いくらなんでも兄弟で付き合うなんて!?



――――正月

兄弟2人でおこたでのんびり……しようとしていた時だった。

「不味いことになった」
「どうした?昴」

「年末にトウキがSNSにあげた義兄さんの手作りシールの呟きバズってるんだけどさ」
「マジで!?」
いつの間にそんなことに!

「背景のテーブルの柄と前にぼくがSNSにあげた写真の背景のテーブルの柄が一緒じゃないかって」
「え……?写真?」
「義兄さんの作ったぼくシール。リビングに起きっぱになってた」
「いつの間にぃっ!?」
年末だらだらしすぎて忘れてたのも俺だけど!

「義兄さんのことは何でも追いかけたいからね」
ひぃんっ!?さすがは胃袋以外は全部掴んでる弟ぉっ!

「はぁ……しかしどうしよう」
「もしかして事務所案件?不味いやつじゃぁ……」
「いや、違う。見て、これ」
昴のスマホを覗けば。

『ファンの子って昴じゃん!』
『昴も自分シールあげてたよね!』
『コンビでお互いのシール作り合ってるとかエモい!』
「ええぇっ!?何か昴とトウキくんで作り合ってるみたいになってるぅっ!」
「まさかテーブルの柄で特定されて拡散するとは」
「全部作ったの俺だけどなー」
「ほんと……義兄さん」
「俺のせい!?」
「ぼくと言うものがありながらトウキシール作りまくるから」
「それはそのー……ごめんなさい」
「分かったのならぼくも作る」
「ええっ、作るの!?」
「だってほら」
トウキくんのアカウントを見せられる。

『じゃーん!昴シール!』
ひいいぃっ!?トウキくん作ったのぉっ!?

「ぼくが作ったことになってるのに作れなかったら困る」
「そ、それはそうだよな!?」
しかしトウキくんまで作っているとは。

「なぁ、昴」
「ん?」
手元を動かしながらも昴がこちらを見てくる。

「トウキくんがユニット組んだりグループ組むのさ、初めてじゃないんだ」
「それはぼくも調べたよ」
「どれもトウキくん、輝いててさ。俺全部好きなんだけど」
「だからこそじゃない?」
「え?」

「嫉妬ってのはどこにでもついてくるでしょ?トウキは一種のカリスマ性と天才肌。それをよく思わないやつもいるんだよ」
「まさかそれで解散を……?」
「噂は聞いた」

「その……昴は」
「安心して。ぼくはそんな嫉妬とかしないから。トウキの方が上手いのもできるのも実力と経験があるからだ。ぼくはその分素人だろ?」
「それを感じさせないほど輝いてますけどねー」
「ふふっ。それは当然。やるならプロでなくちゃ」
「昴ったら」
昴のプロ意識がトウキくんの隣に立っても違和感なく馴染むひとつの理由になっているのだ。

「だからぼくはそんなのに嫉妬したりしないよ。俳優の方だって他にすごい名優がたくさんいるしまだまだ父さんにはかなわないもの」
「義父さん、いろんなサスペンスにも出ててすごいもんなぁ」
今もテレビではその再放送が流れている。

「だから嫉妬するとしたら」
「昴……?」
「義兄さんがトウキトウキってはしゃぎすぎた時かな」
「じ……自重します」
「ふふっ。いいんだよ。楽しそうな義兄さんも好きだし」
「……っ」
「だけど」
昴が手を止め俺の手をこたつの影で絡めてくる。
そしてずいっと顔を近付けふんわりと笑む。

「義兄さんの一番は……ぼくだよ」
「ひゃ……ひゃいっ!」
それはそれはもう一番の萌えシチュだった。

※※※

冷めやらぬ熱を頬で感じながら、どれだけこうしていたろうか。
ふと、昴の手元を見れば。

「さて……でーきたっと」
「いつの間にっ」
「これをSNSに投稿すればミッションクリア」
「わぁ、すげぇ~~!俺も欲しいー!」
「SNSに投稿したものだからぼくが使わないとダメだよ」
「うえぇ~~」
「でもこっちは投稿してないからあげる」
「えっ、マジ!?」
見ればそれは……。

「スノー☆スターのユニットシールううぅっ!」
「ふふっ、気に入ってくれた?」
「家宝にしますううぅっ!末長くユニットでいてええぇっ!」
「もちろん」
「昴……!」
「義兄さんが浮気しないように見張るには一番のポジションだもの!手放さないよー」
「ひえええぇっ!?」
いつの間にか、そこまでも。俺、外堀埋められすぎいいぃっ!!

