そばにいたのはキミだった


放課後、俺は宵衣くんをいつもの空き教室に呼び出した。だって、こんなの直接聞かないと答えが出るものじゃない。場合によっては聞きたくない話かもしれないけど…モヤモヤしたままは嫌だから。

空き教室へ先に到着して、いつも2人で日記を書いている席へ座った。やっぱり埃っぽくて空気が少し悪い。いつも先に来た宵衣くんが換気してくれてたんだな、と改めて思い知った。

「香夜くん、おまたせ」
「あ…俺も今来たとこだよ」

俺が着席してから割とすぐ宵衣くんも教室に入ってきた。「話したいことがあるから空き教室に来てほしい」としかメッセージで言っていないから、宵衣くんは不思議そうに俺を見ている。

「どうしたの?急に話したいことがあるって…」

俺は席から立って宵衣くんの方を向いた。緊張しすぎて真っ直ぐ顔を見れない。

「あ、あの…今日の昼休み、宵衣くんと園原さんが…一緒にいるとこ見たんだ」
「…え?」
「肩組んで、仲良さそうに…保健室に入って、鍵も…締めてた、よね?」

制服の裾を握りしめながら恐る恐る聞いたが、何も言葉が返ってこない。ゆっくり目線を上げて宵衣くんを見てみると、少し目線が定まらず焦っているように見えた。

「その…2人がどういう関係なのか、保健室で何してたのか聞きたくて…」
「……」
「モヤモヤしたままは、嫌だから…」
「…別にただの友達だよ。俺達、保健委員だから当番で保健室に行っただけ」

やっと宵衣くんから発された言葉は、表情と噛み合わないいつものトーンだった。だけど、心なしか普段よりも声が低く感じる。

「だったら鍵はなんで締めたの?それにいくら友達でも…あんな風に肩組んだりとか…」
「本当に香夜くんが考えてるようなことはないよ。友達でも肩は組むし…、鍵は…2人で話したいことがあったから。それだけ」

理由を話してくれたのに、なんだろう…。なんだか、本当の理由は話さずに全てはぐらかせている感じがする。今まで宵衣くんからこんな風に感じたことはないのに。

「なんか…絶対何か隠してるよね、?」

でも、別に何もないならよかったって納得させればいいのかもしれないけど。

手が震えてくる。やきもきしてた自分と、あの光景が重なって…どうして、こんなにイライラしてしまうんだろう。

「隠してないよ、それに園原が好きなのは香夜く…」
「もういい!!そんなの!」
「…っえ、」
「なんではぐらかすの?絶対何かあるはずでしょ…?」
「香夜くん、落ち着いて」
「落ち着けないよ!俺だって悩んで悩んで、たくさん考えてるのに!」

俺は何に怒っているんだろう。

実は告白自体が嘘だった場合?
2人が実は付き合っていた場合?
あの交換日記が嘘だった場合?

「香夜くん…」

気持ちが決壊して溢れたみたいに止まらない。

「交換日記も楽しくて、でも宵衣くんのことも頭から離れなくて…!返事どうしようって、俺本当はどっちのことを好きなんだろうって…!悩んでたのに!!」
「…え?」

ハッと気付いた時には遅かった。大きな声で口走ってしまったことを、数秒遅れて理解した。

今、俺何を言ってしまったんだ…。

「…え、今、なんて?」
「……っあ、」

俺の言葉を聞いて、目を大きくして呆然としている宵衣くん。少しの静寂の後、ゆっくり足を進めて俺に近づいてきた。

俺は自分が発してしまった言葉が信じられなくて、ただ突っ立っていることしかできない。

「ねえ香夜くん。今の、本当なの…?」
「…っち、ちが!い、今言ったのは、」
「俺のこと、頭から離れないって…」
「いやっ、だから…っ!っ!?」

一瞬、何が起きたのか理解出来なかった。

俺の顔を上に向かせるように、頬に添えられた宵衣くんの温かい手。

そして…

唇に感じる、初めての柔らかい感触。

「…っ!?」

え、これ、なに?

なんで…。

宵衣くんの、唇が当たってる…?