極悪非道の半妖は、誰よりも優しく、誰よりも慈悲深い。

 山奥にひっそりと建てられた草庵。
 その中の藁が敷き詰められた上に、私は静かに下ろされた。
「ここは……?」
「私の寝床だ」
「白夜の寝床……」
 呟きながら、藁の感触に懐かしさを覚えていると、蜂蜜色の瞳が私を見据えているのに気が付いた。無表情のその顔からは感情が読めないが、感情豊かな私からしたら怒っているようにしかみえない。ひとまず謝らずにはいられない。
「す、すみません」
「何に謝罪している?」
「いえ、別に……」
 何もしていないが悪いことをした気分になり、シュンと俯く。
 暫しの沈黙が流れ、居たたまれない気持ちになり、無理に自分の悪かったところを探した。
「強いて言うなら、呼び捨てにしたことですかね……」
「そうか」
 冷淡に返され、それに対して許してくれたのかそうでないのかも分からない。そもそも、彼にとってはどうでも良いことなのだろう。
 この気まずい空気に耐えられないでいると、白夜は白い着物の袖口に手を入れ、何かを取り出した。と思ったら、それを私に投げてきた。反射的にそれを受け取る。
「これは……キャー!!」
 受け取ったそれを思い切り白夜の顔面に投げつけた。
「何をする」
「な、何って……それは、こっちのセリフです!!」
 白夜が投げてきたのは、ヤモリの干物だったのだ。そのグロテスクな見た目と、且つ触ってしまったことで、鳥肌が立つ。
「腹が減ったかと思ったのだが、勘違いだったか」
「お、お腹は空いてますけど、そんなもの食べません!」
「そんなものと言うが、これはお前の家にあったものだ」
「そ、そうですか」
 確かに昔はそういう物も食べていた。カエルやスズメだって食べていた。しかし、この六年間住んでいた環境がそういうものを食さない環境だったため、見るだけでおぞましく感じる。
 ヤモリの干物をポリポリと食す白夜は、腰にさしていた刀を抱きかかえるようにして、扉の横に腰かけた。
「あ、あの……」
「今更欲しいと言われても、もうないぞ」
「ち、違います! そうじゃなくて、私を人質にしても、さっきの親を見てもらったら分かるように、意味がないかと……」
 白夜は、興味の無さそうに目を瞑った。
「だろうな」
「じゃ、じゃあ、どうして私を人質に……?」
「建前が必要かと思ってな」
「建前……」
「出たかったのであろう? あの家を」
 もしかして、私たちのやり取りを全て見た上で……?
 白夜は、極悪非道の半妖ではないのだろうか。しかし、そんな気遣いの出来る半妖であるなら、人を襲わないはず。今まで見てきた優しい妖怪のように、人間から隠れ、ひっそりと暮らしているはず。
(ひっそりと……)
 私は、再びこの草庵を眺めた。
 藁で出来た寝床と、水を溜めておくための桶。そして、暖をとるための囲炉裏と鍋が一つあるだけだ。
 十分にひっそりと暮らしているその暮らしっぷり。私の認識が間違っていたのだろうか。いや、認識が合っていようが間違っていようが、今回助けられたのは確かだ。
 私は、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。助けて下さって」
 返事は無かったが、この場で殺そうとしてこないこと、食事を分け与えようとしてくれたことが何よりの証だ。私には良い妖怪……ではく、半妖だ。それ以上でもそれ以下でもない。
「今は何も出来ませんが、生き延びることが出来たら、いつか恩返しをさせて下さい」
「恩返し?」
「私のおばあちゃんが言っていたんです。良くしてくれた人には、感謝の気持ちを忘れないようにしなさいって」
「そうか」
「では、私はこれで」
 再び頭を下げてから、立ち上がろうとしたその時。
 ――ドォン!!
