勇の部屋である408号室ーーこのマンションには四階が存在するーーから、エレベーターホールまで数分で着いた。
例年にもれずエレベーターホールには学生のカップルや子ども連れの家族など、大勢の人間がエレベーターに乗る順番待ちをしていた。皆それぞれ色とりどりの浴衣を着ている。
優作は隣に立つ勇をちらりと見た。黒のTシャツに黒のジーンズは飾らない彼らしさがある。優作との違いは広い肩幅と、Tシャツの上からでもわかる胸筋だった。
「そういえば勇は浴衣着ないんだねぇ」
ふと思ったことを優作はのんびりした声音で言った。
幼馴染で昔から一緒にマンションの屋上から近隣の花火大会を観てきたが、勇が浴衣姿をしたことは一度もない。子犬を思わせる茶色の瞳に長い眉を穏やかに上げて、優作が真っ直ぐ勇を見つめる。
それを見下ろす形で見つめ返した勇は、その時急に身体中が熱をもち、それを誤魔化すように片手を優作に差し出しながら言った。
「今更なんだよ、浴衣は単に面倒くさいから着ないだけだ。それより人多いから逸れんなよ」
ぶっきらぼうな言い方に澄んだ黒い瞳、健康的な肌色をした差し出された大きな手。
過去も現在(いま)も、そして未来もーー
これからも勇と一緒に、隣にいるのが自分でありたいと、優作は胸に強く突き上げるのを感じ、わずかに震えだした手を、勇の掌に重ねた。
「ありがとう勇。さぁ花火見に行こうか」
自然と頬が綻び満面の笑みを浮かべる優作に、勇は「おう」と素っ気なく返事し、エレベーターの方へプイッと視線を移した。
例年にもれずエレベーターホールには学生のカップルや子ども連れの家族など、大勢の人間がエレベーターに乗る順番待ちをしていた。皆それぞれ色とりどりの浴衣を着ている。
優作は隣に立つ勇をちらりと見た。黒のTシャツに黒のジーンズは飾らない彼らしさがある。優作との違いは広い肩幅と、Tシャツの上からでもわかる胸筋だった。
「そういえば勇は浴衣着ないんだねぇ」
ふと思ったことを優作はのんびりした声音で言った。
幼馴染で昔から一緒にマンションの屋上から近隣の花火大会を観てきたが、勇が浴衣姿をしたことは一度もない。子犬を思わせる茶色の瞳に長い眉を穏やかに上げて、優作が真っ直ぐ勇を見つめる。
それを見下ろす形で見つめ返した勇は、その時急に身体中が熱をもち、それを誤魔化すように片手を優作に差し出しながら言った。
「今更なんだよ、浴衣は単に面倒くさいから着ないだけだ。それより人多いから逸れんなよ」
ぶっきらぼうな言い方に澄んだ黒い瞳、健康的な肌色をした差し出された大きな手。
過去も現在(いま)も、そして未来もーー
これからも勇と一緒に、隣にいるのが自分でありたいと、優作は胸に強く突き上げるのを感じ、わずかに震えだした手を、勇の掌に重ねた。
「ありがとう勇。さぁ花火見に行こうか」
自然と頬が綻び満面の笑みを浮かべる優作に、勇は「おう」と素っ気なく返事し、エレベーターの方へプイッと視線を移した。
