そばにいたのはキミだった


「そ、そんな笑わなくても…」

少し拗ねたように口をつぐんだ俺を見て、宵衣くんは笑いながら自分もカバンから財布を取り出した。そして小銭を機械に投入してレバーを回す。

ガタン!と音を立てて飛び出たカプセルを軽く開けて、中身を取り出した。その中身を見て、目が飛び出しそうな勢いで声を上げてしまった。

「…あ、あ!」
「お!香夜くん、これでしょ?」
「うわー!!本当に出た!すごい!!」

宵衣くんの手にあるのは、まさに俺の推しキャラキーホルダーだった。2頭身のむちむち感を盾にして剣を高々に掲げている。

「はい、これあげる」
「え!?で、でも宵衣くんが引き当てたのに!」
「香夜くんが欲しそうだったからやったんだよ。好きなキャラでしょ?もらって?」

いいのかな…と思い迷っていると強引にキーホルダーを握らされた。でも正直、推しが手に入るのはめちゃくちゃ嬉しい。

「ありがとう…!すげー嬉しい!!」
「…ほんと?ならよかった」
「あ!!そうだ…」

俺はさっきゲットしたキーホルダーを取り出し、被りキャラを1人ずつ組み合わせた。そしてそれを宵衣くんへ差し出す。

「はいこれ!お礼と言っちゃなんだけど…被ったし1セットあげる」
「……え?俺に?」
「うん、あ!推しキャラじゃないからいらない…?」
「ううん!欲しい!」

宵衣くんはキーホルダーを2つ受け取ってぶら下げながらじっと見つめた。その表情は笑みが勝手に溢れ出ているというか…すごく嬉しそうだった。

そんなに嬉しいなら、あげてよかった。俺だけもらうのは申し訳ないし。

「これ、お揃いだね」
「…あ!!本当だ!俺とお揃いって、い、いやじゃなかった?」
「全然、むしろ嬉しいよ。ありがとう」

お揃い…という言葉に恥ずかしさとむず痒さを感じる。今まで友達とお揃いを意図して持ったことがなかったから。
いや、今回も意図せずそうなっただけだが「お揃い」と口に出して言われるとなんとなく意識してしまう。

「よ、よーし!鞄につけちゃおう!被ったやつと推しキャラ!」

いそいそと鞄を下ろしてキーホルダーをつけ始めると、宵衣くんも俺があげたキーホルダーを自分の鞄に付け始めた。

「え!宵衣くんも、鞄にそういうのつけるんだ…」
「はは、どういうイメージ?俺もよくキャラクターもの身につけるよ」
「へぇ…!そうなんだ、なんか意外!」

宵衣くんはチャリ…と揺らしながら、鞄につけたキーホルダーを俺の鞄にくっつけた。

「お揃い嬉しい」

その前髪がかかった笑顔が甘すぎて、男の俺でも目を逸らしそうになる。というか逸らした。

「ははは…よ、よかった!!あ!俺ちょっと自販機行ってくる!!」
「あ、俺も一緒に…」
「2人分買ってくるから大丈夫!待ってて!」

慌ただしくその場を離れて自販機まで小走りで向かった。照れてることがバレてしまうのが恥ずかしかったんだ。

「くそー…、イケメンから術を学ぶどころじゃない…。破壊力があるからダメだ!参考になんてできないよぉ」

でも、あんな表情を見せてくれるなんて…初めて話した時は思いもしなかった。それだけ打ち解けてくれたってことかな。この耐性無さすぎてすぐ照れる自分をどうにかしたい感もあるが…。

「えーっと、早く買って戻ろう。お茶でいいかな」

そして気分を切り替えて飲み物を買おうと財布を取り出す。

その時だった。

「ねーマジ?ありえなーい!やばぁ」
「マジだって!ウケる〜」

うるさい音量でワイワイしている男女の集団が、こちらに近付いてきていた。