第十章:数えられない犠牲…存在しなかったことにされたもの
私は「第十章」のファイルを手に取った。 そこにあるのは「統計」という名の、巨大な 消しゴムの跡が残されていた。 犠牲者たちは、死んだことさえ認められず、ただ制度の隙 間から滑り落ち、消えていったのだ。
【厚生労働省・非公式集計班 内部試算メモ(19██年 11 月)】 「…数字が合わない。 静岡県内、および東名高速沿線都市における乳幼児の『行方不明届』は、前年比で 400% の増加を見せている。 だが、警察はこれらを『家庭内事故』あるいは『親による連れ去
り』として分類し、事案としての統合を拒んでいる。結論。本件は『統計的有意性なし』 として処理し、個別の家庭問題として封じ込めるべきである」
[ある地方自治体・戸籍担当者の独白] 「…毎日、窓口に親たちが来るんです。『あの子が いなくなった』『昨夜、隣で寝ていたはずなのに、今朝になったらパジャマだけが残っていた』と。 私はそれを聞きながら、端末のキーを叩いて、その子の住民票に『転出不明』 のフラグを立てる。死亡届は出せないんです。遺体がないから。 彼女たちの足元を見て ください。誰もが、あの黄金色の粉を払おうともせず、服にこびりつかせたまま歩いている。
[未送信の内部メール(12 月 15 日)] 「…我々は罪を犯している。数字を数えないこと は、その命を最初からなかったことにすることだ。我々の沈黙は、あいつらの捕食を助けているのと同じだ」
「統計的有意性がない」という言葉の裏で、何百人、何千人の「柔らかい命」が、誰にも 看取られず黄金の闇に飲み込まれていった。
私は、もはや「解決」を望むことさえできなくなった世界が、どのように眠りについたの か…第十一章へと進んだ。
私は「第十章」のファイルを手に取った。 そこにあるのは「統計」という名の、巨大な 消しゴムの跡が残されていた。 犠牲者たちは、死んだことさえ認められず、ただ制度の隙 間から滑り落ち、消えていったのだ。
【厚生労働省・非公式集計班 内部試算メモ(19██年 11 月)】 「…数字が合わない。 静岡県内、および東名高速沿線都市における乳幼児の『行方不明届』は、前年比で 400% の増加を見せている。 だが、警察はこれらを『家庭内事故』あるいは『親による連れ去
り』として分類し、事案としての統合を拒んでいる。結論。本件は『統計的有意性なし』 として処理し、個別の家庭問題として封じ込めるべきである」
[ある地方自治体・戸籍担当者の独白] 「…毎日、窓口に親たちが来るんです。『あの子が いなくなった』『昨夜、隣で寝ていたはずなのに、今朝になったらパジャマだけが残っていた』と。 私はそれを聞きながら、端末のキーを叩いて、その子の住民票に『転出不明』 のフラグを立てる。死亡届は出せないんです。遺体がないから。 彼女たちの足元を見て ください。誰もが、あの黄金色の粉を払おうともせず、服にこびりつかせたまま歩いている。
[未送信の内部メール(12 月 15 日)] 「…我々は罪を犯している。数字を数えないこと は、その命を最初からなかったことにすることだ。我々の沈黙は、あいつらの捕食を助けているのと同じだ」
「統計的有意性がない」という言葉の裏で、何百人、何千人の「柔らかい命」が、誰にも 看取られず黄金の闇に飲み込まれていった。
私は、もはや「解決」を望むことさえできなくなった世界が、どのように眠りについたの か…第十一章へと進んだ。

