丹は桔梗ほどの加護はなく寵愛される姉が憎らしかった。
十二華族の中でも序列は存在する。
辰ノ宮家は下弦。
家柄に固執する野心家の両親は桔梗がそれを底上げするに相応しい期待の星として可愛がっていた。上弦一族との婚約の話も多く寄せられる中、幼馴染だった初恋の相手でさえ桔梗に好意があると知り、牡丹の増悪はますます膨れ上がる一方だった。
「牡丹がいない?」
知らせを受けた桔梗はその日、牡丹が行方不明になってしまったことを知る。見つけた時、牡丹は一人錆びれた一つの神社境内の一角に倒れていて辺りには嫌な邪気が漂っていた。結界の張られたしめ縄の横、そこからは大きな妖が手を伸ばして今にも牡丹を捕食しようとしているのが見えた。
「牡丹!牡丹に近寄らないで!!」
その日、桔梗は初めて妹を守る為に加護の具現化を成功させた。光をまとった青い龍は妖の攻撃から牡丹を守ればフッと消えてしまう。その一連の様子に牡丹は目を丸くさせれば「うわぁ~ん!」と言って桔梗に抱きつく。
「怖かった…怖かったよう!!」
「もう大丈夫、大丈夫だからね」
「ありがとうお姉様。でも凄かった今の。あれ何だったの?」
「分からないわ。牡丹を助けたいって強く念じたら龍神様が現れて。もしかしたらこれが加護の発現なのかな!」
「へぇ…凄いね!じゃあお姉様は本当に加護の力が使えるんだ!ズルいズルい~私も欲しい!!」
「えへへ(笑)。そうなのかな」
「……だから私が貰ってもいいよね」
その瞬間、牡丹の顔色が曇った。
結界のしめ縄の向こう、勢い良く桔梗を外側に突き飛ばせば後ろからは妖の手が桔梗へと伸びてきた。
「え」
その瞬間、瞳には衝撃が走ると意識を飛ばす。
次に目が覚めた時、その場には人が集まっていて皆が顔を真っ青にさせていた。
「桔梗!」
「お父様!私、私、、」
慌てた狼狽で駆け寄ってくる父。
怖くなって手を伸ばそうと顔を上げれば、父はその顔にギョっとした。
「桔梗…その瞳、まさか妖の刻印か?」
その瞳にはさっきまでなかった筈の星の刻印が痛々しくも記されており、体からは強い加護の力が失われていたのだ。父は桔梗から離れれば誰もが桔梗を腫物のような目で見下ろしている。桔梗はもう何がなんだか分からなかった。牡丹は⁈と彼女を見てみれば、向こうは幼馴染である彼に抱きついて泣いていた。
「うわぁ~ん!怖いよ…!!お姉様が私を妖の元に突き飛ばそうとした!!」
「なんだって?牡丹ちゃんどういうことだい?」
「宗次郎様~お姉様に案内されてここに連れて来られたの。それで結界の外に押しやられそうになって。私の加護の力が弱いからって妖に食べさせるつもりだったんだわ」
牡丹の言葉に皆が目を見開くと騒ぎ出す。
だが不意に加護の力が牡丹の体を覆えば、そこには綺麗な一匹の龍が姿を現した。それは加護の具現化と覚醒を示し、牡丹が真の辰ノ宮家の後継者であることを現していた。父は一連の騒動を見据え、桔梗を冷たく見下ろせば口を開いた。
「見損なったぞ桔梗。まさかお前が加護の力を偽っていたとはな」
「え、」
「禁忌と呼ばれる妖の結界領域に足を踏み入れるなど言語道断。更には牡丹の加護を我が物として振る舞い、私達の目を欺くなどなんと卑劣な。お前には失望した」
その言葉を最後に父は桔梗から背を向ければ牡丹を抱きしめる。
「すまなかったな牡丹。随分怖い思いをさせてしまったな」
「お父様ぁ…」
「加護の力は確かにお前のものだったよ。今まで苦しかっただろう」
「ええ、怖かったわ。まさか優しいお姉様にこんな仕打ちを受けるだなんて。今までも意地悪されていたの我慢してたけど今回は怖かった」
「何?今までにもこんなことがあったのか⁈」
それには一族の皆が倒れ込む桔梗を睨んだ。
大妖怪が瞳に刻印を刻むのは、言わば「娶り」を現し、桔梗は大妖怪に娶られてしまったのだ。これにより、妖怪の邪気を宿した桔梗は加護の力までもを失いいつしか一族の穢れ者として忌み嫌われるようになってしまった。それが牡丹の自作自演であると誰も気がつかないまま。
