時が止まるまで、君と

「ん、んぅ、んっ」
 満月が訪れた日、隆平は起き抜けに俺の唇を奪った。
 それもなかなかしつこく、息もできないほどで、俺は隆平から逃れようともがいたけれど、隆平は許さなかった。
「や、め、ろ!」
 勢いよく突き飛ばすと、隆平は思い切り壁に背中をぶつけていたが、なぜか笑っている。
「何?何がおかしいわけ」
「いや。今まで悩んでたのがバカみたいだなって。皐月、俺のこと意識してるのは間違いないし、こんなに脈があるなら記憶なくしても、またその気にさせればいいって思った」
「だから、俺はそういっ……」
 言いかけて、言葉を飲み込もうとしたけれど遅かった。
 墓穴を掘った。
「否定しなかったね。でも、じゃあ何で皐月は自分の気持ちを認めないの?本当は自覚してるんじゃないの?」
「……怖いんだ」
「怖い?」
「俺とお前は、いつも一緒にいた。ずっと大切な友達だと思っていた。それがこんなに呆気なく壊れるなんて」
「壊れてない。お互いにこれまで通り、一番大切な相手であることに変わりないよ」
「変わった。変わらないことなんてない。俺、何でお前にドキドキしてるの。隆平、お前のせいだろ」
「そうだよ、俺のせい。だから俺は責任持つよ」
「そういう問題じゃ……だって、俺は唯一の友達を失くすんだ」
「失くさない。俺は皐月の友達であり、恋人になるだけ。友達と恋人、両方になるから」
「何だよそれ。めちゃくちゃだ」
 俺が笑えば、隆平も笑い、強い視線で俺を貫いた。
「皐月、俺と残り4回、キスして。俺は必ず生き返って、もう一度皐月を振り向かせるから」
「絶対?」
「必ず」
 俺と隆平は、拳と拳をぶつけ合った。 
 友達同士でする約束じゃなかったけど、その約束の仕方が俺たちらしかった。