2人は暫く睨み合っていたものの、ほぼ同時にため息を吐きながら項垂れた。
どう罵ってみたところで、何も解決しないのだ。
大道寺は自分に愛の言葉を囁いていたモノが、漆黒の相貌をした女性の霊だと知った。それは、明らかかに末期の悪霊の姿だった。「愛している」は間違いなく「一緒に、あの世に行こう」という誘い文句だ。現状は他人事だが、元に戻れば即座に解決しなければ死活問題になるだろう。
小金井にしても同じ状況だった。人間と違い、小金井にとって霊はそこにいるだけで静かな存在だ。近寄って来る女性は例外無く姦しい。自分の気を引こうとして喋り続けている。しかし、あの女性の霊だけは側にいても静かで慎ましい。それならば、常に隣に立っていたとしても門際はない―――そう思っていたのに。笑顔で「殺してやる」と呟いていただなんて、全く笑えない。
2人はほぼ同時に顔を上げ、今度は見詰め合う。
そこには、共通の認識が芽吹いていた。
入れ替わりが解消されても、されなくても、コレだけは解決しなければならない、と。
そして、ついでにもう1つ問題があった。
「聞いてみるんだけど、小金井って成績は良いんだったかな?」
目の前の大道寺に、小金井の中にいる大道寺本人が問い掛ける。大道寺は入学して以降、全てのテストでほぼ満点を叩き出してきた秀才である。大道寺のプライドとして、それを途絶えさせる訳にはいかなかった。
「オレ? 中の中くらいだけど・・・ああ、来月に期末テストがあるのか!!大道寺は確か、絶対王者だったな。悪いな、間違いなく陥落だな」
「だよねえ・・・でも、それは困るな」
「おい、だよねえ、とか言うな」
その言葉を聞いて少しだけ不機嫌そうな表情を見せる。
それでも、小金井は大道寺の肩に手を乗せて力強く言い放った。
「期末テストまでに全部解決すればいいんだろ? 大丈夫だ、何とかなる。まだ1ヶ月以上あるんだぜ?2人で力を合わせれば絶対にどうにかなる。オレ達は孤高の2人とか呼ばれているだぞ!!」
言い切る小金井に感心したように大道寺が頷いた。
「おお、確かにそうだよね。何か、どうにかなりそうな気がしてきたよ」
「順番は、オレの身体に憑いてるソイツの除霊からな」
「・・・キミにはガッカリだよ。ボクの感動を返せ!!」
少し話しは逸れれたが、ひとまず共闘するということに落ち着いた。1人より2人の方が良いのは間違いなかったからだ。しかも、2人は不足している部分を補える相手なのだ。
「ズボンのポケットにイヤホンが入ってると思うんだけど」
そう大道寺に告げられ、小金井がポケットを探すと言われた通りイヤホンが入っていた。
「それはさ、音楽を聴くためのものというよりは、ノイズキャンセラーとして使っていたんだ。授業中はダメだけど、それ以外はずっと使っていればいいよ。そうすれば、その辺りにいる低級霊の声は聞こえなくなるから」
「おお、なるほどな」
指示通りにイヤホンをはめると、途端に周囲の騒音が激減する。
「愛してる、は聞こえるけどね」
今夜も寝られないことが確定し、小金井は膝から崩れ落ちた。
それでも、小金井は大道寺のために、見える霊の対応策を伝授する。
「その、見える霊達なんだが、解決策はただ1つ」
「おお、それは?」
「ズバリ、慣れることだ」
「・・・は?」
「オレは1年ほどで、余程のことがない限り驚かなくなったぜ」
今夜も寝られないことが確定し、大道寺は膝から崩れ落ちた。
「こうなれば、自力で何とかするしかない。今日の放課後、ボクはこの姿のままでキミと一緒に家に帰るよ。そこで、できる限りの対策をする。それに、参考書がないと勉強できないから、勉強道具も持って行かないと。ああ、自転車はボクが前に乗るから、小金井は後ろね。大丈夫。2人乗りオッケーの自転車だからさ」
「ま、まあ、いいけど」
大道寺の勢いに圧され、小金井は反対することなどできずに承諾する。
そもそも、何か対策があるなら知っておきたい。それに、いくつか説明をしておく必要もあった。
「で、とりあえず、学食にでも行く?小金井家に弁当は用意されていなかったから、学食だよね?」
大道寺が問うと、小金井が即答する。
「だな。心愛の弁当は母親が作るが、基本的にオレのは無いな。別に作ってもらえない訳じゃなくて、こっちから断っているんだ」
「へえ。あ、大道寺家に弁当を作る習慣はないから、登校中にコンビにで弁当を買うか学食になるよ」
2人は望んだ訳ではなく、仕方なく一緒に並んで学食に向かった。
しかし、「孤高の2人」として有名な2人が揃って学食に姿を現した瞬間、その場にいた全員が振り返った。「孤高」とは文字通り、「周囲と群れることなく孤立していながらも高い境地にいる」ことである。しかし、月花高校においての「孤高」には裏の意味も存在していた。それは、「近寄り難い存在であるためボッチになっている」だ。そのボッチ2人が揃って登場したのである。そこにいた全ての生徒が驚いたのも無理はなかった。
