夜の底まで私


...午前2時

家を出るまであと5時間。
寝たいと思うのに寝れなくて
寝たかと思えば夢を見ていて、

「今わたし、寝た?」

毎日そんな事の繰り返し。



ベランダに出て、外の空気を吸おうと思った
なんだか今日はあの人が頭によぎる。



***

「なぁ、小夜(さや)、で良いかな...」
「.....え?」
「あ、ごめん、ちょっとさ、俺と相性良さそうだなって思って...」

私の目の前に立っている男子が、私の名前を口にした。

「相性?」
「し、下心とかじゃないよ...!?」
「うん」
「...仲良くなりたいかもって思ったんだ」

なんで、私なんかと仲良くなりたいのか理解できなかった。
一応その時は流れで連絡先を交換して、帰り道は一緒に話して駅まで歩いた。



「よく、分かんないよな。この世界って」

最初の一言目で彼は普段どんな事を考えているのか、と興味をそそった

「....何かあった?」
「俺、人間の事をすごく滑稽に見てしまうんだ。人間は楽する為に進化してるけど、それによって困るのも人間でさ」

「だから、新たな物を作り出す事が俺は嫌いなんだ」
「なるほど....」
「生産と消費は表裏一体ってわけだ」

にかっと笑った顔がなんだか私には重かった
自業自得な人間の話をされて、私は何を返せば良いのか分からなくなった。

「なんでそんな話を私に?」
「選ばれた人間って、この世界に存在する限りがあるんだ。きっと」

「小夜も俺と少しだけ同じだと思ったんだ」



***



「...名前、聞きそびれちゃった」

柵に足をつけたカラスの目が私を捉えている
こんな夜中にカラスは何を考えて生きているんだろう。
なんとなく手を伸ばしてみたけれど、乗っかろうとする動きもなくて止まったまま数秒経った後にはもう姿は見えない。まるで消えたかのように。

.....そう、消えたのだ。
まばたきしたうちに飛んで行ったのかと一瞬は考えたけれど、その時にまばたきした事を意識してはいなかった。
日常でまばたきしている事を意識した事は無いが普通に物の動きを0.01秒単位で読み取れる。
まばたきを意識しない事はしてない事とほぼ同じ。
つまり、私の手の先でカラスが消えた事をしっかりと認識した。

「.....邪魔だなぁ」
カラスが消える直前に一つだけ考えてしまった事が、思わず声に出てしまう。
信じられないという気持ちと、もしかしたら自分のその思いが反映されたんじゃないかと考えるような自責に囚われた小さな弱い声で。
私はその場に座り込んだ。