今日の日記は、返事を書くのにだいぶ時間がかかっていた。これだけ想ってくれていることにどう返事をしたらいいか、言葉を綴るのを難しく感じていたから。
それに、もう1つ自分の中で気になることがある。
園原さんの気持ちが嬉しいはずなのに、宵衣くんの顔が思い浮かぶ。思い浮かぶだけならまだしも、なぜか気持ちが動いていることを申し訳なく感じていた。
どうして、2つの気持ちがせめぎ合っているんだろう…。
告白してくれたのは園原さんで、宵衣くんは友達で…俺達の受け渡しをしてくれているだけ。なのにどうして、申し訳なさなんて感じているんだ。
「はぁ…分からない」
幸いにも明日から土日に入るし、月曜日に日記を渡せばいいからまだ時間はある。もう少し考えてみよう。考えて答えが出るものじゃないかもしれないけど…。
コンコンコンッ
日記を閉じて突っ伏した時、部屋の扉を叩く音がした。
「はい!」
返事をすると扉が開いて、仕事から帰ってきたらしい父さんが立っていた。
「あ、おかえり…ごめん。気付かなくて」
「別にいい。飯は食ったか?」
「さっき食べた。キッチンに牛丼の具があるから今ご飯にかけて…」
「そうか、ありがとう。自分でやるから大丈夫だ。先に風呂入っておけよ」
「分かった」
会話を終えると父さんは扉を閉めて、1階へ降りていった。男親との会話なんてこんなものだ。父さんはあまり多く喋らないタイプで、昔から静かな方だった。俺のうるささは、どちらかと言うと母さん譲りなのかもしれない。
そういえば顔も、目元が特に母さん似だと言われることがあったな。もう何年も会っていないから、記憶の中で色濃くはないけど。
「…笑うと垂れた目元、か」
なんだか最近、よく母さんを思い出す瞬間が多い気がする。宵衣くんといる時や今日の日記を読んだ時。
昔は、もう会うことができない母さんを思い浮かべるといい思い出も悪い思い出もどちらも辛かった。でも、今は思い出しても辛くない。
なんだか…誰かがそばに寄り添ってくれている感覚がするからかな。
でも、誰かって誰だ?
どうしてだろう、当てはまる人が頭に2人思い浮かんでいた。
