そばにいたのはキミだった



「…小坂くんありがとう」
「えー?いいよいいよ全然!力になれた?」
「うん。聞いてもらえてよかった」

まだ不確かなことはあるけど、やっと少し腑に落ちた感じがする。小坂くんの考えに自分の気持ちが共感したんだろう。

「あ!!やべ!鬼が来た」
「鬼?」
「柊奈瀬みっけーーー!!!」
「俺逃げるわ!!じゃあまたな、香夜!また恋バナしような!!」
「あっうん、ありがとう!」

そうだった、鬼ごっこの途中なんだった。小坂くんは勢いよく登場した男子生徒から逃げるように、そそくさと素早く走って行った。

ていうか、学校の中であんなに走り回ってたら風紀委員に怒られそうだけど…楽しそうだからいいか。

「…俺いつから宵衣くんを意識してたんだろう」

テストや試験と違って、こうやって思ったら「好き」こう思う以下だったら「好きじゃない」とか規定がないから難しい。恋愛ってこんなに大変なものだったんだ。軽々しく彼女ほしい〜とか嘆いてた自分が恥ずかしい…。

日記を読み返してから、残ってたパンとおにぎりを食べて中庭を出た。まだ返事を書けていないけど、教室に戻って考えよう。こういうの焦って書いちゃダメな気がする。

「いっ…あれ?指が切れてる。いつの間に…」

チクッとした痛みに気付き指を見ると、人差し指が斜めに細く切れていた。さっき日記をパラパラ読んでいた時に切ったんだろうか。日記に集中していたからか全然気付かなかった。

まだ昼休みの時間はあるし、教室に戻るのを一旦やめて保健室へ行って絆創膏をもらおう。自分のクラスと反対方向まで行き、階段を降りて隣の校舎へと入った。こっちの校舎は移動教室に来るか保健室に来る生徒しかいないから、昼休みでも割と静かだ。

「あ、話し声が聞こえる…誰か先に来たのかな」

そして、保健室へ続く曲がり角を曲がった時だった。

「……あれ?」

少し離れた先を男女2人が仲良さげに喋って肩を寄せ合いながら歩いている。

「…っ!!」

自分以外にも他の生徒が保健室に用があった、だけなら別に咄嗟に隠れる必要はなかったけど。

俺が今隠れてしまったのは、仕方のないことだと思う。

だって…

その男女2人が、宵衣くんと園原さんだったから。

「…あの2人が一緒にいるとこ初めて見た」

俺は咄嗟に隠れた後、壁から顔を覗いて2人を目で追った。すると2人は保健室へと入って行き、その後ガチャリと鍵を締めた音が聞こえてきた。

焦りながらも足音を立てないように走り、保健室の扉の前まで行くと『先生不在』の札が掛けられている。

「え…どういうこと?なんで鍵…」

心臓がバクバク音を立てている。確かに、この中に入って行ったのは宵衣くんと園原さんだった。2人っきりで保健室に入って、先生もいなくて…この中で何をやっているんだ?

俺はいたたまれなくなって、すぐにその場を離れて走って教室へと戻った。今見た光景が信じられなくて、信じたくなくて…。

楽しそうに話してた。宵衣くんが、心を許してそうな無邪気な顔で笑ってた。園原さんが宵衣くんの肩に手を回していた。

今まで、宵衣くんがクラスの人といるのを見かけたどの時とも違う。あれは、俺によく見せてくれていた笑顔だ。

どうして…?