翌朝、心地いい眠りから覚めると、そこには誰の姿もなかった。
「隆平?」
不安になって呼ぶと、頬に微かな温もりを当てられた。
「俺はここにいるよ」
夢ではなかったのだという事実に安堵し、嬉しさから顔を綻ばせると、隆平も微笑む気配がする。
いつまでもそうしていたかったが、生憎今日は休日ではない。
名残惜しさを覚えながらも隆平から離れようとすると、途端に体の自由が効かなくなった。
まるで金縛りにでも遭ったように、指先一つ動かせない。
一瞬パニックに陥りかけたところで、隆平が笑い声を立てていることに気が付くと、途端に力を抜いた。
隆平の仕業だというなら、何も恐れる必要はない。
「りゅ、う、へ、い?」
声の方を睨むと、ひっ、こええと言って、ようやくそこで金縛りを解いてくれる。
「これ、何か使えそうだね」
「使うって、何に使うの」
「ううん、何でもない」
不穏な言葉だったが、聞かなかったことにした方が良さそうだ。
「でもこんなんじゃ、一緒に学校なんて行けないよな」
諦めたように笑わないで欲しかった。そんな笑い方は、いつも明るかった隆平には似合わない。
声がしていた方に近付いて、隆平のちょうど頭の高さを撫でる。温もりを感じられなくとも、彼の残り香が漂う気がして、今はそれだけでも十分だ。
「隆平、一緒に行こう」
力強く誘うと、隆平は一瞬はっと息を飲み、悪戯っぽく言った。
「俺は皐月の背後霊だね」
「そこは守護霊って言おうよ」
冗談を言い合いながら、以前のように明るい空気が戻ってくるのを嬉しく思う。
少なくとも今はもう、一人で悲しむ必要はない。
問題は山積みだが、こんな日々が訪れることは夢にも思っていなかったのだから、少しぐらい目をそらしてもバチは当たらないだろう。
これ以上、どんなバチも当たりようがなかったのだが。
隆平と談笑しながらだったが、思ったよりも早く準備が整った。
母の用意してくれた朝食を食べ、いざ外に出るという段階で、肝心なことに思い当たる。
「外では話が出来ないな」
霊感がない限り、隆平の声は周りに聞こえないのだ。
一人で何もない空間に話をしていると、流石に不審人物に見られるに違いない。
すると突然、スマートフォンがメールの受信を知らせた。
開いてみると、送り元は不明だが、「隆平より」とある。
「電子機器は動かせるみたいだから、その時はスマートフォンのメール機能を出してほしい」
「そんなこと出来るのか。すごいな」
感心していると、隆平は何かを言い淀んだ。
「こんなことよりも、皐月に……」
「隆平?」
「ううん、何でもない」
首を傾げながら玄関に向かう。
「ほら、行くぞ」
扉を開け放った時、スマートフォンがメールを受信した。
「また皐月と登校出来て嬉しい」
隆平の言葉に、俺も自然と笑みを浮かべ、俺もと打った。
こんな些細なことが何よりも幸せだった。
「隆平?」
不安になって呼ぶと、頬に微かな温もりを当てられた。
「俺はここにいるよ」
夢ではなかったのだという事実に安堵し、嬉しさから顔を綻ばせると、隆平も微笑む気配がする。
いつまでもそうしていたかったが、生憎今日は休日ではない。
名残惜しさを覚えながらも隆平から離れようとすると、途端に体の自由が効かなくなった。
まるで金縛りにでも遭ったように、指先一つ動かせない。
一瞬パニックに陥りかけたところで、隆平が笑い声を立てていることに気が付くと、途端に力を抜いた。
隆平の仕業だというなら、何も恐れる必要はない。
「りゅ、う、へ、い?」
声の方を睨むと、ひっ、こええと言って、ようやくそこで金縛りを解いてくれる。
「これ、何か使えそうだね」
「使うって、何に使うの」
「ううん、何でもない」
不穏な言葉だったが、聞かなかったことにした方が良さそうだ。
「でもこんなんじゃ、一緒に学校なんて行けないよな」
諦めたように笑わないで欲しかった。そんな笑い方は、いつも明るかった隆平には似合わない。
声がしていた方に近付いて、隆平のちょうど頭の高さを撫でる。温もりを感じられなくとも、彼の残り香が漂う気がして、今はそれだけでも十分だ。
「隆平、一緒に行こう」
力強く誘うと、隆平は一瞬はっと息を飲み、悪戯っぽく言った。
「俺は皐月の背後霊だね」
「そこは守護霊って言おうよ」
冗談を言い合いながら、以前のように明るい空気が戻ってくるのを嬉しく思う。
少なくとも今はもう、一人で悲しむ必要はない。
問題は山積みだが、こんな日々が訪れることは夢にも思っていなかったのだから、少しぐらい目をそらしてもバチは当たらないだろう。
これ以上、どんなバチも当たりようがなかったのだが。
隆平と談笑しながらだったが、思ったよりも早く準備が整った。
母の用意してくれた朝食を食べ、いざ外に出るという段階で、肝心なことに思い当たる。
「外では話が出来ないな」
霊感がない限り、隆平の声は周りに聞こえないのだ。
一人で何もない空間に話をしていると、流石に不審人物に見られるに違いない。
すると突然、スマートフォンがメールの受信を知らせた。
開いてみると、送り元は不明だが、「隆平より」とある。
「電子機器は動かせるみたいだから、その時はスマートフォンのメール機能を出してほしい」
「そんなこと出来るのか。すごいな」
感心していると、隆平は何かを言い淀んだ。
「こんなことよりも、皐月に……」
「隆平?」
「ううん、何でもない」
首を傾げながら玄関に向かう。
「ほら、行くぞ」
扉を開け放った時、スマートフォンがメールを受信した。
「また皐月と登校出来て嬉しい」
隆平の言葉に、俺も自然と笑みを浮かべ、俺もと打った。
こんな些細なことが何よりも幸せだった。