 何かが爆発するような大きな音が轟いた。
 同時に、鳥の飛び立つ音や、獣の鳴き声も聞こえてくる。
「な、何!?」
「チッ、ここで待っていろ」
 舌打ちをした白夜は、剣を腰に携え、がたつく扉を開けた。隙間から見えた光景に、私は息を呑んだ。
「――ッ!?」
 扉の向こうは、夕暮れと同じオレンジ色に染まっていた。木々が燃え、動物や妖怪は逃げ惑い、山の中は大混乱だ。
 そして、これをしたのはおそらく――――。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「下がっていろ」
 必死に謝罪した。白夜の止める声も聞かず、山の中にひっそりと隠れていた生き物に謝罪した。
 だって、これは妖怪退治屋の常套手段。大量の火薬で山の中腹から頂上にかけて爆破し、妖怪を麓へとおびき寄せる。それを一網打尽にするといった、残虐な行為。
 しかし、これらは『悪』を駆逐するためなら容認される。一つや二つ山が無くなったって、それは仕方のないこと。悪を滅する為なら、この時代の人間は何だって許される。
 動物の類は保護対象だから問題ない。しかし、妖怪達はどうにかせねば。
「そっちはダメ! 逃げるなら、こっち!」
 誘導しようとするが、私の声なんて聞こえるはずもない。麓に向かって駆ける妖怪達を止めることができない。火の手もすぐそこまで来ており、判断を見誤るとどちらにせよ生きられない。
「そうだ! 火を、火を消せば良いんだ!」
 混乱している私は、草庵の中にあった桶を思い出し、踵を返そうとする。が、白夜に止められた。
「そんなもので消えるはずがないだろう。私達もひとまず逃げるぞ。ここにいたら巻き沿いを喰らう」
「でも、でも……」
「問題ない。この山には、アイツらもいる」
「アイツら……?」
 白夜の冷静な顔を見れば、私の焦る気持ちが少し落ち着いた。
「起きる前に、私たちはゆくぞ」
「起きる?」
 きょとんとしていると、「グォォォォォォォオオオ!」と獣の叫び声が聞こえてきた。
「ほら、早くゆくぞ」
 そう言って、白夜に立て抱きにされた。高く跳んだので、驚きのあまりその首にギュッと絡みつく。
 木の枝と枝を軽快にジャンプしながら移動する白夜。
「ま、待って。待って!」
 私の声で、木の上で一旦止まった。本当に止まってくれるとは思っていなかったので、一瞬言葉に詰まるが、急いで質問をする。
「アイツらって、起きるって何ですか?」
「熊彦と熊次郎だ」
「熊……の妖怪?」
「ああ。冬眠中だったから、機嫌が相当悪いだろうな」
 熊なんて上級レベルの妖怪がいる場所に火を付けるとは、うちの家族は何を考えているのだろうか。
 先程、常套手段と言ったが、それは大抵どの妖怪がいるかを把握した上で行うこと。熊の妖怪がいる場所でそんな危険なことはしないことになっているはずなのに。
 私の考えを読んだように、白夜が応える。
「お前のことがよっぽど大事なのか、はたまた……」
「後者だと思います。私なんて、いなくなれば良いと思っているはずです」
 白夜を含め、山に潜む妖怪を退治するのに仕方がなかった。私が死んだとしても、そう正当化するのだろう。死ななかった場合は、助けてやったんだから言うことを聞けと、死ぬまでこき使われそうだ。
「では、やるべきことは決まったな」
「やるべきこと?」
「意地でも、生き延びろ」
 今までピクリとも動かなかった白夜の表情筋が動き、優しく微笑まれた。
 その瞬間、胸がトゥクンと跳ねた。
「さ、ゆくぞ」
「は、はい……」
 すぐに冷徹な表情に戻ってしまったが、私の鼓動は早いままだ。
 うるさい胸の音は、周りの音で気付かない振りをしつつ、祈るようにその場を後にした――――。

