I「これ、見て。怖すぎる」

【防犯カメラ映像①:壁に張り付く人】
タイムスタンプ:2025/11/28 22:34
ちあき「何これ……」
Haru「これ、どこで撮ったの?」
I「うちの図書館。地下2階。
防犯カメラの映像らしい」
いっちゃん「マジで?」
M「影の向きがおかしくない?」
山田「手が濡れてるように見える……」
*
私は、その画像をタップした。
画像を拡大した瞬間、胃の奥から酸っぱいものがせり上がってきた。
本棚の通路。
一人の人物が、壁に張り付いている。
「立っている」のではない。
「張り付いて」いる。
両手を壁に押し当て、顔を壁に押し付け、まるで壁の向こうに何かがあり、それを聞こうとしているかのように。
いや、違う。
壁の「中」に入ろうとしているのだ。
私は、画像を凝視したまま、動けなくなった。
それは恐怖ではない。
もっと原始的な、生物としての忌避反応だった。
人物の影が、床に映っている。
だが、影の角度が、おかしい。
人物は壁を向いているのに、影は正面を向いている。
まるで、影だけが「こちらを見ている」かのように。
そして――壁に、濡れた跡がある。
人物の手の形をした、濡れた跡。
水だ。
この人物の手は、濡れている。
なぜ。
私は、画像を凝視した。
そして、私は気づいた。
本棚の配置。
床のタイル。
天井の蛍光灯の配列。
待って。
この角度。
私は、急いで周囲を見回した。
私の背後にある本棚。
その配置と、画像の中の本棚が――
一致している。
つまり、この画像は――「今、私がいる場所」で撮影されたものだ。
正確には、私の背後3メートルの位置。
私は、ゆっくりと、背後を振り返った。
誰もいない。
埃の舞う静寂と、無機質な鉄の書架があるだけだ。
だが、3ヶ月前のこの時間、ここには「これ」がいたのだ。壁の中の音を聴こうとする、濡れた手の「何か」が。
画面をスワイプする。指先が、スマートフォンの硝子に吸い付くように重い。
I「他にも流出してるやつある。これとか見て見ぬふり凄くない?」

【防犯カメラ映像①:壁に張り付く人】
タイムスタンプ:2025/11/28 22:34
ちあき「何これ……」
Haru「これ、どこで撮ったの?」
I「うちの図書館。地下2階。
防犯カメラの映像らしい」
いっちゃん「マジで?」
M「影の向きがおかしくない?」
山田「手が濡れてるように見える……」
*
私は、その画像をタップした。
画像を拡大した瞬間、胃の奥から酸っぱいものがせり上がってきた。
本棚の通路。
一人の人物が、壁に張り付いている。
「立っている」のではない。
「張り付いて」いる。
両手を壁に押し当て、顔を壁に押し付け、まるで壁の向こうに何かがあり、それを聞こうとしているかのように。
いや、違う。
壁の「中」に入ろうとしているのだ。
私は、画像を凝視したまま、動けなくなった。
それは恐怖ではない。
もっと原始的な、生物としての忌避反応だった。
人物の影が、床に映っている。
だが、影の角度が、おかしい。
人物は壁を向いているのに、影は正面を向いている。
まるで、影だけが「こちらを見ている」かのように。
そして――壁に、濡れた跡がある。
人物の手の形をした、濡れた跡。
水だ。
この人物の手は、濡れている。
なぜ。
私は、画像を凝視した。
そして、私は気づいた。
本棚の配置。
床のタイル。
天井の蛍光灯の配列。
待って。
この角度。
私は、急いで周囲を見回した。
私の背後にある本棚。
その配置と、画像の中の本棚が――
一致している。
つまり、この画像は――「今、私がいる場所」で撮影されたものだ。
正確には、私の背後3メートルの位置。
私は、ゆっくりと、背後を振り返った。
誰もいない。
埃の舞う静寂と、無機質な鉄の書架があるだけだ。
だが、3ヶ月前のこの時間、ここには「これ」がいたのだ。壁の中の音を聴こうとする、濡れた手の「何か」が。
画面をスワイプする。指先が、スマートフォンの硝子に吸い付くように重い。
I「他にも流出してるやつある。これとか見て見ぬふり凄くない?」
