幼い頃より、人ならざるモノがみえた。
不気味に微笑むそれらの正体は言わば妖と言われ、この世で人々に悪さをする邪気。
華族の統治統制が根強い皇國の世では上弦・下限と呼ばれる十二華族の一族が存在していた。皇命の下、政治への実権と地位の基盤を盤石なものとした彼らは、古より式神との繋がりが深かった。陰陽師に仕えたとされる式は血と混ざり合えば、妖から華族を守り加護の力を与えた。旧陰陽師の祖とも言われていたのだ。
そんな加護と別に国を支配していたのが陰陽師だ。
平安時代、激的に多発した妖を討伐し、治安維持を務める国の守護神と謳われた一族こそ陰陽師で、華族に渡った式神もまた陰陽師達の献上品だった。だが時代と共に陰陽師の血は薄れた。
「つまりね、今回の件を機に五芒家では新たな当主様が早くも当代入りされたそうよ。なんでも顔に酷い傷があって一日中お面を外さないとか。それでいて病弱らしいの」
「病弱?体が弱いのに当主が務まるものかしら」
「さあね~、けど陰陽師も異能持ちじゃないと当主はなれないらしいし。他にいないなら珍しいことでもないわよ。それだけ五芒家も衰退してるって意味(笑)」
「華族との張り合いは何処へやらって感じ。あ、そこにいたの?これ残り物だから持ってって構わないわよ」
桔梗に気付いた女中達は話の途中、残飯の入った器を突きつければ桔梗は礼を言って厨房を後にする。後ろではクスクスと笑う声が聞こえてくれば誰かに足を引っ掛けられ転んでしまう。見れば牡丹だった。
「あらごめんなさい?いるの気がつかなかったわ」
「…いえ」
「何よ、何か文句でもあるの?穢れ者のくせに」
牡丹は笑って桔梗を見下ろせば傍に置いてあった湯吞みを手に取り頭にぶちまけてきた。中は冷えていたが渋い茶葉の匂いが鼻を掠める。
「あら大変やっちゃったわ。うっかり手が滑ってしまって。ほら私って目が悪いでしょ?だからそんな怒らないでね?」
わざとらしい演技で左目を指さす牡丹。
同じく封印の眼帯がつけられた桔梗の左目を誇張するような動作で笑い者にしているようだ。桔梗がよろよろと立ち上がれば牡丹は裾で鼻を隠して手で仰いでいた。
「いや~ね~なんかここ邪気臭くない?渋いお茶が歯も絶たない臭さよ」
それには女中達もクスクスと笑っている。
眼帯には茶が染みて髪も着物もベトベトだ。
桔梗は慌てて散らばった残飯を拾い集めると逃げるようにその場を去った。後ろから聞こえる笑いの効果音を背に目には涙が溢れた。
不気味に微笑むそれらの正体は言わば妖と言われ、この世で人々に悪さをする邪気。
華族の統治統制が根強い皇國の世では上弦・下限と呼ばれる十二華族の一族が存在していた。皇命の下、政治への実権と地位の基盤を盤石なものとした彼らは、古より式神との繋がりが深かった。陰陽師に仕えたとされる式は血と混ざり合えば、妖から華族を守り加護の力を与えた。旧陰陽師の祖とも言われていたのだ。
そんな加護と別に国を支配していたのが陰陽師だ。
平安時代、激的に多発した妖を討伐し、治安維持を務める国の守護神と謳われた一族こそ陰陽師で、華族に渡った式神もまた陰陽師達の献上品だった。だが時代と共に陰陽師の血は薄れた。
「つまりね、今回の件を機に五芒家では新たな当主様が早くも当代入りされたそうよ。なんでも顔に酷い傷があって一日中お面を外さないとか。それでいて病弱らしいの」
「病弱?体が弱いのに当主が務まるものかしら」
「さあね~、けど陰陽師も異能持ちじゃないと当主はなれないらしいし。他にいないなら珍しいことでもないわよ。それだけ五芒家も衰退してるって意味(笑)」
「華族との張り合いは何処へやらって感じ。あ、そこにいたの?これ残り物だから持ってって構わないわよ」
桔梗に気付いた女中達は話の途中、残飯の入った器を突きつければ桔梗は礼を言って厨房を後にする。後ろではクスクスと笑う声が聞こえてくれば誰かに足を引っ掛けられ転んでしまう。見れば牡丹だった。
「あらごめんなさい?いるの気がつかなかったわ」
「…いえ」
「何よ、何か文句でもあるの?穢れ者のくせに」
牡丹は笑って桔梗を見下ろせば傍に置いてあった湯吞みを手に取り頭にぶちまけてきた。中は冷えていたが渋い茶葉の匂いが鼻を掠める。
「あら大変やっちゃったわ。うっかり手が滑ってしまって。ほら私って目が悪いでしょ?だからそんな怒らないでね?」
わざとらしい演技で左目を指さす牡丹。
同じく封印の眼帯がつけられた桔梗の左目を誇張するような動作で笑い者にしているようだ。桔梗がよろよろと立ち上がれば牡丹は裾で鼻を隠して手で仰いでいた。
「いや~ね~なんかここ邪気臭くない?渋いお茶が歯も絶たない臭さよ」
それには女中達もクスクスと笑っている。
眼帯には茶が染みて髪も着物もベトベトだ。
桔梗は慌てて散らばった残飯を拾い集めると逃げるようにその場を去った。後ろから聞こえる笑いの効果音を背に目には涙が溢れた。



