境内の静謐な空間を全身で感じ、澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んだ後、もう一度深々とお辞儀をして立ち去ろうとした時だった。
「こんにちは」
社務所の方から、竹ぼうきを持った神主が現れた。
ちょうど親世代くらいの凛々しい眉が印象的な男で、笑うと一気に人好きのする顔になる。
「こんにちは」
俺はお辞儀をし、ぎこちなく笑みを返す。
そしてそのまま立ち去ろうとしたのだが、背後からあっ、と声がした。
「君、待ちなさい」
「え?」
何事かと振り返ると、神主は複雑そうな目で俺の――背後を見ている。
「何でしょうか」
俺は後ろを振り向いたが、そこには何もない空間があるだけだった。
「良くないものが憑いている。料金はいらないので、こちらへ」
良くないもの。
俺はそういった類のものは信じる方だが、霊感がまるでないため、よく分からなかった。
でももし本当に隣にいるとしたら、と考えると背筋に怖気が走る。
神主に招かれるまま、拝殿に入り、通常は厄払いなどを執り行うのであろう場所へと辿り着いた。
「さあ、そのまま椅子にかけて、目を閉じてください」
言われるままに目を閉じ、お祓いが始まるのを待った、その時。
――皐月、皐月!俺だよ。祓わないで。
「え?」
俺はぱっと目を開き、左右を見る。
あの声は。
「いかがなさいましたか」
不思議がる神主に向かって、俺は頭を下げた。
「すみません、お祓いは結構ですので失礼します」
「えっ!ちょっと君!」
神主が呼び止める声も聞かず、俺はそのまま拝殿から走り出た。
「こんにちは」
社務所の方から、竹ぼうきを持った神主が現れた。
ちょうど親世代くらいの凛々しい眉が印象的な男で、笑うと一気に人好きのする顔になる。
「こんにちは」
俺はお辞儀をし、ぎこちなく笑みを返す。
そしてそのまま立ち去ろうとしたのだが、背後からあっ、と声がした。
「君、待ちなさい」
「え?」
何事かと振り返ると、神主は複雑そうな目で俺の――背後を見ている。
「何でしょうか」
俺は後ろを振り向いたが、そこには何もない空間があるだけだった。
「良くないものが憑いている。料金はいらないので、こちらへ」
良くないもの。
俺はそういった類のものは信じる方だが、霊感がまるでないため、よく分からなかった。
でももし本当に隣にいるとしたら、と考えると背筋に怖気が走る。
神主に招かれるまま、拝殿に入り、通常は厄払いなどを執り行うのであろう場所へと辿り着いた。
「さあ、そのまま椅子にかけて、目を閉じてください」
言われるままに目を閉じ、お祓いが始まるのを待った、その時。
――皐月、皐月!俺だよ。祓わないで。
「え?」
俺はぱっと目を開き、左右を見る。
あの声は。
「いかがなさいましたか」
不思議がる神主に向かって、俺は頭を下げた。
「すみません、お祓いは結構ですので失礼します」
「えっ!ちょっと君!」
神主が呼び止める声も聞かず、俺はそのまま拝殿から走り出た。


