「どうする?手当たり次第探す?」
「それしかねぇだろ。陸番に関係のある場所なんて俺ら知らねぇし。」
「でもそれだと範囲がかなり広くなる。陸番がどう動くかも分からないんだから的を絞った方がいいかも。」
「僕も大和くんと同じ意見。ただ、的って言ったって…。」
廊下を走り、
一つづつ教室の中を見て周り、
そしてまた隣の教室を探し回る。
その状況を破ったのは、他でもない宵の声だった。
「なぁ、もしかしてだけどさ、陸番じゃなくて和気に関係のある場所にあんじゃね?直感だけど。」
電撃が走る。
和気も土御門も身体を硬直させた。
自信なさげな宵だが、案外カレの意見は正しかった。
「______チッ。」
「ナイスアイデア!宵!
ってことは、まずはあそこに行こう!」
***
「全然出て来ねぇな。陸番。全く怖くねぇわ。」
「無駄口叩かないで探してもらえる?どこまで能無しなんだか。」
「お前ほんと一言多いな。」
和気と土御門がこの二年生の、
和気の教室にある机の中を探し回る。
「僕の机にも何にもないや。」
和気はそう言って教室の後ろへと下がる。
「もし机の中に隠すなんてことをしていたら、陸番は相当いやらしいね。それなら校内にある何百という机を探し回らないといけない。」
「それなぁ〜。」
──────────ガチャ
「………マトリョーシカじゃん。」
何の気なしに開けた和気のロッカー。
その前に立ち尽くす和気。
二人は和気の開けたその中を覗き見た。
「ロッカーの中に…金庫…?」
「んだこれ。お前変な趣味してんな。」
「僕のじゃないよ!誰がこんなこ…ぁ…。」
「陸番だ。」
そのロッカーの中にある金庫。
そこには堂々と文字が、そしてボタンがあった。
「んだこれ。」
『回答者:和気
Q.あなたの家系は?
1 歌舞伎
2 茶道
3 祓い
4 その他』
文字と数字が書かれたボタン。
三人はそれを凝視する。
「あーえっと、こういうスタイルなんだ。」
「なんか、こう、緊張解けちまうな…。」
なんともこの状況とは不釣り合いな、そう思わずにはいられなかった。
「うん…。
ま、僕の家は祓いが出来る訳じゃないから…」
和気がそう言って押したのは4のボタン。
するとそのボタンは緑色に光り、
──────────カチャッ
金庫の鍵が開いた音が教室に響く。
中を覗けば、そこには『あ』のカードが。
和気はそれを手に取る。
心なしか呆気なく手に入った賞品。
嬉しいのに、少し拍子抜けだ。
「僕の名前には、『あ』が入ってるみたい。」
自分の名前のこと、だと言うのに感覚としては他人事。
(なんか、実感湧かないや。)
「次どこ行」
視界に入る運動場を映す窓。
それが黒く澱んだ色をした。
見てはいけない、近づいては行けない気がしてならない。
それでも…
『みぃつけた』
「逃げて!」
土御門の声が聞こえると同時に、窓にヒビが入る。
足がすくんで動けない。
窓にいる黒くて巨大な、二つの目を持つ怪物。
それを震える目で見つめるだけ。
「和気!」
宵が和気の手を握り、教室の外へと走り出した。
土御門も二人の後を追う。
廊下を走る三の背後には、
『─────な、ぁえ、
ぃ……っしょ、いっしょぉぉ…?』
「陸番ってあんなきしょいのかよ、人型でもねぇし!」
「完全に怪異だ。もしかしたら、和気くんに干渉して力が増えたのかも。それか……」
背後から迫る巨大な怪異。
捕まってどうなるのか、分からない。
それでも居座り続ける恐怖心。
土御門が走りながら身体を後ろに向けた。
手をその怪物へとかざし、
「遠々急急如律令」
土御門の手によって描かれた星印。
それが陸番へと迫り、轟音を奏でる。
「わっ…!」
衝撃による風圧。
それを受けた和気が前へと倒れた。
「和気!」
宵は和気の肩を組み、立ち上がらせた。
後ろを向けば、土御門の背中。
先程まで迫っていた陸番の姿はない。
「土御門!陸番は…!」
「距離を離しただけだ!祓えてない!」
その言葉を取った宵は眉を顰める。
屈む和気の顔を覗き込んだ。
「和気、走るぞ。」