◇◇◇◇

 結局、山は一つ燃えてしまった。
 夜明けと共に、その惨劇が露わになっていく。
 私の家族と、妖怪退治屋の仲間たちは、熊彦と熊次郎の出現で返り討ちに遭った。何人か死人も出ていたようだが、両親と律は、負傷しながらもしぶとく生き残っていた。
 そして、逃げ惑っていた妖怪らだが、熊彦と熊次郎を筆頭に拠点を別の場所に移すらしい。
 大移動している妖怪らの様子を白夜と共に木の上に隠れ、眺める。
「白夜……様も、一緒に行かれるのですか?」
「半妖に“様”は付けなくて良い」
「いえ、私の命の恩人ですから」
「勝手にしろ」
「はい。で、白夜様もご一緒に?」
「いや、私は」
 白夜が応えようとしたところで、突如熊彦が私たちの乗っている木を揺さぶった。
「こんなところに隠れてやがったのか、半妖」
「チッ、見つかったか」
 白夜は、振り落とされないように私の腰を抱いて支えてくれた。
「おい、熊次郎! 半妖の奴、こんなところに隠れてやがるぞ!」
 その声に、熊次郎だけでなく、他の妖怪達もギロリとこちらを向いた。
 本気で振り落とされそうになったのか、白夜は私を抱いたまま地面に着地した。
「ハハハ。匂いを上手く隠していたようだが、人間の方の匂いは隠しきれなかったようだな」
 ニヤリと笑う熊彦の外見は、白夜と同じでケモ耳のついた人間だ。容姿が人間に近いのは、妖力が高い者の特徴。故に、その周りにいる鹿やイノシシの妖怪は、妖力は少ないということになる。
 話は逸れたが、熊彦と熊次郎は、角刈りにされた黒髪の隙間からチョコンと見える熊の耳が特徴で、大柄で筋肉質。そんな彼らに見下ろされれば、小動物になったように体が縮こまる。
「面倒だ。逃げるぞ」
「え……逃げる?」
 きょとんとしていると、三度目の抱っこをされた。そして、白夜は走りだした。
「おい! 待て、半妖!」
「お前ら、逃がすな!」
 熊彦と熊次郎だけでなく、他の妖怪達も束になって追いかけてきた。小さいのも含めると、数にしてざっと百はいそうだ。
 何故、白夜が逃げているのか、始めこそ不思議に思ったが、私がいるからだ。人間の、しかも山を爆破した妖怪退治屋の娘。憎いに決まっている。
「白夜様! おろして! 私のことは良いから! 白夜様まで、悪者になってしまいます!」
 大きな声で言うが、白夜は私をおろそうとはしない。
「白夜様!」
「静かにしろ。聞こえている」
「だったら……」
「こんのぉぉぉぉぉおお! 半妖が!!」
 追いついた熊次郎が、こちらに向かって拳を振り下ろした。
 白夜はそれを避けたが、地面がクレーター状に抉れた。
「うわぁ……」
 当たったら確実に死ぬレベルだ。よくこれで律らは生き残れたものだ。
「雅」
 唖然としすぎて、白夜の声に気付かなかった。もう一度名を呼ばれた。
「雅」
「あ、わ、私ですか!?」
「背に乗ってくれ」
「せ、背中ですか?」
「これでは、手がふさがって力が出せない」
 普段の白夜は、両手で妖力と霊力を交えた力を放っている。私を抱っこしていてはそれが使えないのか。
「分かりました」
 それからすぐ、白夜が隙を見て私を岩場におろした。そして、すかさず背に乗ろうとした――――ちゃんと乗ろうとしたのに、熊次郎が私たちの間に拳を入れてきたので乗り損なった。
「雅!」
「白夜様!」
 私たちは離れ離れになってしまった。
 しかし、これが私の運命なのかもしれない。助けてくれた白夜を悪者にはできない。
 私は叫んだ。
「白夜様は、何も悪くないの! 私を助けてくれただけなの! だから、仲間割れしないで!」
 皆が私の言うことを聞いてくれたのか、一瞬時が止まったように静かになった。しかし、次の瞬間、熊彦と熊次郎が薄ら笑いを浮かべた。
