――――年末年始。
「やっぱり年末はこたつに限るわー」
「もう、篝ったら」
クスクスと苦笑する母さんも年末ばかりは休みである。
「今年は静寂さんも昴くんもお仕事か」
「うん、母さん」
義父さんはドラマの再放送から今夜の生特番まで出ずっぱりである。いや、仕事自体は生特番だけなのだが。
「昴は今年トウキくんと歌唄うんだもんなー」
ユニットデビューからそれほど経ってないと言うのに、今やテレビで見ない日はないほどに出ずっぱり。
当然ながら家にいる時間も短い。テレビでいつも見ているとはいえ寂しくないわけではないのだが。
「そう言えばあんた、昔からトウキくん好きだったわね」
「うん!デビューほやほやの時期からずっとファン!」
デビューは中学生の時……と思われがちだが実は芸能界デビューは小学6年生。俺くらいになるとそれくらいの引っ掛けは何のその。今までもグループに所属してたことあるけどどれもグッズを集めてる。
「あんたまだ部屋にあのでっかいポスター飾ってんの?」
「いや……あれはその……昴とのスノー☆スターのに替えた」
しかも2人のサイン入りの超レア物。
「あんたたちほんと仲良しね」
「あはははは」
母さんの中ではそうなってるらしい。兄弟でこっそり付き合ってることはナイショだな。
「ほら、裏番組でバラエティーにも出てるみたいよ」
「え?義父さんのサスペンスは?」
「前に見たもの。それより昴くん見ようよ」
「ふーん、それなら」
容赦なくチャンネルを替える。すまん、義父さん。母さん命令なんだ。
テレビには昴とトウキくんの姿が映し出される。
『お二人はプライベートでも大変仲良しだそうですね!』
へぇ、そうなの?こないだ来た時も冗談言い合ってたけど。
『ええ。最近は昴の家に遊びに行きましたよ』
『押し掛けてきたんです』
そ……それも間違ってはいない。さらに番組は大盛り上がりである。くぅ……っ、この昴の皮肉っぽいところがさらにファンの妄想を掻き立てると言うのに昴は無意識なのだ!
「よし、こうしてやろう」
手元にはシール製作キットがある。
「あんた何作ってんの?」
「え?昴シール。本人には許可取ったよ」
「あらそうなの?あんたのことだからトウキくんシールとか作ってそうだけど」
「ギクッ」
思えばナイショでトウキくんシールを作っていたからこそ自分のも作るようにと命令を受けたのである。
「だからってあんた、何作ってるの?」
母さんがぷくくっと笑う。
「え……?」
手元を見て驚愕する。無意識のうちに俺は何つくってんだ!その手作りシールには昴の写真の上に『にいさんLOVE』と書かれていた。
「あっははははっ」
「笑わないでよ、もーっ」
仲のよい兄弟の冗談だと思ってるのか母さんは爆笑しているが、まずいまずいまずい!こ、これ以上は親がいない時か部屋でやらなきゃ。
「でもこのシールどうしよう?」
俺が持っていてもな。
「あ、いいこと思い付いた」
こっそり昴の部屋にお邪魔すれば相変わらずおしゃれな部屋だことで。
「よーし、ならワンアクセント添えてやろう」
俺は昴の『にいさんLOVE』シールをデスクに貼ってやった。
「うっし、完璧!」
そそくさとこたつに戻れば、母さんが笑いをこらえている。
「あんた何してきたの?」
「なーいしょっ!昴へのサプライズ」
「もう、年末に兄弟喧嘩とかしないでよ?」
「しないってば」
そう言ってお煎餅に手を伸ばす。テレビではスノー☆スターの歌が流れている。
あれは録画だが今ごろは夜の特番の準備やリハだろうか?