「待って、」
苦い顔をする和気。
彼の視線を辿れば右足首。
ズボンを引き上げて顕になる肌は赤色だった。
「転けた時捻ったみたい。でも走れるよ。早く」
一瞬にして、和気の身体は宵の背に預けられた。
「_____えっ」
「浮かなきゃ俺にも体力あるから。そりゃ浮いた方が早く走れっけど…。」
宵は和気を背中に背負い足を進める。
その後を土御門も追って来た。
「和気くん、居心地悪かったら僕の背中あるよ。」
「お前この状況でよくんなこと抜かせれんな…。」
***
「宵、痛み引いて来たから、もう平気だよ。」
「平気じゃねぇだろうけど、俺も疲れたから。」
そう言って宵は階段の手前で和気を地に下ろした。
土御門が自身を指さして迫ってくるが、和気は丁寧に断る。
「あれ。」
宵が指さしたのは階段の踊り場の端。
三人が階段を降りてそこへと着く。
「そういえば、宵のこと初めて見たのってここだったな。」
新学期の始まり。
靴箱から教室へ向かう途中にいたのがカレだった。
「あの時は同い年の人間だと思ってたや。」
「あーな。なんか懐かしいな。」
宵がしゃがむ。
宵の前に置かれていたのは先ほどと同じ、金庫だ。
『回答者:宵
Q.今のあなたは?
1 人間
2 幽霊
3 悪霊
4 その他』
和気は口を開ける。
そして、何も言わずに背を向けた。
──────────カチャッ
「お、開いたな。」
中から取り出したカード。
そこには『あ』の文字が。
「俺も『あ』だ。
_________早く次行こうぜ。」
「_____うん。」
階段を降りる。
金庫を横切る瞬間、和気の視線は無意識にその金庫へと移る。
気付いた和気は首を振って、邪念を取り払った。
『あっあー。聞こえてる?』
「____壱番。」
校内放送で聞こえてくる壱番の声。
『ボクは優しいから、ヒントあげちゃう。
なんか自分と関係ある場所にしかカードはないとか思ってたら訂正してあげようと思って。別に、現れる場所が決まってる訳じゃないんだから。見つけるのが問題じゃない。答えるのが問題なんだよ。』
放送が切れる音がして、壱番の声は止む。
彼等三人は気付かない。
放送室にいた壱番は無邪気に笑っていたことに。
(ふふっ。
運命は決まってる。名は持ち主へと帰ろうとすんだもんね。)
***
「壱番の言う通りだな。」
「靴箱なんて、なんの関係もないや。」
和気の靴箱。
そこにはすっぽりと埋められた金庫。
『回答者:和気
Q.宵について
1 好き
2 嫌い
3 無関心
4 その他』
「これは2だよ。和気くん。」
「何なのお前、邪魔しに来たのかよ。」
「ううう…。」
本人の前でこう問われれば恥ずかしいもの。
それが異性でなく、同性でも。
和気の顔は真っ赤。
それを隠すものはここにはない。
「嫌な質問用意するなぁ…。」
そう言って押したボタン。
「えー!和気くん1番なの〜?俺のことそんな風に思ってたの〜?ねーねーねーねー。」
そう言って和気の頬を押し続ける宵。
「うるさい!」
──────────カチャッ
「『ら』だってさ。」
取り出したカード。
それを凝視する3人。
「『あ』も『ら』もお前とイメージちげぇな。」
「はいはい。次行こ。陸番が出てくる前に。」
歩き出す二人。
和気も宵も気付かなかった。
その金庫を見て口を膨らませる土御門大和の様子を。
「それしかねぇだろ。陸番に関係のある場所なんて俺ら知らねぇし。」
「でもそれだと範囲がかなり広くなる。陸番がどう動くかも分からないんだから的を絞った方がいいかも。」
「僕も大和くんと同じ意見。ただ、的って言ったって…。」
廊下を走り、
一つづつ教室の中を見て周り、
そしてまた隣の教室を探し回る。
その状況を破ったのは、他でもない宵の声だった。
「なぁ、もしかしてだけどさ、陸番じゃなくて和気に関係のある場所にあんじゃね?直感だけど。」
電撃が走る。
和気も土御門も身体を硬直させた。
自信なさげな宵だが、案外カレの意見は正しかった。
「______チッ。」
「ナイスアイデア!宵!
