病弱陰陽師と封鬼の娶嫁

土蜘蛛騒動から一夜明けて。
斗李は帝都で意識を失い大病院に運ばれていた。
かなり体力を消費したせいか意識は未だ戻る気配がない。桔梗は病棟で眠る斗李の傍らとても恐ろしかった。もしもこのまま一生目が覚めなかったら?不安は永遠につきまとっていた。

「お、いたいた!」

病棟部屋のドアが開き、現れたのは一人の隊員。
茶髪の髪に二の腕の筋肉が目立つ彼は陰陽師の人だろうか。

「ボスの花嫁様ですね?お会いできて光栄です」
「辰ノ宮桔梗と申します。あの、貴方は?」
「俺、群青寺彰人と言います。普段は陰陽寮にて討伐部隊として国の治安維持に勤めています。因みにボスとは同僚です」

壱とマークされた帽子を取った彰人は深々と頭を下げた。
見舞いに来てくれたらしく、意識の戻らない斗李を見れば呆れていた。

「いつものこととはいえ…無茶だけはすんなって言ったのに~。花嫁様前にカッコイイ姿みせようと頑張りすぎたか?」
「いつものこと?」
「桔梗様は知らないでしょうが、ボスが倒れるの何もこれが初めてじゃないんです。現役時代からなのでボスを知る隊員は慣れたものっす。まあとはいえ、五芒の呪いは体を弱体化させてる。陰陽師として術を使えば使った分、体の負担もデカいですし」

そんなに…大変だったんだ。
桔梗はベット上に置かれた斗李の手を握った。
自分が土蜘蛛に襲われそうになった時、彼は泣きそうな顔をしていた。美しく穏やかに笑ういつもの顔とは程遠い。瞳は閉じ切り、顔色は真っ青。それでも意識を失う限界まで自分を助けに来てくれた。

「ボスって普段はこんなだけど。覚醒した時は誰も敵わないんすよ」
「覚醒?」
「陰陽師としての才能は安倍晴明並。国で唯一五芒星を操る人ですから。呪いさえなければ完璧な人であれたのに。ボスは強いけどそんなボスにも越えられない壁はある。桔梗様はそんなボスでも愛してくれますか?」
「え、」
「ボス、こう見えて桔梗様のこと溺愛してるんすよ。陰陽寮では桔梗様の話ばっかですもん」

彰人の話に顔を真っ赤にさせた。
まさかそんな…だけど花嫁に選んでくれたし、助けにも来てくれた。桔梗にとっては全てが嬉しかった。穢れ者の自分に幸せを与えてくれた人。噓偽りのない澄んだ愛情を向けてくれた人。

「私、五芒様の役に立ちたいんです。花嫁に選んでくれて嬉しかった。病弱も呪いも関係ない。これから先も五芒様と歩んでいきたい。その為に強い自分でありたいんです」
「それを聞いて安心しました。ボスも喜びますよ」

彰人さんはとても親切でフレンドリーな人だった。
すると斗李が意識を取り戻す。
視界に映った桔梗を見れば飛び起きすぐさま抱きしめるので、彰人は先生を呼んでくると笑って部屋を後にする。

「五芒様!意識が戻って良かったです。もう目を覚まさないんじゃないかって。とても怖くて」
「すまない…心配をかけたね」

桔梗は涙ながらに抱きつけば、斗李は抱きしめ返してくれる。

「桔梗が手を握ってくれたお陰かな。呪いへの影響は受けなかった」
「知ってたんですか⁈」

ずっと貴方の手を握っていたのを。
それを無言で微笑む斗李に恥ずかしくなって顔を逸らせば、斗李は桔梗の頬をそっと撫でた。

「桔梗、俺は陰陽師だ。五芒家の呪いを受け体は病弱。いつ死ぬかも分からない。明日死ぬかもしれないし、それだけ危険な道を渡っている。それでも守りたいものを見つけた。俺と共に生きてほしい」
「五芒様、」
「君が好きだ。会った時からずっと…だから名前を呼んで」
「斗李…様」
「うん」

斗李は静かに顔を近づければ、そっと桔梗に口づけた。
触れるだけのキス。
胸の鼓動が大きく波打ち、途端に桔梗は恥ずかしくなった。美しい顔の斗李は笑って微笑んでいた。下ではチヨが「お嫁しゃま!」とニコニコと笑って喜んでいた。