黒いセダンが幹線へ出る。
ウインカーは遅い。
だが進路変更に迷いはない。
菜々緒が先に動いた。
バイクが車列の隙間を、刃のように滑る。
「右、合流する」
インカム越しの声は短い。
マイクは即座に踏み込む。
ジャガーの直列六気筒が静かに回転を上げる。
「距離は詰めるな」
「あいよ」
村木はミラーを監視する。
「後続に白色SUV。一定距離で固定されています」
車高高め。
フロントグリル内に小型カメラ。
アンテナ基部がルーフ後方に見える。
「覆面の可能性」
「断定は?」
「七割」
黒いセダンが黄色信号を抜ける。
無理はしていない。計算された加速。
菜々緒も抜ける。
マイクは減速せず、だが強引にも出ない。
国道十七号。
物流トラックの列。
死角が増える。
「ABS域に入れるな」
「制動距離、確保しています」
菜々緒がトラック二台分を抜く。
一瞬、視界から消える。
白いSUVが並走位置へ上がる。
追い越さない。
威圧もしない。
ただ、横にいる。
「記録されています」
村木。
「だろうな」
セダンが側道へ入る。
急ではない。
だが意図的。
菜々緒が即応。
ジャガーも続く。
路面が荒れる。
継ぎ目の振動がハンドルへ伝わる。
前方に黒のミニバン。
減速。
「前方、進路を絞っています」
偶然ではない。
菜々緒が左へ抜ける。
歩道寄り、わずかな空間。
マイクは直進を選ぶ。
ミニバンのブレーキランプ。
わずかな緩み。
ジャガーが滑り込む。
接触なし。
「挟み込み未遂」
「了解」
セダンは再び十七号へ戻る。
白いSUVは追わない。
代わりに一定距離を維持。
圧だけを残す。
セダンが突然、急制動。
車列が波打つ。
ABS作動。
停止距離、ぎりぎり。
助手席側の窓が開く。
黒い物体が投げ出される。
路面に転がる。
ビニール袋。
「挙動から爆発物の可能性は低いと判断されます」
落下挙動を見て、村木が判断する。
「視線誘導だ」
菜々緒が回避。
ジャガーも続く。
袋はただ転がる。
中身は重りだけ。
その間にセダンが再加速。
前方、二百メートル。
信号が赤へ変わる。
セダンは減速しない。
横断車両が急停止。
クラクション。
「行けるか」
「理論上は可能です」
村木の声は平坦。
マイクは即断する。
「止まる」
ジャガー停止。
菜々緒だけが抜ける。
二輪の機動力。
赤を越える。
視界から消える。
十五秒。
長い。
青。
再発進。
セダンは見えない。
無線が戻る。
「ナンバー確認。前後一致」
「映像は」
「ドラレコ記録済み」
呼吸は乱れていない。
「会社登録車両。ダミー法人」
村木が即座に照合を始める。
「四時間の空白、埋まる可能性があります」
夜風が強い。
十七号の車列が流れる。
白いSUVはいつの間にかいない。
包囲は解けた。
だが、意図は明白だった。
警告。
観測。
牽制。
マイクが言う。
「顔は見えた」
村木がうなずく。
「はい」
合法の枠内で、
線の外側から圧をかけてくる。
内部監査。
四時間の空白。
組織的妨害。
偶然ではない。
正しさの裏側が、
動き出している。
夜は、まだ浅い。
ウインカーは遅い。
だが進路変更に迷いはない。
菜々緒が先に動いた。
バイクが車列の隙間を、刃のように滑る。
「右、合流する」
インカム越しの声は短い。
マイクは即座に踏み込む。
ジャガーの直列六気筒が静かに回転を上げる。
「距離は詰めるな」
「あいよ」
村木はミラーを監視する。
「後続に白色SUV。一定距離で固定されています」
車高高め。
フロントグリル内に小型カメラ。
アンテナ基部がルーフ後方に見える。
「覆面の可能性」
「断定は?」
「七割」
黒いセダンが黄色信号を抜ける。
無理はしていない。計算された加速。
菜々緒も抜ける。
マイクは減速せず、だが強引にも出ない。
国道十七号。
物流トラックの列。
死角が増える。
「ABS域に入れるな」
「制動距離、確保しています」
菜々緒がトラック二台分を抜く。
一瞬、視界から消える。
白いSUVが並走位置へ上がる。
追い越さない。
威圧もしない。
ただ、横にいる。
「記録されています」
村木。
「だろうな」
セダンが側道へ入る。
急ではない。
だが意図的。
菜々緒が即応。
ジャガーも続く。
路面が荒れる。
継ぎ目の振動がハンドルへ伝わる。
前方に黒のミニバン。
減速。
「前方、進路を絞っています」
偶然ではない。
菜々緒が左へ抜ける。
歩道寄り、わずかな空間。
マイクは直進を選ぶ。
ミニバンのブレーキランプ。
わずかな緩み。
ジャガーが滑り込む。
接触なし。
「挟み込み未遂」
「了解」
セダンは再び十七号へ戻る。
白いSUVは追わない。
代わりに一定距離を維持。
圧だけを残す。
セダンが突然、急制動。
車列が波打つ。
ABS作動。
停止距離、ぎりぎり。
助手席側の窓が開く。
黒い物体が投げ出される。
路面に転がる。
ビニール袋。
「挙動から爆発物の可能性は低いと判断されます」
落下挙動を見て、村木が判断する。
「視線誘導だ」
菜々緒が回避。
ジャガーも続く。
袋はただ転がる。
中身は重りだけ。
その間にセダンが再加速。
前方、二百メートル。
信号が赤へ変わる。
セダンは減速しない。
横断車両が急停止。
クラクション。
「行けるか」
「理論上は可能です」
村木の声は平坦。
マイクは即断する。
「止まる」
ジャガー停止。
菜々緒だけが抜ける。
二輪の機動力。
赤を越える。
視界から消える。
十五秒。
長い。
青。
再発進。
セダンは見えない。
無線が戻る。
「ナンバー確認。前後一致」
「映像は」
「ドラレコ記録済み」
呼吸は乱れていない。
「会社登録車両。ダミー法人」
村木が即座に照合を始める。
「四時間の空白、埋まる可能性があります」
夜風が強い。
十七号の車列が流れる。
白いSUVはいつの間にかいない。
包囲は解けた。
だが、意図は明白だった。
警告。
観測。
牽制。
マイクが言う。
「顔は見えた」
村木がうなずく。
「はい」
合法の枠内で、
線の外側から圧をかけてくる。
内部監査。
四時間の空白。
組織的妨害。
偶然ではない。
正しさの裏側が、
動き出している。
夜は、まだ浅い。


