それから、授業を受けながらも頭のどこかでずっと考えていた。宵衣くんは、さっきなんで園原さんがいるのにいないと答えたのか…。見えてない訳じゃなさそうだったし…。
だが、どれだけ考えても答えが出るものじゃない。
分からなさすぎる。
「…やっぱり見えてなかっただけかもな!うんうん」
そうやって納得させないと、ずっとこのことを考えてしまいそうだった。
ヴーーヴーー
あれこれ考えていたら宵衣くんからメッセージが届いた。【交換日記、今日中にもらうから放課後いつも通り渡すね】とだけ書かれていてさっきのことには触れていない。
気にしすぎ…?きっとそうだよな。
「おい、香夜」
「ん?あ、慧人…なに?」
「お前ボーッとしすぎ。次移動だぞ」
「あ、ありがとう」
今頃、園原さんは俺が書いた日記を読んでるのかな…といつも考えていたし、今日はやっと本人の姿を見られたのに。
あの女の子が俺の日記を読んでくれている姿がまるで想像できない…。
「なんだよ、やっと告白してくれた子が分かったのに嬉しねーの?」
「いや…嬉しいんだけど…なんか悶々とするっていうか」
「はぁ?てか朝今沢くんとぶつかってたよな?あの時、なんか話したの?」
「ん一…」
さっきのこと話しても、分からないことだらけで悩ませるだけだし言わないでおくか…。
「香夜がぶつかった時、俺たまたま見たんだけどさ、今沢くんってあんな風なんだな」
「あんな風って?」
「え?なんか、うーん…お前がぶつかった時すごい物腰柔らかいっていうか…めっちゃ優しい顔してたから」
「ぅえ?そ、そんなにか?いつもあんな感じだけど…」
「へぇーやっぱ噂と違うな」
俺と話してる時の宵衣くんって、そんな驚かれるほど珍しい感じなの…?
確かに、気怠そうな雰囲気はあるけどいつも優しいし…一緒にいると、なんか自分が女子側の気分になる時がある。
「はっ!いやいや、それはさすがに気の所為!!」
「ん?なにが?」
「な、なんでもない」
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そして、あっという間に放課後になった。
なぜか少し緊張しながらもいつもの空き教室の前に到着し、扉の隙間から中を覗いてみた。しかし、そこには誰もいない。
「あれ?珍しい、まだ来てないんだ…」
いつも俺より先に来てたのに。
いないなんて珍し…「香夜くん」
「…うわぁ!!!」
突然耳元で名前を呼ばれ、驚いて飛び退いてしまった。そこには首を傾げて笑っている宵衣くんがいた。
「び、びっくりした…!驚かせるなよ!」
「ごめんごめん。びっくりさせたくてさ」
宵衣くんはイタズラが成功した子供みたいに笑いながら教室へ入って行く。俺も続いて入るけど、至近距離で囁かれた耳が熱くて仕方ない。
パタパタと顔を手で仰ぎながら、いつもの席に座った。なんでこんな暑くなってんだ自分…。
「はいこれ。交換日記」
「あ、ありがとう…」
「…今日の朝さ、もしかして園原に会いに来てたの?」
「えっ?あ、えーっと…うん。会ったっていうか、教室の外から見ただけだけど…」
てっきり、今日はその話題に触れると思わなかったからドキマギしてしまう。宵衣くんは「そっか」と言うと、頬杖をついて窓の外を遠い目で眺めて口を閉じた。
教室に園原さんはいたのに、なんでいないって言ったの?なんて聞ける雰囲気ではない気がした。
仲良くなれたとは思ってたけど…何を考えてるかイマイチ分からないな…。
俺は日記を開いて今日のページに目をやった。好きなアニメの話とガチャガチャの話に返事をくれている。好きなキャラが俺と同じなことと、今日学校であったことも書いてあった。
相変わらず綺麗な字だけど、それだけじゃない。言葉遣いや文面がいつも柔らかくて温かく感じる。
今日姿を見ることかできたからか、この日記を書いている手元が頭の中に浮かんできた。だけど、手元から上はどう頑張っても想像できない。モヤがかかってて、人の影がこの日記を書いている情景だけが浮かぶ。
どうしてだろう…。
