そばにいたのはキミだった



突然いてもたってもいられなくなった。なんでだろう、2人のことを想像したら気になって仕方ない。

今まで園原さんの姿を見られなくても納得してたのに。

E組まで慧人を引き連れてきて、扉の傍から中の様子を伺った。

茶髪ロングヘアの女子は数人いるが、宵衣くんの姿がないから誰が園原さんかは分からない。いや、もし宵衣くんと一緒にいたら俺はどうしてたんだろう。話しかけられていたのか?見つけた瞬間引き返していたのではないか…。

「おい、どの人か分かるのか?」
「…分からない」
「中入って聞いてみればいいじゃん」
「無理無理!何言ってんの!」
「はぁー、ったく。分かったよ。誰かに聞けばいいんだろ?」

そう言って、慧人が扉の近くにいたE組の男子に声をかけてくれた。その人に園原さんがどの人か聞くと、1番奥の窓際で女友達と喋っている人を指さした。

「あそこにいる奴だよ」
「おーありがとありがと!」

あ、あの人が園原さん…!
ついに見つけた、交換日記の相手…!俺に告白してくれた人…!

「分かった?香夜」
「う、うん…ありがとう。お陰で誰か分かったよ」

園原さんと分かった女子生徒はストレートのロングヘアを耳にかけていて、窓にもたれて楽しそうに友達と話している。雰囲気も見た目も明るい子って感じだ。

あの人と交換日記をしているなんて、実感が湧かない…なんだか現実じゃないみたいに思える。それに、あんなモテそうな人がなんで俺なんかのことを…?

「えー可愛い人じゃん。やっぱ話しかけねーの?」
「は、話しかけるのはまだ無理だな…」
「そっか?なら教室戻ろうぜー。HR始まるし」
「うん…そうだな」

どんな人か分かったのに、なんでスッキリしないんだろう…。あまりに実感がないからかな。

なんで…どの子が知れて嬉しいはずなのに、それよりも宵衣くんと園原さんが親しくしてる所を想像してしまうんだろう。

「おーい、俺先行っちゃうぞ」
「待って、俺も今行く!」
「あ、前見ろ前…」

ドン!!!

「わっ…!」

下を向いて振り返ったせいで、誰にぶつかってしまった。よろけてしまったが何とか持ちこたえた。

「ごめんなさ…!!」
「…香夜くん」
「わっ!?よ、宵衣くん…」

ぶつかったのは、今登校してきたらしい宵衣くんだった。肩からかけている鞄には、昨日お揃いにしたキーホルダーが揺れている。

「おはよ。またうちのクラスきてたの?」
「あー…おはよ。えっと、なんか無性につい気になって園原さんを見に来ちゃって…」

しどろもどろになりながら話すと、さっきまで嬉しそうな顔をしていた宵衣くんから「あー…」とその表情が消え去った。

そして中をチラッと見て

「今いないみたい」

と、微笑みながら答えた。

「え……??」

いないって?

さっき慧人が聞いてくれたし、E組の人が教えてくれたから間違ってないはずなのに。あの窓際にいる女の子が園原さんなんじゃないの?

意味が分からずポカンとしていると、ついに予鈴が鳴ってしまった。

「香夜!もう行くぞ!まじ遅れる!」
「あっ、うん…。ごめん宵衣くん、また…!」

慌てて走り出すと、宵衣くんは何も言わずに教室へ入って行ったようだった。

どういうこと…?

いないって、嘘ついたってことか…?