ってことは、まずはあそこに行こう!」
***
「全然出て来ねぇな。陸番。全く怖くねぇわ。」
「無駄口叩かないで探してもらえる?どこまで能無しなんだか。」
「お前ほんと一言多いな。」
和気と土御門がこの二年生の、
和気の教室にある机の中を探し回る。
「僕の机にも何にもないや。」
和気はそう言って教室の後ろへと下がる。
「もし机の中に隠すなんてことをしていたら、陸番は相当いやらしいね。それなら校内にある何百という机を探し回らないといけない。」
「それなぁ〜。」
──────────ガチャ
「………マトリョーシカじゃん。」
何の気なしに開けた和気のロッカー。
その前に立ち尽くす和気。
二人は和気の開けたその中を覗き見た。
「ロッカーの中に…金庫…?」
「んだこれ。お前変な趣味してんな。」
「僕のじゃないよ!誰がこんなこ…ぁ…。」
「陸番だ。」
そのロッカーの中にある金庫。
そこには堂々と文字が、そしてボタンがあった。
「んだこれ。」
『回答者:和気
Q.あなたの家系は?
1 歌舞伎
2 茶道
3 祓い
4 その他』
文字と数字が書かれたボタン。
三人はそれを凝視する。
「あーえっと、こういうスタイルなんだ。」
「なんか、こう、緊張解けちまうな…。」
なんともこの状況とは不釣り合いな、そう思わずにはいられなかった。
「うん…。
ま、僕の家は祓いが出来る訳じゃないから…」
和気がそう言って押したのは4のボタン。
するとそのボタンは緑色に光り、
──────────カチャッ
金庫の鍵が開いた音が教室に響く。
中を覗けば、そこには『あ』のカードが。
和気はそれを手に取る。
心なしか呆気なく手に入った賞品。
嬉しいのに、少し拍子抜けだ。
「僕の名前には、『あ』が入ってるみたい。」
自分の名前のこと、だと言うのに感覚としては他人事。
(なんか、実感湧かないや。)
「次どこ行」
視界に入る運動場を映す窓。
それが黒く澱んだ色をした。
見てはいけない、近づいては行けない気がしてならない。
それでも…
『みぃつけた』
「逃げて!」
土御門の声が聞こえると同時に、窓にヒビが入る。
足がすくんで動けない。
窓にいる黒くて巨大な、二つの目を持つ怪物。
それを震える目で見つめるだけ。
「和気!」
宵が和気の手を握り、教室の外へと走り出した。
土御門も二人の後を追う。
廊下を走る三の背後には、
『─────な、ぁえ、
ぃ……っしょ、いっしょぉぉ…?』
「陸番ってあんなきしょいのかよ、人型でもねぇし!」
「完全に怪異だ。もしかしたら、和気くんに干渉して力が増えたのかも。それか……」
背後から迫る巨大な怪異。
捕まってどうなるのか、分からない。
それでも居座り続ける恐怖心。
土御門が走りながら身体を後ろに向けた。
手をその怪物へとかざし、
「遠々急急如律令」
土御門の手によって描かれた星印。
それが陸番へと迫り、轟音を奏でる。
「わっ…!」
衝撃による風圧。
それを受けた和気が前へと倒れた。
「和気!」
宵は和気の肩を組み、立ち上がらせた。
後ろを向けば、土御門の背中。
先程まで迫っていた陸番の姿はない。
「土御門!陸番は…!」
「距離を離しただけだ!祓えてない!」
その言葉を取った宵は眉を顰める。
屈む和気の顔を覗き込んだ。
「和気、走るぞ。」
「待って、」
