「おはよー香夜…って、お前大丈夫?」
「おはよ…ちょっと寝不足」
昨日の夜、全然眠れなかった。日記を書かなきゃと思うと余計に…自分の宵衣くんに対しての行動も、どうしてなのか分からなくて。
それに1つ気付いたことがある。
このまま園原さんの告白をOKして付き合うことになったら、もう交換日記はしないし宵衣くんが中間役をしなくてよくなるんだってこと。
そしたら、きっと今より一緒に過ごす時間が減る。きっとというか、たぶん当たり前に。友達になれたとは思うからたまに会ったりはできるはずだが、違うクラスだし今ほどではなくなるだろう。
それを考えると、日記を書く手が進まなくなった。
結局書き終えることができなかったし。いつもの流れだと今日も昼休みに宵衣くんと一緒にご飯食べてその時に日記を渡す流れだ。でも、そもそも日記が書けていないし今日会ってもなんとなく普段通りにできない思う。
LINEで断りを入れておこう…。昨日手を払ってしまったことも改めて謝らないと。
「大丈夫かよ、クマできてるぞ」
「大丈夫だよー。授業中寝るかもだけど」
「ダメじゃん」
以前、手紙の返事が気になって眠れなかった時とは違う。あの時は遠足前の子供みたいにウキウキしてた。だけど今は、自分の考えがまとまらなくて本心も分からなくてずっとぐるぐるしてる感覚。気持ち悪い。
朝のHRが始まる前に少しだけ寝ておこうと、机に突っ伏して窓の方を向いた。今日はいい天気だし、屋上で宵衣くんと一緒にご飯を食べたら心地いいだろうな…なんて考えてしまっている。それよりも園原さんへの返事をしないといけないのに…。
突っ伏しながら、ひとまず宵衣くんへメッセージを送ることにした。【昨日は手を払ってごめん。カップケーキ美味しかったよ。まだ日記が書けてないから今日のお昼は一人で食べます】と送信した。
昼休みになったらご飯を食べつつ、静かな所で続きを書こう。中庭とか良さそうだ。
ヴーーヴーー
すぐに宵衣くんから返信が来た。【大丈夫だよ、分かった。書けたら連絡して】と書いてあった。
「はぁ…どうしたいんだ、俺は」
ほとんど声にならない声で呟くと、横で携帯をいじっていた慧人に「何が?」と問いかけられた。眠くて頭が働いていないせいか、今まで誰かに相談するのを躊躇していたのに今とても話したくて仕方ない。
「あのさ…男相手にドキドキしたことある?」
「ん、え?は…?ドキドキってどういう?発作?」
「んー…、優しくされて嬉しいとか、会えなくなったら寂しいかも、とか。触られたらドキドキする…とかのドキドキ」
俺の言葉を聞いて、慧人はあんぐり口を開けて固まっている。やはり変な質問だったか…と話したことを少し後悔したが、言葉にするだけで案外気持ちが軽くなるものだった。
「いや…俺はさすがにないけど。彼女いるし。でも…まぁそういう奴もいるんじゃね?」
「そういう奴…?」
「だから、男が男を好きとか女が女を好きって奴もいるだろ。知り合いから聞いたことあるし…そこら中にいるらしいし。てか、なにお前の話?園原って女子と付き合うんじゃなかったの?」
「…それもそうなんだけどね。ちょっと恋愛経験なさすぎて行き詰まってただけ」
意外な返答だった。てっきり気持ち悪がられるかと思ったけど、慧人は気まずそうにしながらも言葉を選んで話してくれたようだ。
そうか、そこら中にそういう奴もいるんだ。
じゃあ宵衣くんに対してドキドキしたりするのはおかしくはないのかな。でも、だったらなんで昨日は触られてドキドキするどころか怖かったんだろう?
「ありがと、慧人。話したらちょっとスッキリした」
「…ああ、ならよかったけど」
笑顔でお礼を言った俺を見て、慧人はそれ以上追求してこなかった。かなり気になっているような顔をしているけど、慧人はそういう良い奴だ。こちらが話さないことはズカズカ入り込んでこない部分がある。
それに慧人が聞いてくれたおかげで納得できた気持ちもあって、頭の中でぐるぐる絡まっていたものが少し繋がった気がした。
でも、だとしたら…俺は園原さんのことはどうするんだろう。
交換日記をしていて、確かに楽しかった。間違いなく心が揺れていたはず。
もしかして、俺は恋愛に対してクズ野郎なのか…?
一気に2人のことが気になってるってこと…?
