そばにいたのはキミだった



元の宵衣くんに戻ってる…。さっきは別人みたいに怖かったけど…。

「あいつら…南校の生徒だね。問題児が多いとこ。最近は治安悪くなったせいで、こっちまでよくああいう奴ら来てるって聞くよ」
「そうなんだ…。確かにヤンキーだったもんな…」
「だから俺も一緒に行くって言ったのに…。香夜くんは1人にしておけないね?」
「うっ…、確かに絡まれて身動きとれなかったし何も言えない」
「いいんだよ別に。俺といる時は守ってあげられるから」
「…なんて?俺を?」

サラッと今何を言ったんだ…。

「だから、俺が香夜くんを守るよって言ったんだよ」
「……え、」

宵衣くんのその一言で、突然記憶の中にいた言葉たちが頭の中でフラッシュバックした。


“香夜…あなたがお母さんを守ってね。できるわよね?”
“メソメソしてどうするの?そんなに弱くてお母さんのこと守れるの?”

そうだ…あれは小さい頃からよく言われていたんだ。今はもう出て行ってしまった母親に。

昔から父さんと上手くいっていなかったせいか、母は俺によく言って聞かせていた。強くなって自分を守れ、と。俺にだけは絶対的な味方でいてほしかったんだと思う。

そのせいか、俺が怪我をしても風邪で辛くて泣いていても、寂しいと言っても…優しく撫でて抱きしめてくれるようなことは、記憶の限りでは無いに等しい。その代わり、「そんなことで私を守れるのか、情けない」と口癖のように言われていた。

「守って」とは言われても「守るよ」なんて言われたことがなかった。そう実感したこともない。


あんなこと言ってくれたの…初めてだ。本当に守ってくれたのも。

「香夜くん?どうしたの?」
「…っあ!ううん、何でもない!カッコイイこと言われたからびっくりしちゃって〜!俺も真似しようかな〜ははは…」

無理にヘラヘラして見せたが、それに気付いたのか宵衣くんは俺の頭をポンポンと軽く撫でた。

「…っな、なに?」
「ちょっと元気なさそうに見えたから」
「そんなことないよ!全然元気!」
「無理しなくていいよ」
「…え、」
「香夜くんのこと、もっと知りたいし思ってることも考えてることも全部教えてほしい」

そんな真っ直ぐな表情で、なんでそんなことを…。
他の男友達とは違う…この空気感はなんだ…?

「さすがに…男相手でもそんなこと言われたら、ちょっと恥ずかしいっていうか…」
「えっ照れてるの?」
「はぃ!?照れてないし!」
「うそだ、ちょっと顔赤いよ。見せて」
「覗き込むなぁ!て、照れてない!」
「あっちょっと待ってよ」

居心地がよかったり、落ち着かなかったり…意外な顔を見て焦ったり。宵衣くんといる時は感情がいつもより忙しい気がする。

仲良くなってきたからかな…?
なんでこんなにホッとするんだろう。