時が止まるまで、君と

 俺は放課後、隆平とメールでのやり取りをしながら帰路を歩いていると、ちょうどあの神社の前に来たところで、隆平が黙り込んだ。
「隆平?」
 答えがないことに不安が生まれたが、突如腕を引っ張られる感覚がして、それどころではなくなった。
「うわっ、とと?」
 転びかけながらも、俺はたぶん隆平に腕を引かれて境内に入っていく。
「隆平?どうしたんだよ」
「分からない!俺も引っ張られてる」
「えっ!?」
 まさか隆平もとは思えなかった。
 引っ張られるまま素直に進むと、コツが掴めて少しだけスムーズに移動ができ、賽銭箱の前で止まった。
「お参りしなさいってこと?」
「かもね」
 そういえば、この神社にお参りしてから隆平の声が聞こえるようになったんだった。
「よし」
 俺は気合いを入れて、財布から500円を取り出すと、賽銭箱に入れた。
 手を合わせる前に少し考え、腕にはめた隆平の形見を眺める。
 俺はもう一度、隆平に会いたい。声だけじゃなく、もっと。
 願いが決まり、手を合わせて祈りを捧げる。
 お願いします。隆平を蘇らせて下さい。
 祈った途端、願いを聞き届けられたような、不思議な安心感があった。
「皐月」
 隆平の声に顔を上げると、あの時の神主が立っていた。
「こんにちは」
 あの時と同じ笑顔を向けられ、また祓われては適わないと踵を返しかけたが、呼び止められる。
「待ちなさい。祓ったりしませんよ。その少年は、君の大切な人なんですね」
 振り返ると、神主は頭を下げた。
「すまなかったね、強引に祓おうとして」
「いえ……」
「彼は亡くなってからどれぐらい経つんですか?」
「7日です」
「そうですか。神主としては道を外れた考えですので、戯れ言としてお聞き下さい。私も早くに妻を亡くしまして、その時からそういったものが見えるようになり、妻はしばらく私の傍にいてくれました。今はもう彼女はいませんが、いつも傍にいてくれるような気がしています」
「あなたも、そんな体験を……」
「ええ。だからこそ、私から言えるのは、せめて限りある特別な時間を、その少年と共に大切にお過ごし下さい」
「……はい。ありがとう、ございます」
 胸の内に温かい感覚が生まれる。
 深々と頭を下げ、ゆっくりと神社を後にした。