「は? 仲間割れ?」
「おい、嬢ちゃん。誰と誰が仲間だって?」
 その顔が怖くて、自信無げにさっきより小さな声で言った。
「白夜様と……仲間でしょ?」
「どこに穢れた血の半妖と仲良くする妖怪がいるんだよ」
「まだ人間の方が可愛げがあるってもんだ」
「え……」
 白夜を見れば、いつもの冷徹な顔のまま、両手に妖力と霊力を込めた。赤い光と青い光が混ざり合い、紫色の球が完成した。それを上空へと放つ。
「ハンッ、どこ狙ってんだよ」
「仲間になれなくてショックだってか」
 嘲笑う妖怪らを他所に、白夜は両手をパチンと合わせた。刹那、紫色の球は四方八方へと弾け飛んだ。まるで花火のようだと見惚れていると、いつの間にか白夜に抱き上げられていた。
「ゆくぞ」
「え?」
 辺りを見渡せば、熊彦ら含む妖怪達は皆、その場に倒れていた。
「え? もしかして、今のって、白夜様の攻撃ですか?」
「左様」
「白夜様は、チートですね」
「なんだそれは」
「圧倒的な能力や才能を持つ人のことです」
 それも凄いのだが、今はそれよりも――――。
「白夜様」
「なんだ? もう様子を見たいなどと言う戯言は聞きたくないぞ」
 そう、今回ここに私たちがいたのは、どうしても妖怪たちがどうなったのか気になって、白夜に様子を見に行きたいとお願いしたからなのだ。私の我儘で、白夜を辛い目に合わせてしまった。
「ごめんなさい。私のせいで嫌な思いを……白夜様への扱い、知らなくて……」
「いつものことだ。私は、妖怪からも人間からも疎まれている」
「そんな……」
 白夜は半妖故に長寿だ。既に二百年は生きていると聞いたことがある。つまり、その間ずっと一人で戦ってきたのだ。人間からは妖怪として駆逐の対象となり、妖怪からは人間の血が混じった穢れた血扱い。それを二百年以上も……。
「何故、其方(そなた)がそんな顔をする?」
「だって……」
 たったの十六年冷遇されただけで、私の心はボロボロなのに、それを二百年以上だ。考えただけで、心はパキリと折れそうだ。
 
 ——海に着いた白夜は、後ろを確認してから私を地面におろした。
「ありがとうございました」
「ん」
「白夜様は、これから何処へ?」
「さぁな」
 朝焼けで煌めくオレンジ色の海を眺める白夜。白銀の髪が潮風と共にそよぐその様は、それはもう美しかった。
「……あれ?」
 白夜の耳に着いている金色の揺れる耳飾りに見覚えがあり、私はポケットの中に手を入れた。
「白夜様のそれって……これと同じですか?」
 ポケットから自宅の鍵を取り出し、そこに付いている金色のストラップを見せた。
「って、違いますよね」
 扇のような、そうでないような……何かが欠けたような形の石。これは先日まで一緒に住んでいた祖母にもらったもの。白夜とお揃いな訳がない。
 そう思ってそれを朝日に照らしていると、白夜が驚いたように目を見開いているのに気が付いた。
「びゃ、白夜様?」
 初めて見るその顔に、私の方が驚く。
「雅。これは、どこで……?」
「えっと、祖母が……って言っても、この時代の祖母じゃなくて、先日までいた未来? の祖母に頂いたものです」
 説明に苦戦していると、白夜は自身のピアスを外し、私の持っていたそれと合わせた。
「え……」
 断面がぴったりとくっついた。色味も石の素材もマッチする。
「もう一つあったら、丸になりそうですね」
 なんて、冗談交じりに言ってみる。
「ああ。これは、元々丸だったからな」
「え!? マジですか!?」
「マジ?」
「あ、いえ。でも、どうして割れてるんですか?」
「私の父が割ったのだ」
「お父様が?」
 白夜は、波打つ海を眺めながら、伏し目がちに言った。