十二華族の中でも序列は存在する。
辰ノ宮家は下弦。
家柄に固執する野心家の両親は桔梗がそれを底上げするに相応しい期待の星として可愛がっていた。上弦一族との婚約の話も多く寄せられる中、幼馴染だった初恋の相手でさえ桔梗に好意があると知り、牡丹の増悪はますます膨れ上がる一方だった。
「牡丹がいない?」
知らせを受けた桔梗はその日、牡丹が行方不明になってしまったことを知る。見つけた時、牡丹は一人錆びれた一つの神社境内の一角に倒れていて辺りには嫌な邪気が漂っていた。結界の張られたしめ縄の横、そこからは大きな妖が手を伸ばして今にも牡丹を捕食しようとしているのが見えた。
「牡丹!牡丹に近寄らないで!!」
その日、桔梗は初めて妹を守る為に加護の具現化を成功させた。光をまとった青い龍は妖の攻撃から牡丹を守ればフッと消えてしまう。その一連の様子に牡丹は目を丸くさせれば「うわぁ~ん!」と言って桔梗に抱きつく。
「怖かった…怖かったよう!!」
「もう大丈夫、大丈夫だからね」
「ありがとうお姉様。でも凄かった今の。あれ何だったの?」
「分からないわ。牡丹を助けたいって強く念じたら龍神様が現れて。もしかしたらこれが加護の発現なのかな!」
「へぇ…凄いね!じゃあお姉様は本当に加護の力が使えるんだ!ズルいズルい~私も欲しい!!」
「えへへ(笑)。そうなのかな」
「……だから私が貰ってもいいよね」
その瞬間、牡丹の顔色が曇った。
結界のしめ縄の向こう、勢い良く桔梗を外側に突き飛ばせば後ろからは妖の手が桔梗へと伸びてきた。
「え」
その瞬間、瞳には衝撃が走ると意識を飛ばす。
次に目が覚めた時、その場には人が集まっていて皆が顔を真っ青にさせていた。
「桔梗!」
「お父様!私、私、、」
慌てた狼狽で駆け寄ってくる父。
怖くなって手を伸ばそうと顔を上げれば、父はその顔にギョっとした。
「桔梗…その瞳、まさか妖の刻印か?」
その瞳にはさっきまでなかった筈の星の刻印が痛々しくも記されており、体からは強い加護の力が失われていたのだ。父は桔梗から離れれば誰もが桔梗を腫物のような目で見下ろしている。桔梗はもう何がなんだか分からなかった。牡丹は⁈と彼女を見てみれば、向こうは幼馴染である彼に抱きついて泣いていた。
「うわぁ~ん!怖いよ…!!お姉様が私を妖の元に突き飛ばそうとした!!」
「なんだって?牡丹ちゃんどういうことだい?」
「宗次郎様~お姉様に案内されてここに連れて来られたの。それで結界の外に押しやられそうになって。私の加護の力が弱いからって妖に食べさせるつもりだったんだわ」
牡丹の言葉に皆が目を見開くと騒ぎ出す。
だが不意に加護の力が牡丹の体を覆えば、そこには綺麗な一匹の龍が姿を現した。それは加護の具現化と覚醒を示し、牡丹が真の辰ノ宮家の後継者であることを現していた。父は一連の騒動を見据え、桔梗を冷たく見下ろせば口を開いた。
「見損なったぞ桔梗。まさかお前が加護の力を偽っていたとはな」
「え、」
「禁忌と呼ばれる妖の結界領域に足を踏み入れるなど言語道断。更には牡丹の加護を我が物として振る舞い、私達の目を欺くなどなんと卑劣な。お前には失望した」
その言葉を最後に父は桔梗から背を向ければ牡丹を抱きしめる。
「すまなかったな牡丹。随分怖い思いをさせてしまったな」
「お父様ぁ…」
「加護の力は確かにお前のものだったよ。今まで苦しかっただろう」
「ええ、怖かったわ。まさか優しいお姉様にこんな仕打ちを受けるだなんて。今までも意地悪されていたの我慢してたけど今回は怖かった」
「何?今までにもこんなことがあったのか⁈」
それには一族の皆が倒れ込む桔梗を睨んだ。
大妖怪が瞳に刻印を刻むのは、言わば「娶り」を現し、桔梗は大妖怪に娶られてしまったのだ。これにより、妖怪の邪気を宿した桔梗は加護の力までもを失いいつしか一族の穢れ者として忌み嫌われるようになってしまった。それが牡丹の自作自演であると誰も気がつかないまま。