どう罵ってみたところで、何も解決しないのだ。
大道寺は自分に愛の言葉を囁いていたモノが、漆黒の相貌をした女性の霊だと知った。それは、明らかかに末期の悪霊の姿だった。「愛している」は間違いなく「一緒に、あの世に行こう」という誘い文句だ。現状は他人事だが、元に戻れば即座に解決しなければ死活問題になるだろう。
小金井にしても同じ状況だった。人間と違い、小金井にとって霊はそこにいるだけで静かな存在だ。近寄って来る女性は例外無く姦しい。自分の気を引こうとして喋り続けている。しかし、あの女性の霊だけは側にいても静かで慎ましい。それならば、常に隣に立っていたとしても門際はない―――そう思っていたのに。笑顔で「殺してやる」と呟いていただなんて、全く笑えない。
2人はほぼ同時に顔を上げ、今度は見詰め合う。
そこには、共通の認識が芽吹いていた。
入れ替わりが解消されても、されなくても、コレだけは解決しなければならない、と。
そして、ついでにもう1つ問題があった。
「聞いてみるんだけど、小金井って成績は良いんだったかな?」
目の前の大道寺に、小金井の中にいる大道寺本人が問い掛ける。大道寺は入学して以降、全てのテストでほぼ満点を叩き出してきた秀才である。大道寺のプライドとして、それを途絶えさせる訳にはいかなかった。
「オレ? 中の中くらいだけど・・・ああ、来月に期末テストがあるのか!!大道寺は確か、絶対王者だったな。悪いな、間違いなく陥落だな」
「だよねえ・・・でも、それは困るな」
「おい、だよねえ、とか言うな」
その言葉を聞いて少しだけ不機嫌そうな表情を見せる。
それでも、小金井は大道寺の肩に手を乗せて力強く言い放った。
「期末テストまでに全部解決すればいいんだろ? 大丈夫だ、何とかなる。まだ1ヶ月以上あるんだぜ?2人で力を合わせれば絶対にどうにかなる。オレ達は孤高の2人とか呼ばれているだぞ!!」
言い切る小金井に感心したように大道寺が頷いた。
「おお、確かにそうだよね。何か、どうにかなりそうな気がしてきたよ」
「順番は、オレの身体に憑いてるソイツの除霊からな」
「・・・キミにはガッカリだよ。ボクの感動を返せ!!」
少し話しは逸れれたが、ひとまず共闘するということに落ち着いた。1人より2人の方が良いのは間違いなかったからだ。しかも、2人は不足している部分を補える相手なのだ。
「ズボンのポケットにイヤホンが入ってると思うんだけど」
そう大道寺に告げられ、小金井がポケットを探すと言われた通りイヤホンが入っていた。
「それはさ、音楽を聴くためのものというよりは、ノイズキャンセラーとして使っていたんだ。授業中はダメだけど、それ以外はずっと使っていればいいよ。そうすれば、その辺りにいる低級霊の声は聞こえなくなるから」
「おお、なるほどな」
指示通りにイヤホンをはめると、途端に周囲の騒音が激減する。
「愛してる、は聞こえるけどね」
今夜も寝られないことが確定し、小金井は膝から崩れ落ちた。
それでも、小金井は大道寺のために、見える霊の対応策を伝授する。
「その、見える霊達なんだが、解決策はただ1つ」
「おお、それは?」
「ズバリ、慣れることだ」
「・・・は?」
「オレは1年ほどで、余程のことがない限り驚かなくなったぜ」
今夜も寝られないことが確定し、大道寺は膝から崩れ落ちた。
「こうなれば、自力で何とかするしかない。今日の放課後、ボクはこの姿のままでキミと一緒に家に帰るよ。そこで、できる限りの対策をする。それに、参考書がないと勉強できないから、勉強道具も持って行かないと。ああ、自転車はボクが前に乗るから、小金井は後ろね。大丈夫。2人乗りオッケーの自転車だからさ」
「ま、まあ、いいけど」
大道寺の勢いに圧され、小金井は反対することなどできずに承諾する。
そもそも、何か対策があるなら知っておきたい。それに、いくつか説明をしておく必要もあった。
「で、とりあえず、学食にでも行く?小金井家に弁当は用意されていなかったから、学食だよね?」
大道寺が問うと、小金井が即答する。
「だな。心愛の弁当は母親が作るが、基本的にオレのは無いな。別に作ってもらえない訳じゃなくて、こっちから断っているんだ」
「へえ。あ、大道寺家に弁当を作る習慣はないから、登校中にコンビにで弁当を買うか学食になるよ」
2人は望んだ訳ではなく、仕方なく一緒に並んで学食に向かった。
しかし、「孤高の2人」として有名な2人が揃って学食に姿を現した瞬間、その場にいた全員が振り返った。「孤高」とは文字通り、「周囲と群れることなく孤立していながらも高い境地にいる」ことである。しかし、月花高校においての「孤高」には裏の意味も存在していた。それは、「近寄り難い存在であるためボッチになっている」だ。そのボッチ2人が揃って登場したのである。そこにいた全ての生徒が驚いたのも無理はなかった。