「この月の石は、私が生まれるよりも遥か昔、ある妖怪と人間の願いによって作られたもの」
「妖怪と人間の願い?」
「ああ、かつての妖怪と人間は――――――」
 それから、白夜は私の知り得なかった過去のことを教えてくれた。
 ――かつての妖怪と人間は、手を取り合い、仲が良かった。愛し合うほどに。
 けれど、妖怪は数百年から数千年生きるのに対し、人間は五十足らずしか生きることができなかった。そこで、妖怪は人間になりたいと願った。人間も妖怪になりたいと願った。毎晩二人は月に願い、まるで神様が聞いていたかのように、二人の前にこの月の石が現れた。
 その石には不思議な力が宿っていた。人間を妖怪にすることは出来なかったけれど、妖怪を人間にすることが出来た。満月の晩、愛し合う二人の願いを込めた時、その力が発揮される。
 それを使って、ありとあらゆる妖怪が人間となり、生涯を愛し合う二人で添い遂げるようになった。
 ある日のこと、人間が妖怪を嫌うようになった。理由は些細なこと。妖怪が、人間より強いから。
 一部の傲慢な人間は、妖怪よりも人間の方が強いと主張するようになり、弱い妖怪を滅した。そこから歯車はおかしくなった。
 彼らは、妖怪を“悪”だと提言し、その考えが世に出回った。広まるのは早く、次々に仲違いが始まった。初めこそ妖怪の方が強かったが、そこは人間。対妖怪用の武器を次々に作り出した。
 そんな中、最強と呼ばれた白夜の父である雷牙(らいが)だけは、どうしても倒すことが出来なかった。そこに、一人の見目麗しい巫女が現れた。雷牙は巫女に惹かれ、二人は愛し合う仲となり、子も産まれた。これが白夜だ。
 雷牙はかつての妖怪達のように、人間になりたいと願った。満月の晩、巫女と二人で月の石に願いを込めた。しかし、それは叶わなかった。巫女は、雷牙を愛してはいなかったから……。
 巫女は、雷牙が自分に好意を抱いていると知り、それを利用したのだ。それを知った雷牙は、怒り狂い、月の石を割った。そして、三等分になったそれを川に投げ捨てた——。

「そんなことが……」
 切ない気分になり、月の石の欠片を胸に、ギュッと握りしめる。
「でも、どうして白夜様は、この石を大事に……」
 自分で聞いて気が付いた。
「もしかして、白夜様は……人間になりたいのですか?」
 返事は無かったが、その儚げな横顔を見て、おそらくそうなのだろうと感じた。妖怪でも人間でもない彼は、どちらかになりたいのだ。
(どちらからも疎まれ続けるのは……辛い)
「白夜様、探しましょう。月の石の欠片」
「壊れてしまったものに効力は」
「そんなもの、集めてみないと分かりません」
 力強く言えば、白夜はフッと笑った。
「白夜……様?」
「集めたところで、こんな半妖を愛してくれる者などおらん」
「あ、そっか」
 大事なことを忘れていた。
 愛し合う二人の願いを込めなければ、どのみち力を発揮しないのだった。
「で、でも、いつか現れますよ! その時の為に、探しましょう! 探して、損はないですし!」
「時間の無駄だ」
 スパッと言い切らた。
 時間の無駄かもしれないが、私が亡き祖母のいる未来に行ったのは、これを回収する為だったのかもしれない。そう思わずにはいられない。
「私、家出娘なので!」
「で?」
 再び冷淡な顔で言われ、やや尻込みする。
「じ、時間はたっぷりあります。むしろ、何したら良いか分からなかったところなので、白夜様が探さずとも、私が探します!」
「ほぅ。この小さな欠片をか。死ぬまでに探し出せると良いな」
「うう……」
「諦めろ」
「諦めません!」
 ——暫くこのやり取りは続いたが、私のやるべきことは決まった。
「私は、助けて頂いた恩を必ず返しますので!」