「……」
早く帰ってこないかな。そんな風に思いながら時間はゆるりと過ぎていった。
※※※
――――その夜。
「むにゃぁ……」
「義兄さん」
「へぁっ!?昴!?かえ……てきた?」
「そうだよ、義兄さん」
「だからって何で俺の部屋に……」
「いたずらしたの、義兄さんでしょ?『にいさんLOVE』って」
「あ……」
「だから……夜這いに来たんだよ」
「よば……って、何をする気だぁっ!」
「義兄さんったら、あまり騒ぐと父さんたちにバレるよ」
「は……っ」
「だから……いいこにしようね……?」
「ひぁんっ」
昴が布団の中に入ってくる。
「イイコト、してみる?」
「そそそそんなの……今をときめくアイドルに畏れ多い」
「遠慮しないで、義兄さん。ぼくは義兄さんLOVEなんだから」
「ひぁーっ!?」
昴のおさわりしてくる手を受けるがままに受け入れる。
それしか……俺にはそれしかできることはない~~っ!
「義兄さんったらか~わいっ」
ああんもう、妖艶すぎるーっ!!
※※※
――――翌朝
何か今朝は暖かいな……。
「ふぁ~~あ」
「んん……にい……さん」
ふぉ……っ!?
目の前に天使級に整った顔立ちーっ!
「そうだ……一緒に寝たんだった」
「んん?あれ……義兄さん?もう起きたの?」
「ああ。その……か、顔洗いに行こうぜ」
「ええ……もっと余韻を楽しんでもいいんじゃない?」
余韻をって何の!?昴が俺の胸元に手を当ててくる。
「ほら……義兄さん」
「……っ」
昨晩の妖艶な昴の顔がフラッシュバックする。しかしその時だった。部屋のドアがノックされる。
『篝ー!昴くんもいるのー?お友だち来てるわよー!』
「か、母さん!?」
「なーんだ、もう終わりかぁ。それじゃ、義兄さん」
昴が唇に人差し指を当ててくる。
「続きはまたね」
「……っ!」
って、楽しみにしてるわけじゃないんだからな!?ツンデレみたいになってしまったが。
「そ……それより友だちって誰が来たんだ?」
「ぼくたち共通の?取り敢えず着替えを」
何でお前は俺の部屋に普通に着替えを持ち込んでんだ。
「ほら義兄さんも」
「ほーい」
ささっと着替えて出ればリビングで待っていたのは。
「よっ!兄弟仲いいなぁ~~、お前ら!」
「トウキくううううぅ――――んっ!!?」
「ちょ……義兄さんったらオタク全開にまたそんな……」
昴が耳元でそっと囁いてくる。
(ぼくの時もやってもらうよ……?)
(ひえぇっ!!?)
「なになに?2人して」
「ナイショ」
「ええ~~、気になるじゃん」
しかし相変わらず昴とトウキくんは仲良しみたいである。
「それより聞きましたよ、お義兄さん」
「お前の義兄さんじゃない」
「あ、篝でいいです」
「……それもちょっとどうなんだか」
え……?昴?
「では篝さん!昴に聞いたんですけど、俺シールを作ってくれてるってマジですか?嬉しーです!」
「ああ……はい!その、これですううぅっ!」
本人を前にと言うのは緊張するけれど。ズバーンと出してみれば。
「わぁっ!すっげぇ!これ、SNSに投稿していいっすか?」
「ああ……もちろんです!」
そんな光栄なこといいのだろうか。
早速SNSにシールをアップするトウキくん……萌えーっ!
「でも気を付けてよ?背景とか余計なもの入れたら……」
「大丈夫だって、昴。ほら、『ファンの子が作ってくれた』って投稿したー!」
「全く……」
そう言いつつも許してあげてる昴。んもー。
「そうだ、朝早いしトウキくんも朝ごはん食べていきます?俺たちこれから朝食なので」
「えっ、篝さんの手作りですか!?」
「とは言えトーストとサラダくらいですけど」
「いただきます!いやー、朝早くから来た甲斐があったー」
「お前な……」
昴は呆れ顔だが、俺としては推しに朝ごはんを振る舞えるなんて光栄の極み。
今日は取って置きのおしゃれトーストにしよう。
母さんと昴と俺、トウキくんの分を用意して……と。
「んんっ、篝さんの朝ごはんマジうまーっ!」
「萌えっ」
推しが……推しが尊い~~っ!!!


