そばにいたのはキミだった


思い返すと、あの目の前でラブレターを読まれた時、緊張しすぎて口から心臓が出そうだった。それを悟られないように顔を作っていたせいで、初めて話した時香夜くんを怖がらせてしまったのが心残りだ。

だけど、俺が書いた字を綺麗な字だと褒めてくれて…。今まで、下心ありきの上辺だけな褒め言葉ならたくさんかけられたけど、あんな風に心から褒められたことはなかったから。すごく胸の奥がくすぐったくなったのを覚えている。

そこから始まった、本当の交換日記の相手は俺だ。いつも香夜くんからの日記を心待ちにしていた。園原を装って書くのは結構大変だったけど、内容は全部俺のことを書いた。好きな物も苦手な教科も、趣味も音楽も…。

やりとりをしていて分かった。やっぱり香夜くんは思った通りの人だった。交換日記なんて、他の人からしたら馬鹿げた古くさいやりとりかもしれないのに。いつも一生懸命日記を書いていた姿が愛おしかった。香夜くんの正直さと誠実さと優しさが、文章からも話していても伝わってくる。

それに、一緒に昼ご飯を食べられるようになって夢みたいだったんだ。緊張しすぎて上手く喋れないかもと思ったが、2人で過ごす時間は思ったより心地いいものだった。俺の隣でちょこんと小さく座って…弁当のおかずをあげると喜んで食べてくれる姿が可愛くてもっと食べさせたくなった。

家の事情を話してくれた時は驚いたけど、そんな時まで他人を気遣う香夜くんを包み込んでしまいたいとも思ったし、香夜くんのことを深く知れて嬉しかった。俺にもたれて眠ってくれてた時間はすごく幸せで…このまま昼休みが終わってほしくないと思ってしまったくらいだ。

君は、もっと俺に興味を持ってくれる?

俺は別にモテないよ、好きな人にモテないと意味ないんだよ。
俺は君にモテたいんだよ。

伝えたいのに、まだ伝えられない。

一緒にいられて、ゲームセンターに遊びにも行けて、香夜くんが俺を呼んでくれて。お揃いのキーホルダーまでもらって…もう、ずっとこのままでもいいのかなって思ってしまいそうなくらい幸せだった。

意外に抜けてるとことか、お茶目な子供っぽい所もあるんだなって気付いて可愛くて仕方なかった。可愛いって思ったことくらいは…言ってもいいよな。そう思って口に出すと、香夜くんは顔を真っ赤にして照れていたから。俺の言葉に照れてくれるなんて、少しだけ期待してしまうよ。

香夜くん以外は興味無いし、他の奴が香夜くんに触るのは気に入らない。

俺の手の中で大事に大事に守って、ずっと一緒に居たい。寂しいことからも、辛いことからも、嫌なことからも…俺が香夜くんを守りたい。

意識して好きになってもらいたいと思っていたのに、いつの間にかそのためだけじゃなくて、香夜くんのために何でもしてあげたいと思って。女々しくて重いか?と不安になったが、一緒に食べられるように弁当を多く作って、朝用におにぎりも作っていった。最初こそ遠慮していたけど、香夜くんはいつも「美味しい」と言って喜んでくれるから。その顔が何度でも見たい。

お菓子作りはあまり得意ではないから、調理実習のカップケーキは綺麗とは言えない仕上がりになってしまった。だけど香夜くんがまた喜んでくれるかな…と考えたら何を作っていても楽しいんだ。

ある日の日記に「俺なんかのどこが好きなんですか?」
と書かれていた時は、突然で驚いた。彼なりにあれこれ考えているんだろうと思ったし、日記なら俺の気持ちをどれだけ伝えてもいい。香夜くんが引かない程度に思いの丈を書き綴った。どうか伝わってほしい、その一心で。

そして、ついにホワイトデーが迫った頃、直接返事をもらえないかと書いてしまった。覚悟してたことなのに、これ以上嘘をつくのが辛くなってしまったから。もちろんその時は、俺が教室で待っていて全て話すつもりだ。全部話したら香夜くんは怒るかもしれない。でも俺の知る香夜くんはきっと、怒ることはあっても馬鹿にしたり引いたりはしないと思ったんだ。

好きになってもらいたくて始めたことなのに、確証がないまま全部話したら、また振り出しに戻るかもしれない。でもこのまま嘘をつくよりいいと思った。文でも言葉でも話して、彼がどんな人かたくさん知ることができたから。誰よりも彼のそばにいられて幸せだったから…今度は怒られても傷付いても、ちゃんと俺の気持ちを伝えなきゃいけない。


だから…突然手を振り払われた時は、嫌われてしまったのかとすごく焦った。何か嫌なことをしてしまったのか?と頭の中で考えたが思いつかない。だけど香夜くんの焦り方を見たら、嫌いになった訳ではなくて反射的にやってしまったんじゃないかと気付いた。

香夜くんは、きっと悩んでいるんだ。交換日記のことを。

そして、勘違いじゃなければ…俺に対しても何か悩んでることがあるかもしれない。

確証はなかったが、その時から交換日記が渡されないから何かあるのではと考えていた。

そしてある日、それを園原に相談するのと近況を話すために、委員の当番がてら2人で保健室へ向かった。他の生徒の前では深い話ができないため、恋愛に関する話をする時はこうして保健室で話すことが多い。

お互い同性愛者だから、2人きりになっても励ますために肩を組んだとしても、何も思われないのが楽でよかった。

なのに、まさかそれを香夜くんに見られてるなんて…夢にも思わなかったんだ。