【忌避指定】阿武隈川第4サイト:『骨噛』事案調査記録

標題:阿武隈川流域・特定キャンプ場における「異物摂取」と「身体変容」に関する記録

区分:忌避指定(レベル4)

調査主体:阿武隈特定事象対策班



================================================================

序章:デジタル・アーカイブ(インターネット上の断片)

================================================================



----------------------------------------------------------------

【資料 A-1:電子掲示板アーカイブ(201X年~2025年)】

ソース:4ch オカルト板「阿武隈・中流域のキャンプ場」スレッド

----------------------------------------------------------------



1: 名無しさん 201X/07/22 23:14:02

阿武隈川の流域、特に中流域にある某キャンプ場の話をしたい。

通称「第4サイト」。

ここ、もう何年も前から特定のエリアだけずっと封鎖されてる。

理由は「地盤の脆弱性」とか言われてるけど、地元の人間は誰もそんなの信じてない。

あそこには「ジャリジャリ様」がいるからだ。

最近、知らずに入り込んだ大学生が、自分の腹を包丁で裂こうとした事件があったらしい。



8: 名無しさん 201X/07/22 23:45:10

あー、あそこか。阿武隈川のあそこの河原ね。

旧軍病院の廃棄施設が山側に残ってるところでしょ。

あそこの第4だけは、昼間に行っても空気が重いんだわ。

「ジャリジャリ様」って、要は「音」の話でしょ?



15: 名無しさん 201X/07/23 00:12:33

>>8

そう、「音」だ。

深夜の2時を回る頃、隣に誰もいないはずなのに、テントのすぐ外で

「ジャリ……、ゴリ……、ジャリ……」

って、何かを必死に噛み砕いてるみたいな音が聞こえてくる。

それも、誰かが何かを食べている音じゃなくて、

「食べられている側」が、内側から必死に抵抗して鳴らしている音みたいだって。



24: 名無しさん 201X/07/23 01:05:44

その音を聞きながら朝を迎えると、自分の腹に「指の形の痣」ができるんだよ。

最初は小さな痣なんだけど、日が経つにつれて、その痣が皮の下で「動く」ようになる。

まるで、腹の中に誰かが閉じ込められていて、外に出ようと爪を立てているみたいに。



31: 名無しさん 201X/07/23 02:30:11

地元の消防団だけど、あそこはマジで関わらない方がいい。

昔、あの河原で行方不明になったガキがいたんだけど、発見された時、そいつの胃袋から

「大量の砂」と「人間の乳歯」が出てきた。

本人は「パパの作ってくれたカレーに、お母さんがたくさん入ってた」って笑いながら言ってたらしい。

その時、父親はすでに行方不明。

キッチンの排水口からは、父親のものと思われる指の骨が数本見つかっている。



45: 名無しさん 2025/10/14 12:44:02

それ、阿武隈地方の古い禁忌だよ。

「骨噛(ほねかみ)」っていう呪術。

死んだ人間を完全に自分のものにするために、あえて不快なやり方で「食う」。

わざと砂の混じった料理にするのは、宿主の痛みを媒介にして、霊を身体に癒着させるため。

ジャリジャリっていうのは、霊が宿主の骨を削って、自分の席を作ってる音なんだと。



62: 名無しさん 2025/10/14 18:22:15

>>45

うわ……。じゃあ、今あのキャンプ場に出てる「ジャリジャリ様」って、

その儀式の失敗作か、あるいは「完成品」が誰かに乗り換えようとしてるってこと?

「お前も、家族にならないか?」って誘ってるのか……。





----------------------------------------------------------------

【資料 A-2:個人ブログ 魚拓(2023年/現在は削除済み)】

ソース:『阿武隈・川辺の孤独な記録』

----------------------------------------------------------------



タイトル:阿武隈川・第4サイトに遺されていた「男飯レシピ」の謎



現地調査を決行した。阿武隈川の第4サイト。

川のせせらぎに混じって、時折、何かが砕けるような乾いた音が響く。

管理棟の裏、不法投棄されたゴミの山の中から、一冊の古いノートを見つけた。

表紙には油性ペンで「男飯・配合備忘録」と。

中身は至って普通のスープカレーのレシピだ。



だが、最後の「砂抜き」に関する記述だけが、明らかに常軌を逸していた。



「砂抜きは一切しないこと。砂の不快感こそが、彼女が定着するためのノイズとなる。」



ノートの後半は、文字ではなく、ただ「ジャリ」というカタカナが、ページを突き破るほどの筆圧で埋め尽くされていた。

私は今、このブログを書きながら、自分の腹部を触っている。

硬い。皮の下に、何かがいる。

そいつは、時折、私の内臓を「噛んでいる」。





----------------------------------------------------------------

【資料 A-3:行政告知(2026年2月21日)】

ソース:阿武隈川中流域特定流域管理委員会・公式ウェブサイト

----------------------------------------------------------------



対象区域:阿武隈川中流域・特定キャンプ場「第4サイト」および周辺河原



本区域は、2026年2月をもって「忌避指定」に設定されました。

区域内への無断立ち入り、および「火気の使用(特に調理行為)」を固く禁じます。

現在、当該地域から帰還後に以下の症状が見られる方は、直ちに「阿武隈特定疾患対策窓口」へ届け出てください。



1. 腹部に硬質な隆起(指、または歯の形状)が確認される。

2. 睡眠中、自身の体内から咀嚼音が聞こえる。

3. 家族や親しい人間の声を、自身の喉ではなく「胃」で感じる。



警告:

あなたが「砂」だと思っているものは、すでにあなたの血肉を求めて発芽を始めています。

決して、その音を愛おしいと思わないでください。





----------------------------------------------------------------

【調査員 A による補遺】

----------------------------------------------------------------



阿武隈川のせせらぎは、古来より「死者の声を運ぶ」と言われてきた。

しかし、ここで起きていることは、もっと物理的で、もっと執拗な「愛」の形だ。

父親は単に発狂していたのではない。

彼は、究極の「介護」を行おうとしたのだ。

失踪した妻を、息子という永遠に滅びぬ器の中へ。

しじみの砂を媒介にして、彼は「家族の完全体」を作り上げようとした。



================================================================

記録終了