時が止まるまで、君と

 答えを出せないまま、四十九日の夜を迎えた。
 仏教では、この日に亡くなった人が極楽浄土に行けるかどうか判決を受けるとのことだ。
 でも、隆平は変わらずに俺の傍にいて、隣で横たわっている。
 隆平はもう眠る必要はないのだろうけど、こうなってからは必ず俺が寝ようとすれば隣に来た。
「なあ、隆平」
 俺は進路希望調査の紙をじっと眺めながら、隣にいる隆平に呼びかける。
 内容はまだ白紙のままだ。
「何?」
「俺さ、お前が生きていたら将来何がしたかったか知りたい」
「あ。皐月、俺のやりたいこと宛にしてる?何もしたいことないから、俺の夢をパクろうとしてるんでしょ」
「パクるというか、この場合は受け継ぐというか」
「どっちも似たようなものだよ」
「そうか」
「でもまあ、俺の夢か……」
 隆平の目が俺を捉える。
「あ。言っとくけど、俺の主夫になるとかはなし」
「なしか」
「なしだろ」
 隆平は本気でがっかりしている。
 俺は呆れながら、生前の隆平のことを思い出そうとする。
「隆平は、とにかく人に好かれる。だからアイドルとか芸能人とか向いてる」
「顔がいいってこと?」
「ムカつくけど」
「ムカつくんだ」
 二人で笑った後、隆平はふっと遠い目をした。
「俺、さっきの主夫とちょっと似てしまうと思うけど、とにかく一生皐月の傍にいたかったな」
「何それ、プロポーズ?」
 冗談にしようとしたけれど、隆平の真っ直ぐな視線を受けて、俺は慌てて目を逸らした。
 部屋が暗くて助かった。
「皐月は、俺と一緒だと思ってたよ」
「一緒?」
「俺が傍にいるのが当たり前だと思っていたんでしょ。だから、俺がいなくなって毎日泣いてた」
「当たり前だよ」
「うん、当たり前」
 隆平は嬉しそうに笑う。
 どうしてだろう。
 なんで俺は、隆平がこんな態度をしていたのに気づかなかったんだろう。
 また後悔が首をもたげてきたけれど、俺は溜め息をついて考えるのをやめた。
「進路、どうするの」
 訊かれた途端、ずるいと分かっていて、口から飛び出そうとした台詞を飲み込もうとする。
 けれど隆平の視線からは逃れられず、観念して口を開いた。
「お前がいなきゃ、進路なんて意味ない」
 隆平が息を飲む気配がしたから、俺は慌てて弁解した。
「違う、今のは友達と、して……」
 隆平は俺の弁解を聞いていなかった。きつく抱き締められ、柑橘系の匂いを肺いっぱいに吸い込んでしまう。
「う……」
 これは。何というか、かなり恥ずかしい。
「皐月、キスしていい?」
 隆平の顔の向こうに、ちょうど星空が透けて見えた。
 俺は返事をせず、ただその光景に見惚れる。
 隆平の顔が近づいてきても避けなかった。