そばにいたのはキミだった



その集団が俺の真後ろに来たことがわかる。ガヤガヤしたゲーセンの音に負けないくらいの五月蝿さだ。きっと自販機を使いたいのだろうと、俺は急いでお茶を1本買った。

「!!うわっ」

そして下からペットボトルを取り出した瞬間、ドカッ!と肩に重みを感じた。びっくりして振り向くと、アクセサリーを大量に身につけ、更に唇にピアスをつけた金髪の男子高校生が俺に肩を組んできているようだった。

だ、だれ!??

「やっほ〜、お兄さーんどこ高?」
「えっ」
「あ、その制服すぐそこの〇〇高校でしょー?」
「お兄さん何年せー?うわってか真面目そ〜!ウケんだけど!」

治安の悪そうな雰囲気の男女が2人ずつ、合計4人に俺はなぜか絡まれてしまったようだ。全員派手な髪色で制服は着ているがもはや原型がない。

そういえば、このゲーセン高校生の溜まり場になりつつあるって聞いたような…。前よりも治安が悪くなっているのかもしれない。

「あ、ごめんなさい…先どうぞ」

腕を解いて後ずさりしようとしたが、グイッと掴まれたまま動けない。全員がそれぞれつけているであろうキツイ香水の匂いが鼻をつんざいてくる。

「待って待って〜お兄さんお金持ってる?俺らと一緒に遊ぼーぜ」
「ウケるー!誘ってんじゃん、ナンパじゃんナンパ!」
「い、いや持ってないし、連れを待たせてるので…」
「えー!冷たいこと言わないでウチらと遊ぼーよぉ」

今まで無縁だった人達に激しく絡まれてしまって為す術がない…。これ以上どうすればいいのだろう…。話が通じそうにないし、振り切って逃げるか?

でも肩を組んできている男子の力が強くてなかなか腕を振りほどけない。

「痛っ!離してください!あの、本当に俺は行かないですから…!」
「はい行こ行こー!女の子もいるし楽しいって〜!」

この人達しつこすぎる!早く逃げなきゃ…。

「香夜くん」
「…!あ、よ、宵衣くん」

その時、俺を呼ぶ低い声が聞こえた。
パッと顔を向けると宵衣くんがこちらに歩いてきているところだった。

「遅いから気になって来たよ。ほら、早く行こ」

周りの男女グループが見えていないかのように、俺にだけにこやかに話しかけて腕を掴んで引っ張っている。

「は?おいおい、今その子は俺達と遊びに行くところだったんですけど〜」
「そーだよ、邪魔すんなテメェ。それかお前の方が金持ってんのか?」

案の定、男2人は宵衣くんの肩を掴んで威圧的な言葉をかける。俺は解放されたが、逆に宵衣くんが絡まれてしまった。

やばい、俺のせいで危ない目に遭ってしまう…!

「ちょ、この人は…!」
「聞いてんのか?おい、黙ってんじゃねぇよ。お前も同じ高校だろ?」
「え、待って。てかめっちゃイケメンじゃない?」
「やばいやばい!マジだ!イケメン!」

しかも女子2人は宵衣くんにメロメロになっているようで、それが面白くないのか男子生徒はついに宵衣くんの胸ぐらを掴んだ。

「うわ!よ、宵衣くん!」
「てめぇ、調子乗ってんじゃねぇ……!」
「……離せよ」
「あ?」
「…汚ぇんだよ。離せつってんだろ」
「うっ、ぐっ…!」

しかし、俺の焦りもつかの間。

宵衣くんは男子生徒の手を凄い勢いで一瞬で払い、胸ぐらを掴み返した。前髪で見えづらいが、凄まじい眼圧で見下すように睨んでいるのが分かる。

うそ、す、すごい迫力…!

「くっ…離せ!!!」
「俺がこの子と遊んでんだよ。邪魔すんな、消えろ」
「……クソが!!チッあーうぜえな!!お前ら行くぞ」
「えー?もう行っちゃうの?ダサー」
「うるせぇな!!さっさと来い!」

男子2人は宵衣くんの迫力に怯んでいるようだ。手を払うと、先に歩き出して行ってしまった。

あんなにしつこかった人達を一瞬で…!やっぱりすごい!

「あのぉー、よかったらインスタかライン教えてもらえませーん?」
「えーずる!ウチも教えてほしいし!」

うわ、今度は女子達に絡まれている…!
どうしよう、絶対ギャルだし怖すぎるし…!

「……うるさ、さっさと消えろよ」
「は!??なんなんだよ、テメェ…」
「あ?」
「ひっ…!」

だけど宵衣くんは変わらず怯むことなく、むしろさっきよりも鋭い眼光で女子達を睨みつけた。

それは知り合ってから初めて見る顔で、俺でもひゅっと肩が縮こまったほどだ。

「ヤバいってこいつ…行こ行こ!」
「ちょっと待ってよ〜!」

す、すごい…。

俺があんなに苦戦していた人達を、いとも簡単に撃退してしまった…!しかも言葉を発しただけで!

「香夜くん、大丈夫?」
「え!あ、うん…!あ、ありがとう。助けてくれて…」