時が止まるまで、君と

 俺は真っ直ぐ帰る気になれず、背後に隆平の気配を感じながらすっかり日が沈んだ街中を歩く。
 隆平も俺も、言葉を交わさなかった。
 きっと同じことを考えている。
 時間は限られている。だとしたら、できることは思い切り楽しい時間を二人で過ごす。それしかない。
「隆平、俺……」
 人混みだというのに、普通に声をかけて振り返ってしまった、その時だった。
「お兄さん、その人蘇らせたい?」
 するりと届いた中性的な声に足を止め、声のした方を向くと、二十歳そこそこくらいの男が、帽子を目深に被って道端に中腰で座っていた。
「あなたは?」
「皐月、怪しいよ」
 隆平が止めるのも聞かず、俺はその男に近づいた。
「皐月!」
「ああ、心配しないで。轟隆平君」
「えっ、何で……」
「俺には分かるから」
 見るからに怪しいのだが、帽子の隙間から覗く鋭い眼光がただ者ではないと告げていて、俺は近づいた。
「さっきの、蘇らせたいかって……」
「皐月君は、人工呼吸は知ってる?」
「はい……それが何か」
「それを隆平君に施してあげたら蘇る。満月が来る度、7回。ただし、霊感がない人には7回目を行うまでは見えないし、聞こえない」
「7回目を完了したら?」
「彼の死はなかったことになる」
 はっきりと断言され、俺はこの男を疑う気持ちを失った。
「でも、それには代償が伴うんじゃないですか?」
 隆平が不安そうに訊けば、男は笑うだけで答えない。
「皐月、行こう」
「でも隆平、俺はお前が蘇るなら、何だってするよ」
「皐月……それは、友達として?」
「え?」
 隆平の言葉の意味を理解しかねて振り返ったその時、隆平があっ、と声を上げる。
「皐月、後ろ」
「後ろ?」
 男がいた方へ視線を戻すと、既にその姿はなかった。