◇◇◇
「「おはようございます」」
「おはようございまーす!」
綺麗にハモって挨拶してくれる男女2人。
元気よく挨拶をすれば、完璧な笑みを返される。その笑みに既視感を覚える。たしか、以前の定期テストで『全教科で満点を取って同率1位を獲得』という偉業を成した2人ではなかっただろうか。他学年である自分の元にまで届いたニュースに、声を上げて驚いた覚えがある。
「ねえ、今日帰りにコンビニ行ってみない?」
「それは、…」
「学校で自習してることにすればバレないって!良いじゃない!」
「……そうだな。楽しそうだ」
不自然な会話だが、なんだか楽しそうだ。
いつも通りの完璧な笑みに混ざって、それぞれの表情がよく見える。この方が人間らしくてずっといい、なんて、適当なことを思ってしまう。
買い食いが禁止されているわけではないのに、この会話。
悪戯っ子のような会話に、聞いている側が微笑ましくなってしまった。
生徒会役員の挨拶活動は面倒だ。けれど、こういう何気ない日常の1シーンを見ることができると思えば、案外悪くない。むしろ、役得だ。
「さて、そろそろ予鈴が、」
「かいちょー!!門空けておいてー!!!」
遠くから声が聞こえる。ついで、段々と足音も増えてくる。明らかに走っている足音に目を凝らすと、
「お前ら、早く走れ!!」
「今日の人は誰目的なのよ!!!」
「3人全員!!!」
鞄を3つ肩にかけた男子生徒と、全力で走る女子生徒2人が走ってきていた。
言わずと知れた『変人ホイホイ』の3人の受け入れ体勢は、生徒会としてもバッチリだ。
「頑張ってー!!」
「駆け抜ければ勝ちだから!!!」
「走り切って!!!」
生徒会全員で、声をかけながら待つ。
こちらから助けに行きたいが、それで怪我をしてほしくないから待機に留めてほしいという3人の願い故に動けなかった。信じて待つしかない。
バタバタと走る3人の後ろから、大の大人が複数人追ってきている。白昼堂々と犯罪に手を染めようとしている大人に気味の悪さを引くも、3人は何とか学校の敷地内に駆け込んできた。
その瞬間、安全に気を付けながら全力で門を閉める。
中には門を乗り越えようとしてくる輩もいたが、先生たちの力添えもあって不審者を追い返すことに成功した。
地面にへたり込む3人に「お疲れ様」と声を掛けると、息切れしながら見上げられた。
「かいちょ~、聞いてよ!今日は私じゃないんだよ~!」
「いや、アンタよ」
「ストーキング常習犯に目付けられた奴が何言ってんだ?」
押し付け合っているが、きっと全員ブーメランだろう。それを指摘しないのは、私たちなりの優しさに違いない。
___キーンコーンカーンコーン
チャイムが響く。本来なら遅刻判定だが、生徒会役員とここにいる3人はセーフだろう。
「ほら、もうチャイム鳴ったから教室に行きなさい」
「「「はーい」」」
3人はお互いに支えながら立ち上がると、ふらふらと昇降口に向かう。ギャアギャア言い合いをしている3人を見ながら、小さく笑ってしまう。
この3人が高校生として生を謳歌できるのは、きっと奇跡に近いだろう。それほどまでに、異常に愛される3人だ。可哀想な呪い。それでも、本人たちは楽しそうだった。
「会長」
呼ばれて振り返ると、書記の後輩がいつもと変わらない表情をしていた。
「ん?どうしたの?」
「…おはようございます」
思わぬ言葉に固まってしまう。それでも、何が言いたいのか分かった。
明日、目を覚まさないかもしれない。
自らの意思で死ぬかもしれない。
その危うさを持っている私たちに、『絶対』の確証はない。
それでも、
「うん!おはよう!」
言える限りは言おう。
ずっとなんて言わない。
永遠なんて言わない。
有限を噛み締めて、全力でアンチブルーを叫ぼう。
なぜなら、私たちは今日も生きているから。
