第五章:物流・高速道路…運ばれるもの
私は「第五章」と書かれた分厚いファイルを手に取った。
【静岡市西部医療センター・物品搬出入記録(19██年 7 月 4 日)】 09:20 医療廃棄物回 収 11:05 病院リネン・寝具類回収 病院の中庭で、あの忌まわしい「巨塔」が崩壊した翌 日の記録だ。それは救済ではなく、汚染の積載に他ならなかった。
[深夜便トラック運転手・手記(7 月 5 日未明)] 「東名高速を下っている最中だった。深 夜のしじまのなか、荷台の隙間から、まるで生き物が呼吸しているような、茶色い霧が漏れ出しているのが見えた。でも、同時に猛烈な寒気がした。風もないのに、その霧は道路 の路肩に沿って、這うように流れていく。まるで、行き先を知っているみたいに。 サービスエリアで車を止めたとき、靴の裏に、べっとりと黄色い『何か』が付いていた。拭って も、拭っても、それは吸盤のように靴底にしがみついて離れない。

[高速道路管理会社・巡回日報(7 月 6 日)] 牧之原サービスエリア下り、植栽付近にて異変を確認。それはアスファルトの亀裂に沿って、深夜の駐車場へと触手を伸ばしている。物流という巨大な「血管」に乗って、粘菌は日本という巨大な「肉体」へと入り込んだの だ。 トラックが走り抜けたあとの東名高速。そこには、目に見えないほど微細な「眠る 胞子」が、死の粉雪のように降り積もっている。
私は、さらに巨大な結節点である「東京」の記録…第六章へと、祈るような気持ちで手を 伸ばした。
私は「第五章」と書かれた分厚いファイルを手に取った。
【静岡市西部医療センター・物品搬出入記録(19██年 7 月 4 日)】 09:20 医療廃棄物回 収 11:05 病院リネン・寝具類回収 病院の中庭で、あの忌まわしい「巨塔」が崩壊した翌 日の記録だ。それは救済ではなく、汚染の積載に他ならなかった。
[深夜便トラック運転手・手記(7 月 5 日未明)] 「東名高速を下っている最中だった。深 夜のしじまのなか、荷台の隙間から、まるで生き物が呼吸しているような、茶色い霧が漏れ出しているのが見えた。でも、同時に猛烈な寒気がした。風もないのに、その霧は道路 の路肩に沿って、這うように流れていく。まるで、行き先を知っているみたいに。 サービスエリアで車を止めたとき、靴の裏に、べっとりと黄色い『何か』が付いていた。拭って も、拭っても、それは吸盤のように靴底にしがみついて離れない。

[高速道路管理会社・巡回日報(7 月 6 日)] 牧之原サービスエリア下り、植栽付近にて異変を確認。それはアスファルトの亀裂に沿って、深夜の駐車場へと触手を伸ばしている。物流という巨大な「血管」に乗って、粘菌は日本という巨大な「肉体」へと入り込んだの だ。 トラックが走り抜けたあとの東名高速。そこには、目に見えないほど微細な「眠る 胞子」が、死の粉雪のように降り積もっている。
私は、さらに巨大な結節点である「東京」の記録…第六章へと、祈るような気持ちで手を 伸ばした。