※※※

正月と言えばお雑煮である。正月ばかりは義父さんも母さんとこたつでまったりだ。今日は家族揃って正月料理である。

「んー……もちうまー」
「正月と言えばこれだよなぁ。昴。ところでさ」
「ん?」

「お雑煮と言えば各家庭や地域で違うだろ?昴の家はどうだったんだ?」
「老舗料亭のお雑煮」
そう言えば昴、お坊ちゃんだったな。

「でも義兄さんのお雑煮、美味しいよ」
「マジ?良かったー」
「憧れてたんだ。一般家庭のお節料理とかお雑煮とか」
「ならもっと遠慮せず食べろよ」
お節料理も取り出し振る舞う。

「俺もいつもは母さんと2人だったから、今年は昴も義父さんもいて楽しいんだ」
「うん、ぼくもだよ。義兄さん」
「ならお揃いだな」
「そうだね」
そう言って母さんと義父さんに見えない位置で指を絡めてくる。
ひぃっ!?ちょ……バレたらどう釈明する気だよ!?しかし昴は気にせず余裕の笑みを乗せてくる。

「ん、美味し」
「そ……それならいいけど」
「義兄さん」
昴が顔を寄せてくる。

(ちょ……母さんと義父さんがいるのに)
(2人ともテレビに夢中でしょ?)
(だからって)
(隙あり)
ふわりと頬に落ちた柔らかい感触にピタッと固まる。え……え?今……キス?

「そう言えば昴、今度のトウキくんとのドラマだが」
ひぃっ!?義父さんがいきなりこちらを振り返る。今、間一髪のところだったぞ!?

「ああ、2月から放送開始だよ」
「そうかぁ。お前BLものは初めてだろう?」
BL、と言う言葉にびくんとなる。

「まぁね、でも何とか上手くできたと思ってるよ」
それはその……俺と付き合うふりをしたから?いや、今はもう実際に付き合っているわけだけど。

「なら仕上がりが楽しみだな」
「うん、楽しみにしててよ」
うう……昴ったら俺の気も知らずに平然と会話してるんだから~~っ!

「あら、篝?」
「か、母さん?」
「あんた、顔真っ赤じゃない」
「へぁっ!?」

「本当だ、熱でもあるのか?篝くん」
「そ……そんなんじゃないよ、義父さん。お雑煮たくさん食べたから、湯気が」
「何だ、そう言うことか」
「もう、篝ったら」
母さんがクスクスと笑う。

うう~~っ、昴のせいだぞ!そうチラリと見れば。

「義兄さんったら大丈夫?少し部屋に行く?」
部屋に行ってどうするつもりなんだこの弟は!

「いや……いい」
今部屋に行ったら襲われる自信の被害妄想しかない。

「アイス取ってくる」
「あ、ぼくも行く」
とたとたとキッチンに向かえば。

「もう、昴ったら」
「どうしたの?義兄さん」
「どうしたのじゃないっての!あんなことして」
「あんなことってどんなこと?また……して欲しい?」
「そ……そう言うわけじゃ」
「義兄さん、かわいすぎるよね」
「何だその定義は~~っ!」
もう意味が分からなさすぎるーっ!

「義兄さん」
冷蔵庫を背に、昴の顔が迫る。

「もう一度、やる?」
「何言ってんだ!アイスを……」

ちゅっ

頬に落ちる柔らかい感触。

「アイスひとつで足りるかな?」
「うう~~っ、後でおかわりしてやるからな!?」
「ふふふっ。お腹壊さないようにね」
昴が俺のお腹をずぞりとさすってくる。

「あうう~~っ、やめろおおぉ~~っ」
「やーだっ、義兄さんかわいすぎるんだから」
「いいからお前も早くアイス選べって~~っ!」
冷凍庫を開ければ昴がひょいっとアイスを掴む。

「くっ。俺はダッツにしてやるううぅっ!」
これはせめてもの謎の抵抗であった。