病弱陰陽師と封鬼の娶嫁

辰ノ宮家が十二華族を降格したのはそれから直ぐだった。
今回の事件を踏まえ、五芒家は正式な話し合いを求めるべく辰ノ宮家に足を運べば、そこは地獄だった。

「どうして⁈どうして私はお嫁に行けないの⁈」
「いい加減にしなさい牡丹!」
「こんなのおかしい!辰ノ宮家が下弦を降格するなんて、、!私は五芒様の花嫁になるの!!」

中では一際怒り狂う姿が目立つ牡丹が、斗李の存在に気がつけば駆け寄ってくる。

「五芒様!私を貴方の花嫁にして下さい!私を助けて」

それには父達も顔を真っ青にさせていた。
妖に操られていたといえ、基本の考えは何ら変わらない。牡丹は今回の不始末において一ミリたりとも自分への非を認めてなどいなかった。それどころか斗李に縋り付けば花嫁にしろとせがんでいる。

「離れろ。気安く触るな」
「キャ、」

斗李は乱雑に腕を振り払えば牡丹は倒れてしまった。
それには目も暮れず、斗李は辰ノ宮家の当主である牡丹の父に近づけば、向こうはその殺伐とした空気に押し殺されそうになっていた。

「な、なんだ、、これは一体…なぜ我が家が降格など!!」
「そこの娘が俺の花嫁に危害を与えた。加えて過去桔梗に刻印した妖との事件に関与してる疑いもある」
「な、何を言うか!!」

だが斗李の背後に控えていた治安警察が提出書類を掲げる。
そこには過去、辰ノ宮牡丹が妖と契約し、姉・桔梗を穢れ者にすべく結界外においやったとされる事実、また加護を封印した事実が詳しく述べられていた。

「これは一体…噓だ!娘はそんなことしていない!全てでっちあげだ!」
「ほお…ならばそこにいる娘を調べる他ないな」

斗李が冷たく牡丹を睨めば、牡丹は何も言えずに固まっていた。こんな時でも斗李の顔は美しい。今は面も付けていなかった為か、初めてその顔を拝んだ牡丹の父親達にとっては驚きを隠せなかっただろう。牡丹はすっかり縮こまってしまっていて、加護らしき龍の気配は微塵も感じない。

「見たところ…式を感じないな。お前の口から告発した方がその身のためだぞ」
「っ、悪いのはお姉様なのよ。私よりも皆に愛されて。加護にも恵まれて。なのになんで私には誰も振り向いてくれないのよ!私の方が可愛くてお姉様よりも才があって。花嫁に相応しい筈なのに!!!」

怒りに任せて叫ぶ牡丹はハッとする。
明らかな言質に斗李が手を上げれば、牡丹の身柄が拘束される。

「いや、何よ!私は何も悪いことなんかしていない。あんなのただの子供の悪ふざけじゃない!お父様!助けて!」
「牡丹!おい娘を離せ」

暴れて叫ぶ牡丹は憔悴しきっていた。

「お前も拘束する。辰ノ宮家で起きた件をみすみす五芒が見過ごすとでも思ったか。罰を覚悟することだ」
「な、ふざけるな!私は辰ノ宮家の当主。十二華族だぞ!」
「その名誉も今日で終わりだな。俺の花嫁を傷つけた報いをその身を持って味わうことだ」
「離せ!…そ、宗次郎!お前は私を助けてくれるな?私の代わりに誤解を解いてくれ!!」

当主は部屋の片隅で壁に寄りかかる宗次郎に声をかけた。
だがニコニコと笑う宗次郎は何も言わない。
そればかりかヒラヒラと手を振ると連行される彼らを完全に面白染みた目で見送っていた。