「「おはようございます」」
「おはようございまーす!」
綺麗にハモって挨拶してくれる男女2人。
元気よく挨拶をすれば、完璧な笑みを返される。その笑みに既視感を覚える。たしか、以前の定期テストで『全教科で満点を取って同率1位を獲得』という偉業を成した2人ではなかっただろうか。他学年である自分の元にまで届いたニュースに、声を上げて驚いた覚えがある。
「ねえ、今日帰りにコンビニ行ってみない?」
「それは、…」
「学校で自習してることにすればバレないって!良いじゃない!」
「……そうだな。楽しそうだ」
不自然な会話だが、なんだか楽しそうだ。
いつも通りの完璧な笑みに混ざって、それぞれの表情がよく見える。この方が人間らしくてずっといい、なんて、適当なことを思ってしまう。
買い食いが禁止されているわけではないのに、この会話。
悪戯っ子のような会話に、聞いている側が微笑ましくなってしまった。
生徒会役員の挨拶活動は面倒だ。けれど、こういう何気ない日常の1シーンを見ることができると思えば、案外悪くない。むしろ、役得だ。
「さて、そろそろ予鈴が、」
「かいちょー!!門空けておいてー!!!」
遠くから声が聞こえる。ついで、段々と足音も増えてくる。明らかに走っている足音に目を凝らすと、
「お前ら、早く走れ!!」
「今日の人は誰目的なのよ!!!」
「3人全員!!!」
鞄を3つ肩にかけた男子生徒と、全力で走る女子生徒2人が走ってきていた。
言わずと知れた『変人ホイホイ』の3人の受け入れ体勢は、生徒会としてもバッチリだ。
「頑張ってー!!」
「駆け抜ければ勝ちだから!!!」
「走り切って!!!」
生徒会全員で、声をかけながら待つ。
こちらから助けに行きたいが、それで怪我をしてほしくないから待機に留めてほしいという3人の願い故に動けなかった。信じて待つしかない。
バタバタと走る3人の後ろから、大の大人が複数人追ってきている。白昼堂々と犯罪に手を染めようとしている大人に気味の悪さを引くも、3人は何とか学校の敷地内に駆け込んできた。
その瞬間、安全に気を付けながら全力で門を閉める。
中には門を乗り越えようとしてくる輩もいたが、先生たちの力添えもあって不審者を追い返すことに成功した。
地面にへたり込む3人に「お疲れ様」と声を掛けると、息切れしながら見上げられた。
「かいちょ~、聞いてよ!今日は私じゃないんだよ~!」
「いや、アンタよ」
「ストーキング常習犯に目付けられた奴が何言ってんだ?」
押し付け合っているが、きっと全員ブーメランだろう。それを指摘しないのは、私たちなりの優しさに違いない。
___キーンコーンカーンコーン
チャイムが響く。本来なら遅刻判定だが、生徒会役員とここにいる3人はセーフだろう。
「ほら、もうチャイム鳴ったから教室に行きなさい」
「「「はーい」」」
3人はお互いに支えながら立ち上がると、ふらふらと昇降口に向かう。ギャアギャア言い合いをしている3人を見ながら、小さく笑ってしまう。
この3人が高校生として生を謳歌できるのは、きっと奇跡に近いだろう。それほどまでに、異常に愛される3人だ。可哀想な呪い。それでも、本人たちは楽しそうだった。
「会長」
呼ばれて振り返ると、書記の後輩がいつもと変わらない表情をしていた。
「ん?どうしたの?」
「…おはようございます」
思わぬ言葉に固まってしまう。それでも、何が言いたいのか分かった。
明日、目を覚まさないかもしれない。
自らの意思で死ぬかもしれない。
その危うさを持っている私たちに、『絶対』の確証はない。
それでも、
「うん!おはよう!」
言える限りは言おう。
ずっとなんて言わない。
永遠なんて言わない。
有限を噛み締めて、全力でアンチブルーを叫ぼう。
なぜなら、私たちは今日も生きているから。



