消失者たち

第一章:静寂の始まり

【事案報告書 A-001】
報告日時: 2023年9月3日 午前2時47分
管轄: 埼玉県警察本部 春日部警察署
報告者: 巡査部長 田中誠一
事案種別: 未成年者行方不明事案

事案概要
2023年9月2日午後11時32分、春日部市緑町3丁目15番地在住の会社員、佐藤健太郎氏(42歳)より、長女・佐藤美咲さん(14歳)の行方不明について通報あり。
通報内容によれば、同日午後9時頃、佐藤氏夫妻が一階リビングでテレビを視聴中、二階の美咲さんの部屋から物音が聞こえた。当初は本人が物を落としたものと思われたが、その後、玄関のドアが開閉する音を確認。
不審に思った佐藤氏が二階へ上がったところ、美咲さんの部屋のドアが開いており、室内に本人の姿はなかった。窓は閉まっており、施錠されていた。

現場状況
美咲さんの部屋は6畳間。机の上には開いたままの数学の教科書とノート。スマートフォンは充電器に接続されたまま机上に放置。財布、鍵も部屋に残されていた。
ベッドは使用された形跡なし。クローゼットの衣類に乱れはなく、着替えた様子も見られない。室内に争った形跡、血痕等は一切確認されず。
注目すべき点として、窓の鍵は内側から施錠されていたにもかかわらず、窓枠に微細な傷が複数確認された。ただし、これが本件と関連するかは不明。

証言記録
証言者: 佐藤健太郎(父親)
「娘は午後8時半頃、『宿題やる』と言って二階の自分の部屋に上がっていきました。特に変わった様子はありませんでした。いつもの娘でした。
午後9時頃、ドンという音がしたんです。何か重いものが倒れたような。でも、娘が部屋で何かやってるんだろうと思って、特に気にしませんでした。
それから15分くらいして、玄関のドアが開く音がしたんです。妻と顔を見合わせました。『誰か来た?』って。でもチャイムは鳴っていない。
私が玄関に行くと、ドアは閉まっていて、誰もいませんでした。でも確かに音がしたんです。それで念のため二階を見に行ったら……娘がいなかった。
部屋の電気はついたまま。教科書も開いたまま。まるで、たった今まで勉強していたみたいに。スマホも財布も全部そのまま。娘が何も持たずに出ていくなんて、ありえないんです」
証言者: 佐藤由美(母親)
「美咲は真面目な子です。夜に勝手に外出するような子じゃありません。友達付き合いも普通で、特に問題のある交友関係もありません。
SNSも時々チェックさせてもらっていましたが、変なメッセージのやり取りもなかった。学校でのいじめもないと先生から聞いています。
あの子が自分から消えるなんて、絶対にありえません。何かに……誰かに連れ去られたとしか思えないんです」

捜査経過
9月3日午前2時より、半径2キロメートル以内の捜索を実施。防犯カメラ映像の確認、近隣住民への聞き込みを並行して実施中。
現時点で有力な目撃情報なし。午後9時から10時の間、佐藤宅周辺で不審な人物、車両の目撃情報も得られず。
本件については引き続き重点的に捜査を継続する。
報告者: 田中誠一(印)