苦い顔をする和気。
彼の視線を辿れば右足首。
ズボンを引き上げて顕になる肌は赤色だった。
「転けた時捻ったみたい。でも走れるよ。早く」
一瞬にして、和気の身体は宵の背に預けられた。
「_____えっ」
「浮かなきゃ俺にも体力あるから。そりゃ浮いた方が早く走れっけど…。」
宵は和気を背中に背負い足を進める。
その後を土御門も追って来た。
「和気くん、居心地悪かったら僕の背中あるよ。」
「お前この状況でよくんなこと抜かせれんな…。」
***
「宵、痛み引いて来たから、もう平気だよ。」
「平気じゃねぇだろうけど、俺も疲れたから。」
そう言って宵は階段の手前で和気を地に下ろした。
土御門が自身を指さして迫ってくるが、和気は丁寧に断る。
「あれ。」
宵が指さしたのは階段の踊り場の端。
三人が階段を降りてそこへと着く。
「そういえば、宵のこと初めて見たのってここだったな。」
新学期の始まり。
靴箱から教室へ向かう途中にいたのがカレだった。
「あの時は同い年の人間だと思ってたや。」
「あーな。なんか懐かしいな。」
宵がしゃがむ。
宵の前に置かれていたのは先ほどと同じ、金庫だ。
『回答者:宵
Q.今のあなたは?
1 人間
2 幽霊
3 悪霊
4 その他』
和気は口を開ける。
そして、何も言わずに背を向けた。
──────────カチャッ
「お、開いたな。」
中から取り出したカード。
そこには『あ』の文字が。
「俺も『あ』だ。
_________早く次行こうぜ。」
「_____うん。」
階段を降りる。
金庫を横切る瞬間、和気の視線は無意識にその金庫へと移る。
気付いた和気は首を振って、邪念を取り払った。
『あっあー。聞こえてる?』
「____壱番。」
校内放送で聞こえてくる壱番の声。
『ボクは優しいから、ヒントあげちゃう。
なんか自分と関係ある場所にしかカードはないとか思ってたら訂正してあげようと思って。別に、現れる場所が決まってる訳じゃないんだから。見つけるのが問題じゃない。答えるのが問題なんだよ。』
放送が切れる音がして、壱番の声は止む。
彼等三人は気付かない。
放送室にいた壱番は無邪気に笑っていたことに。
(ふふっ。
運命は決まってる。名は持ち主へと帰ろうとすんだもんね。)
***
「壱番の言う通りだな。」
「靴箱なんて、なんの関係もないや。」
和気の靴箱。
そこにはすっぽりと埋められた金庫。
『回答者:和気
Q.宵について
1 好き
2 嫌い
3 無関心
4 その他』
「これは2だよ。和気くん。」
「何なのお前、邪魔しに来たのかよ。」
「ううう…。」
本人の前でこう問われれば恥ずかしいもの。
それが異性でなく、同性でも。
和気の顔は真っ赤。
それを隠すものはここにはない。
「嫌な質問用意するなぁ…。」
そう言って押したボタン。
「えー!和気くん1番なの〜?俺のことそんな風に思ってたの〜?ねーねーねーねー。」
そう言って和気の頬を押し続ける宵。
「うるさい!」
──────────カチャッ
「『ら』だってさ。」
取り出したカード。
それを凝視する3人。
「『あ』も『ら』もお前とイメージちげぇな。」
「はいはい。次行こ。陸番が出てくる前に。」
歩き出す二人。
和気も宵も気付かなかった。
その金庫を見て口を膨らませる土御門大和の様子を。

