そばにいたのはキミだった




「やっぱりもう来てる…あれ?」

放課後、空き教室に来るとやはり宵衣くんは既に椅子に座っていた。だけどいつもと違う。

机に突っ伏して寝てしまっているようだ。

そーっと抜き足差し足忍び足で中へ入り、顔を向けている方に回ってみる。

「すごい寝てる…」

いつもの気だるげで大人っぽい雰囲気とは違って、すやすや眠っている宵衣くんは子供みたいだ。整ってることに変わりはないけど、気持ちよさそうな寝顔は幼さを感じる。

俺はゆっくり目の前の椅子に座り、その様子をじーっと眺めた。

「爆睡じゃん…髪の毛、サラサラだけどふわふわだな…。元々くせ毛なのかな」

なんだろう。最近知り合ったばかりの人なのに、もうこんなに近くにいる。無防備な寝顔まで見てしまっている。なんか…不思議な感じだ。

「…柔らかい」

ぼーっと見ていたら、無意識のうちに手が宵衣くんの髪の毛を撫でていた。

「はっ!俺は何してんだ…!」
「…ん、あれ?」
「うわっっ!!お、おはよ!!」
「ごめん。俺寝ちゃってたみたい…」

手を引っ込めた瞬間、宵衣くんは目を覚ました。危なかった、撫でていたのがバレるところだった。つい手が伸びただけだが、寝ているところを撫でるなんて…きっと変態扱いされてしまう!

「あっ俺も今来たとこだから大丈夫!起こしたら悪いかなーと思ってただけだから!」
「香夜くんなんか慌ててる?どうしたの?」
「え!?ど、どうもしてないよ!!」

明らかに挙動不審な俺を見てクスッと微笑んだ宵衣くん。何となくだけど…今日たまたま見た、友達と歩いてた時の笑顔とは少し違う気がした。

「はいこれ。日記もらってきたよ」
「わ!!ありがとう…あのさ、いつも授業終わった後残るの面倒じゃない?」
「全然。部活もやってないし、バイトまで結構時間あるしちょうどいいよ」
「そ、そっか…よかった。てかバイトやってるんだ。なんのバイト?」
「駅前の居酒屋だよ」

雑談しながらも日記を貰ってパラパラとページをめくった。寝起きなせいか、宵衣くんの声は少し掠れている。

「…えっ、わぁ!園原さんもバイトやってるんだ!」
「ああ、うん。そういえば、そのこと書くって言ってた」
「へぇ、そうなんだ…」

園原さんも俺と同じように、宵衣くんに何書くか相談してるんだな…。

「…ん?どうしたの?」
「あ!い、いや…宵衣くんと園原さんって仲良い、んだよね…?中学が一緒とか?」
「ああ…そうだよ。小中が一緒なんだ」
「へぇ…」

だから女子に冷たいのに、園原さんに対しては恋愛ごとを頼まれるくらい仲良いんだ。

「あっ…、でも心配しないで。昔からの仲だからお互いなんとも思ってないし。園原は香夜くんが好きなんだから」
「あ、うん…!そうだな!」

別にその心配はしていないような…。じゃあなんで、俺はわざわざ聞いたんだろう…。